異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#134 サユリの気遣い

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 そう言えば。

 壱はカップを洗いながら、サユリに聞いてみる。

「サユリさ、いつも俺と一緒にいるよね。もしかしたら何か理由があったりする?」

 壱がこの世界に来てから、壱ひとりで事足りる外出でも、サユリは必ずと言って良い程付いて来てくれていた。

 米育成についても、食堂の営業時間に掛かるのなら、本来ならそちらにいなければならないだろうに、壱のそばにいてくれる。

 それは、壱がまだこの村に不慣れな内は、正直頼もしかった。そしてほぼ慣れた今でも、迷惑だと思った事は無い。

 すると、サユリは溜め息を吐く。

「やはり壱はさといのだカピな。壱たちの世界とこちらの世界、環境はそう変わらないとは思うカピよ。けど、個人の差もあるカピ。万が一が無い様に、我が近くで守っていたのだカピ。茂造がこの世界に来た時にも同様にしたカピよ」

「そうだったんだ」

 確かに、この国は壱たちの世界で言うところの、暖かな春の様な気候だ。だがそれ以外に、壱たちに合わない要素が無いとは言い切れない。

「茂造は我が見たところ、もう全く問題が無いから大丈夫だカピが、壱はまだこの世界に来て20日足らずカピ。もうしばらくは張り付くカピよ。迷惑だとは言わせないカピ」

「迷惑だなんて思ってないよ。癒されるし、話し相手もいて楽しいし。これからもよろしくね」

「うむカピ」

 サユリはそう言い、鼻を鳴らした。

 するとまた、もうひとつ疑問が。

「その事、じいちゃんは知ってるの?」

 茂造は行動の際には、必ずサユリにどうするかを聞いていた。

「知らないカピ。わざわざ言う事でも無いカピ。茂造はのんびりしているカピ、壱みたいには気付かなかった様だカピ」

「成る程な」

 壱は可笑しそうに笑いながら、洗って泡だらけになったカップなどを水で濯いで行った。



 夜営業の仕込み、そして営業もなかばに差し掛かった頃、マユリが手ぶらで厨房に顔を出した。

「あ、あの、て、店長さん、あの、ノルドさんと、ロ、ロビンさんたちが来られました。い、一応お知らせして、おいた方が、良いかと、思って」

 ノルドの境遇までは知らせていないが、ここの新しい村人になる事、医者で診療所を開業する事は、既に村人には周知しゅうちである。

「おお、ありがとうの。済まんが少し抜けるからの」

 先はマユリに、後は壱たちへの台詞である。

「うん」

「オッケーすよ」

 壱とカリルが返事をし、サントが頷くと、茂造は「うんうん、ありがとうのう」と言いながら、フロアに出て行った。

 営業はまだ続いているが、ピークは過ぎて、注文は落ち着いているので、壱たちだけで充分に回る。

 そして茂造は10分も掛からず戻って来た。

「あれ、じいちゃん、大丈夫なの? ノルドさんたち」

 壱が聞くと、茂造はほっほっほっと笑う。

「大丈夫じゃ。家の改装の事はロビンたちに任せておけば問題無いからの。もう明日から早速改装を始めるそうじゃ。医療器具もドワーフたちが作ってくれるらしいからの。そう間を置かずに診療所を開けられると思うぞい」

「凄い順調だね。話進むの早いなぁ」

「そんなもんじゃ。当事者しか話に関わっておらんからの」

「あー」

 確かにそうだ。第三者が加わるとややこしくなる。構図としては、責任者と業者の話し合いで全てが解決するのだ。

 壱は会社勤めなどの経験は無いが、話には聞く。下手に大勢で会議をしたところで、何も決まらないと。あらゆる思惑が交錯こうさくし、どうでも良い意見が出たりして、結局は良い決着をしない。

 それらは人の欲と、見当違いの善から来るものなのだが、それらを良い塩梅あんばいに着地させる事は難しい。壱もそれをこうむる立場になれば、ただストレスを受けるだけだろう。

「じゃあ良かったね。医者がいたらみんな安心だもんね」

「そうじゃの」

 壱の笑みに、茂造も穏やかに笑った。
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