異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

文字の大きさ
154 / 190

#154 味噌煮込みうどんの朝ご飯

しおりを挟む
 さて一夜が明け、壱は朝食を作る為にキッチンに立つ。

 もう作るものは決めてある。壱は鍋に水を貼って昆布を入れておき、材料を取りに、ボウルを手に厨房へ。

 冷蔵庫から卵と鶏肉、棚から玉ねぎと人参を出し、ボウルには中力粉を入れる。

 しかし1度では運べないので、まずは中力粉のボウルを、次に鶏肉などを上に上げた。

 では、調理開始である。

 まず、中力粉を少し別のボウルに分けておく。

 次に、元のボウルの中力粉に塩を少量加え、水を少しずつ入れながらねて行く。粉と水の割合が良い塩梅になると、力を込めて、手前から奥に押す様にして捏ねて行く。

 そうして時間を掛け、額に汗をじんわりと浮かべながら、手を動かして行く。

 やがて生地が纏まる。つるりと綺麗なかたまり。そうしたらまな板に打ち粉をし、出来た生地を置く。まずはてのひらで押して広げ、続けて綿棒を使う。

 出来る限り四角になるように、2ミリ程の厚さに伸ばして行く。出来たら折りたたみ、包丁で5ミリ程の幅に切って行く。

 これがまた気の使う作業で、不慣れな壱はやや息を詰めながら包丁を動かして行く。

 やがて全てを切り終えると、ふぅーと細く、勢い良く息を吐いた。

「……出来た」

 そう呟く様に言う。

 さて、次に大きめな鍋を出すと、水を入れて強火に掛ける。

 続けて出汁だしの準備。昆布の鍋を火に掛け、沸くまでの間に鰹節かつおぶしを削って行く。

 沸騰ふっとう直前になったら昆布を取り出して鰹節を入れ、火を止めて、鰹節が沈むのを待つ。

 その間に湯が沸いたので、さっき作った生地を切ったものを、解しながら入れて茹でる。

 ぐらぐらと沸く湯の中で踊る生地。吹きこぼれない様に火加減に注意しながら。

 次は出汁を別の鍋に静かに移し、火に掛ける。

 沸くまでの間に野菜と鶏肉を切る。玉ねぎは薄切りに、人参は葉をざく切りに、鶏肉は一口大に。今日は人参の本体は使わないので、後で厨房に戻しておこう。

 出汁が沸いたら、鶏肉を入れる。灰汁が出たら余分な油とともにレードルで取り除く。続けて玉ねぎを入れ、少し煮て行く。

 さて、少し時間が空いたので、洗い物などをして。

 終わったら、出汁の鍋に味噌を溶かす。米味噌と赤味噌のブレンドだ。

 その頃には、切った生地が茹で上がる。ザルに上げて流水にさらしながら、揉む様にして良く洗い、ぬめりをしっかりと取る。

 それを、味噌を溶かした鍋に入れ、煮て行く。

 その間に、また出た汚れ物を洗い。

 時計を見る。そろそろサユリたちが起きて来る時間だろうか。

 卵をボウルに割り入れ、それを静かに鍋に落として行く。それを3個分繰り返す。それぞれがくっつかない様に離して。

 また、汚れたものを手際良く洗う。

 後は仕上げである。レードルで味噌出汁をすくい、そっと卵に掛けて行く。そうしてじんわりと火を通すのだ。

「おはようのう」

「おはようカピ」

 サユリと茂造が起きて来た。良いタイミングである。

「おはよう。もうすぐ朝ご飯出来るからね」

「ありがとうのう。では支度して来るからのう」

 茂造が洗面所に向かうと、人参の葉を加える。

 卵に味噌出汁を掛けるのは途絶えずに。白身の部分はすっかりと白くなり、黄身の部分にも白い膜が張っていた。これは良い火通りでは無いだろうか。

 ボウル状の器と、サユリ用にパスタ用の器を出し、まずは中力粉で作った麺をトングで入れる。卵はもう少し火を通したいので、茂造が戻って来るのを待つ事にする。

「お待たせじゃの」

 戻って来た茂造が椅子に掛ける。サユリはとっくにテーブルの上に。

 レードルで味噌出汁、鶏肉、玉ねぎ、人参の葉を掬ってよそい、最後にふんわりと仕上がった卵。

 味噌煮込みうどんの完成である。

「お待たせ! 味噌煮込みうどんだよ」

 テーブルに速やかに運び、壱もテーブルに着いた。

「おお、美味しそうじゃの。いただきます」

「いただくカピ」

「はい。いただきます」

 まずは味噌出汁をすする。うん、昆布と鰹節からは勿論の事、鶏肉と玉ねぎからも良い出汁が出ている。ふくよかで味わい深い。

 続けてうどんをはしで掬う。つるりと口に運び、しっかりと噛む。うん、コシも悪く無い。コシが生命の讃岐うどんに比べればまだまだかも知れないが、上出来だ。

 続けざまに具材も食べる。味噌を纏っていてどれも美味しい。壱は表情を綻ばせる。

 さて、卵はどうだろうか。味噌出汁とうどんが半分程になった頃に、そっと割って見る。すると良い具合に半熟になっていて、黄身がとろりと流れ出て来た。

 その艶やかな黄身をうどんに絡めてつるり。ああ、何とまろやかで旨いのか。壱はつい眼を閉じてしまう。

 また凄いものを作ってしまった。自画自賛である。

 そしてサユリと茂造を見ると、ふたりともガツガツと器に集中していた。

「どうかな」

 壱がそっと訊くと、茂造は満足そうに息を吐いた。

「うまいのう。味噌の出汁も勿論じゃが、それを吸っておるうどんもうまいのう。凄いのう、壱はどんどん腕を上げておるのう」

「難しいのは作って無いんだよ。でも口に合って良かった」

 茂造の反応に壱は安心する。さて、サユリはどうか。

「サユリ、どう?」

 率直に訊くと、サユリは動きを止めぬまま。

「うむ、良いカピな。我も味噌を吸っている麺が良いカピ」

 そう言いながら、ひたすらに皿に向かっている。壱はまた安堵した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...