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#110 頼もしき職人たち
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まず、陶製工房に向かう。
ドアをノックすると、中から「はーい」と聞き慣れた女性の声。開けると、声の主が棚の整理をしていた。
「あらイチくん。こんにちは」
「こんにちは。あの、作って貰いたいものがあるんですが」
「はいはい、どんなの?」
「ボウル状なんですけども、内側にこんな溝を。櫛目って言うんですけど」
壱は先程頑張って書いた図面を見せた。
「あー成る程ねー。面白いね。これ何に使うの?」
女性が興味深げに図面を凝視する。
「食材を擂り潰したりするんですよ。うちの食堂の場合、バジルソースを作るのに使えると思って」
「あー成る程ね! え、今までどうやって作ってたの?」
「包丁で叩いてました」
「そりゃ大変だー!」
女性が驚いて仰け反る。なかなか大袈裟な表現をする人だ。
「これ、俺たちの世界の調理器具なんです」
「じゃあやってみるよ。器そのものはいつもの作り方で良いとして、この溝、ええと、櫛目って言うんだっけ? これの掘り方ねー。これは木製工房で、それこそ櫛みたいなのを作ってもらうのが良いかも。そしたら等間隔に綺麗に掘れるよ」
「あ、俺、これから木製工房に行く用事があるんで、一緒に行きますか? 説明もし易いかも」
「そうしようそうしよう! 新しい物を作るのはワクワクするなー」
女性は快活に言うと、壱の背中を叩き、奥に「出掛けて来るー」と声を掛けるとドアを開けた。
しかしその時、何かを思い出した様に振り返った。
「ところで私、多分イチくんに自己紹介出来て無かった。ごめんねー。シルルと言います。よろしくね!」
そう言えばそうだった。幾度と顔を合わせているのに、名前を聞いていなかった。
「俺もうっかりしてました。改めてよろしくお願いします、シルルさん」
「うん、よろしく!」
シルルは満面の笑みを浮かべた。
「シルルは相変わらず大雑把カピな」
サユリが呆れた様に言うと、シルルはあははと笑う。
「ごめんごめん」
あまり反省の感じられない軽い調子で言うと、ドアを抜けて行く。壱とサユリもそれに続いた。
さて、木製工房に到着。シルルは先頭に立ち、ノックもせずドアを開け放った。
「こんにちはー!」
すると中で作業していたロビンが呆れた様に立ち上がった。
「相変わらずだなぁシルルよ。今日は何だってんだ。お、坊主とサユリさんも一緒か」
「ロビンさんこんにちは」
「今日も頼むカピ」
「あいよ! で、今日は揃って何だってんだ?」
ロビンが尋くと、シルルは壱が書いた図面を出した。
「陶製のボウルの底に、こんな溝を掘りたいんだよね。これ、櫛みたいなのがあったら確実に綺麗に掘れると思ってさ。ロビンなら出来るよね?」
畳み掛ける様に言い寄るシルルに、ロビンは苦笑い。しかし図面を見たロビンは、やや考え、大きく頷く。
「成る程な。おう、出来るぜ。これ間隔は何ミリだ?」
あ。と、壱が声を上げる。
「ごめんなさい、間隔考えて無かった。多分そうだな、えーと、1.5か2ミリ単位とかでして貰えたら丁度良いと思うんですけど」
壱が見た事のある擂り鉢を思い出しながら言う。
「よっしゃ、判った。直ぐに作ってやるよ」
ロビンが材料を取りに行こうとするが、壱は呼び止める。
「実はロビンさん、もうひとつ相談したい事が」
壱は箸と串の図面を見せ、説明する。
「あー成る程。おう、これらも出来るぜ。そうだな、確かに串は鉄だな」
ロビンは考えながら頷く。
「おう、櫛もだが、箸ってやつも串も任せとけ。きっちり作ってやるからよ。明日にでも取りに来い」
ロビンは言うと、口角を上げた。シルルも頼もしい笑顔を浮かべる。
「擂り鉢?もきっちり作るから! 任せといて! 明後日には出来てると思うよ」
ふたりに言われ、壱は頭を下げた。
「ありがとうございます!」
ここでこれ以上壱に出来る事は無い。ふたりに見送られながら、サユリとともに工房を辞した。
さて、少し時間が余った。茂造が勧めてくれた製糸工房に行ってみようか。
着いてみると、販売もしているからか、観音開きのドアは大きく開かれていた。
覗くと、近くにいた女性が気付いてくれた。
「あ、いらっしゃいま、せ、あ……」
狼狽した様に両手で口を押さえる。だが次には深く頭を下げていた。
「い、イチさんですよね? 私、マリルと言います。あの、米農家でお世話になっている、リオンの妹です」
「ああ」
壱は昨日のリオンの話を思い出し、小さく頷いた。
ドアをノックすると、中から「はーい」と聞き慣れた女性の声。開けると、声の主が棚の整理をしていた。
「あらイチくん。こんにちは」
「こんにちは。あの、作って貰いたいものがあるんですが」
「はいはい、どんなの?」
「ボウル状なんですけども、内側にこんな溝を。櫛目って言うんですけど」
壱は先程頑張って書いた図面を見せた。
「あー成る程ねー。面白いね。これ何に使うの?」
女性が興味深げに図面を凝視する。
「食材を擂り潰したりするんですよ。うちの食堂の場合、バジルソースを作るのに使えると思って」
「あー成る程ね! え、今までどうやって作ってたの?」
「包丁で叩いてました」
「そりゃ大変だー!」
女性が驚いて仰け反る。なかなか大袈裟な表現をする人だ。
「これ、俺たちの世界の調理器具なんです」
「じゃあやってみるよ。器そのものはいつもの作り方で良いとして、この溝、ええと、櫛目って言うんだっけ? これの掘り方ねー。これは木製工房で、それこそ櫛みたいなのを作ってもらうのが良いかも。そしたら等間隔に綺麗に掘れるよ」
「あ、俺、これから木製工房に行く用事があるんで、一緒に行きますか? 説明もし易いかも」
「そうしようそうしよう! 新しい物を作るのはワクワクするなー」
女性は快活に言うと、壱の背中を叩き、奥に「出掛けて来るー」と声を掛けるとドアを開けた。
しかしその時、何かを思い出した様に振り返った。
「ところで私、多分イチくんに自己紹介出来て無かった。ごめんねー。シルルと言います。よろしくね!」
そう言えばそうだった。幾度と顔を合わせているのに、名前を聞いていなかった。
「俺もうっかりしてました。改めてよろしくお願いします、シルルさん」
「うん、よろしく!」
シルルは満面の笑みを浮かべた。
「シルルは相変わらず大雑把カピな」
サユリが呆れた様に言うと、シルルはあははと笑う。
「ごめんごめん」
あまり反省の感じられない軽い調子で言うと、ドアを抜けて行く。壱とサユリもそれに続いた。
さて、木製工房に到着。シルルは先頭に立ち、ノックもせずドアを開け放った。
「こんにちはー!」
すると中で作業していたロビンが呆れた様に立ち上がった。
「相変わらずだなぁシルルよ。今日は何だってんだ。お、坊主とサユリさんも一緒か」
「ロビンさんこんにちは」
「今日も頼むカピ」
「あいよ! で、今日は揃って何だってんだ?」
ロビンが尋くと、シルルは壱が書いた図面を出した。
「陶製のボウルの底に、こんな溝を掘りたいんだよね。これ、櫛みたいなのがあったら確実に綺麗に掘れると思ってさ。ロビンなら出来るよね?」
畳み掛ける様に言い寄るシルルに、ロビンは苦笑い。しかし図面を見たロビンは、やや考え、大きく頷く。
「成る程な。おう、出来るぜ。これ間隔は何ミリだ?」
あ。と、壱が声を上げる。
「ごめんなさい、間隔考えて無かった。多分そうだな、えーと、1.5か2ミリ単位とかでして貰えたら丁度良いと思うんですけど」
壱が見た事のある擂り鉢を思い出しながら言う。
「よっしゃ、判った。直ぐに作ってやるよ」
ロビンが材料を取りに行こうとするが、壱は呼び止める。
「実はロビンさん、もうひとつ相談したい事が」
壱は箸と串の図面を見せ、説明する。
「あー成る程。おう、これらも出来るぜ。そうだな、確かに串は鉄だな」
ロビンは考えながら頷く。
「おう、櫛もだが、箸ってやつも串も任せとけ。きっちり作ってやるからよ。明日にでも取りに来い」
ロビンは言うと、口角を上げた。シルルも頼もしい笑顔を浮かべる。
「擂り鉢?もきっちり作るから! 任せといて! 明後日には出来てると思うよ」
ふたりに言われ、壱は頭を下げた。
「ありがとうございます!」
ここでこれ以上壱に出来る事は無い。ふたりに見送られながら、サユリとともに工房を辞した。
さて、少し時間が余った。茂造が勧めてくれた製糸工房に行ってみようか。
着いてみると、販売もしているからか、観音開きのドアは大きく開かれていた。
覗くと、近くにいた女性が気付いてくれた。
「あ、いらっしゃいま、せ、あ……」
狼狽した様に両手で口を押さえる。だが次には深く頭を下げていた。
「い、イチさんですよね? 私、マリルと言います。あの、米農家でお世話になっている、リオンの妹です」
「ああ」
壱は昨日のリオンの話を思い出し、小さく頷いた。
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