異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#109 箸、擂り鉢、串の設計図

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 壱は机の引き出しからスマートフォンを取り出すと電源を入れ、Wi-Fiが接続されている事を確認すると、ブラウザを立ち上げる。

 まず調べるのは、はしのサイズ。男性用、女性用、子供用でまず違うし、男性用でもいろいろあるらしい。

 それらの中で、平均的なものを拾い上げて行く。

 紙に秘蔵のボールペンで、箸を横から見た図と、持ち手側から見た図、先端から見た図を書く。

「あ、サユリ、このペン、インク切れとか故障の心配無い様にならないかな」

 いつも壱と行動を共にしているサユリも、当然のごとく部屋にいて、ベッドでくついでいる。

「出来るカピよ。しかし壱は本当にカピバラ使いが荒いカピな」

「便利なものだからつい。本当に助かってるよ」

 壱は拝む様に手を合わせる。サユリはふうと息を吐くと、右前足を上げて動かした。

「これで良いカピよ」

「ありがとう。付けペン使いづらくてさ。俺らの世界では滅多に使わないものだから」

「そうカピか。確かに茂造もこの世界に来たすぐは四苦八苦していたカピ」

「だろうなぁ」

 壱は小さく笑いながら、箸の図に数字を書き入れて行く。長さは20センチ、持ち手は直径7ミリ、先端は2ミリ。

 先端は1.8ミリが最適らしいのだが、あまり細かくしてしまうと、加工も大変だろうから、ここは小数点以下は切り上げる事にしよう。

 この世界の文字は相変わらず読めないし書けないが、数字が共通なのは助かった。

 次にり鉢の底の溝である。調べてみると、あの溝は櫛目くしめと言うものなのだそう。

 擂り鉢を上から写した画像が幾つか出て来た。櫛目にもいろいろな形状がある様だ。

 その中から壱は掘るのが比較的難しく無さそうな、直線の物を選び、紙にスケッチして行く。

 絵心……絵心……余りある方では無い。だが画像をそのまま見せる訳には行かない。スマートフォンの存在を知られてはならないのだ。

 壱はフリーハンドでややいびつな2重円を書き、内円の中に線を引いて行く。どう書くのが効率が良いか、巧く書けるか、脳内でシミュレーションをしながら。

 しかしやはり何枚か失敗してしまう。

 それでもどうにか仕上げる事が出来た。

 壱にしては良い出来なのでは無いか。完成品を見て、大きな息を吐いた。

「出来たー」

 つい声を上げる。これで陶製工房の職人に伝わると良いのだが。

 後は長い串だが。

 バーベキューとは違い、直接火に掲げるのだから、持ち手が熱くならない様に、そしてある程度の長さも必要かと思われる。

 材質は何になるだろう。これは木製工房のロビンに任せるのが良いだろう。鉄が有力だろうか。

 長さは40センチか50センチあれば良いだろうか。直径は2、3ミリ程で、先端を細くして貰う形だろう。

 これも図を書く事にする。

 他に調べ物はあっただろうか。壱は考えてみるが、今は思い浮かばない。

 とりあえずは箸、擂り鉢、串の3種を作ってもらう事にしよう。

「サユリ、俺、木製工房と陶製工房行くけど、一緒に行く?」

 訊くと、サユリはのっそりと立ち上がり、ひらりと下に降りた。

「行くカピ」

 ドアを開けて、下に降りる為にまずはダイニングへ。テーブルでは茂造が紅茶をたしなんでいた。

「じいちゃんって、そんな紅茶好きだっけ? 昨日も飲んでたよね」

「緑茶の代わりじゃの。コーヒーも飲むぞい。紅茶もコーヒーも村では育てておらんからの、残りの量を見ながら飲んでいる感じじゃの」

「街で買ってるの?」

「そうじゃの。そう言やあれじゃの、またそろそろ買い出しに行かんとの。今度は壱に行って貰うかの」

「それはちょっと楽しみ。あ、俺ちょっと出かけて来るよ。木製工房で箸と串、陶製工房で擂り鉢作って貰おうと思って」

「ほうほう。ではの、時間が余ったら、製糸工房に行ってみたらどうかの? 壱も大分給料がまって来たんじゃ無いかの?」

「ああ、うん、確かに、……多分」

 この食堂は日給制なので、壱も毎日給金を貰っている。しかし今の所使い所が余り無く、机の引き出しに貯まってしまっているのだ。

 しかしこの村と言うか世界の貨幣価値が余り判らないので、現状何とも言えなかった。

「洋服はこの村でも買えるんじゃよ。この前村を案内した時に会うたシャノの、メリアンのお姉さんのデザインの服が売られておるんじゃよ。ほとんどが一品物じゃからの、覗いて見ると良いぞい」

「へぇ、じゃあ行ってみる。サユリ、お金取って来るから待ってて」

 壱は部屋に戻るととりあえず今あるお金を数え、金額を把握してから全て財布に入れた。財布は元の世界で使っていたものである。

 元々入っていた中身は、この世界では役に立たないので、封筒にまとめて入れて、引き出しに入れてある。

 確かに今の服もそうだが、他の服も全て可も無く不可も無く、無難なものばかりである。

 壱はそもそも洋服で挑戦するだの攻めるだのする方では無いが、やはり好みの格好をしたいとは思う。良いのがあれば検討してみようか。

 さてダイニングに戻り、待っていたサユリと連なって食堂を出た。
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