異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#161 玉ねぎの苗を植え替えよう

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 健康診断の時間割りを無事埋め終わり、壱とサユリは食堂に戻る。

 その道すがら、袋に入れた玉ねぎの苗を抱える壱に、サユリが口を開いた。

「壱、その玉ねぎの苗、どうするカピか。裏庭ででも育てるカピか?」

「そうなるかな。でも欲しいのは玉ねぎじゃ無いんだよ。それは農家さんに任せた方が美味しくて立派なの出来るからね。欲しいのは、上の葉の部分なんだ」

 するとサユリは首を捻る。

「確かに食べられる部分カピが……」

「ネギって野菜、知ってる? 味噌汁とかに入れたりするんだよ。これがさ、見た目が似てて。多分代わりになると思うんだよね。同じネギの仲間だし」

「ふぅむ? で、壱はまた我に何をさそうとしているカピか」

 サユリのその台詞に、壱の心臓は跳ね上がる。確かにそうして貰えたら大変助かる訳だが。

 しかし壱はそれを懸命けんめいに飲み込む。

「いや、これは裏庭に植えて、使う時に刈り取るよ。そのまま植えてたら、根と栄養がある限りまた伸びて来ると思うし。ずっとサユリに頼りっぱなしだからね。これぐらいは自分で。幸い苗も沢山貰えたし」

 壱が苦笑しながら言うと、サユリは鼻を鳴らした。

殊勝しゅしょうな事だカピな。だが今更カピ。足りなくなったり回転が追い付かなくなったりしたら、言うと良いカピ」

「ありがとう。その時にはそうさせて貰うよ。本当に助かるよ」

 壱は笑みを浮かべ、サユリに礼を言った。



 食堂に戻ると、丁度ちょうど夜営業の仕込みが始まるところだった。

 昼は抜けていたが、夜は参加出来そうだ。遊んでいた訳では無いのだが、やはり申し訳無いと思っていた。

 茂造たちは既に割烹着かっぽうぎ三角巾さんかくきんを着けていた。壱も後に続く。

「壱、お帰りのう。健康診断は無事決まったかの?」

「うん、全員決まったよ。ノルドさん、明日から早速始めるって。カルさんとミルさんが念の為、揃って結婚式前に健康だって安心したいから、明日に予定入れてた。じいちゃんも明日だろ?」

 この食堂の従業員には、昼営業と夜営業の間の休憩時間に、各人の家を訪ねていた。

「そうじゃの。ノルドものう、サユリさんがいるから大丈夫じゃと解ってはおってもの、やはり歳の事もあってのう、早いめに見ておきたいそうじゃ」

「あ、だからか。そりゃあそうだよね。ノルドさん、年配の人を優先してたなと思って」

「うんうん」

 茂造も納得した様に頷く。

「俺とサントは結構最後の方だぜ。若いし、如何いかにも健康そうだしな!」

 カリルが言いワハハと笑うと、サントも頷く。

「俺も明日になったよ。何でだろ、俺も若いし健康なのに」

 壱が首を傾げると、カリルがまた笑う。

「そりゃあさ、イチは次期村長っていう大事な身体なんだぜ。自覚してくれよな!」

「あ、そっか、成る程」

 まだそうと確定している訳では無いのだが、表向きはそういう事なのである。壱も良く忘れてしまう設定である。

「さて、では仕込みを始めるかのう。カリル、サント、壱、今夜もよろしくのう」

「よろしく!」

「うん。よろしく!」

 カリルと壱が言い、サントが頷くと、早速仕込みが始まった。



 夜営業が終わり、壱は裏庭に出る。貰った玉ねぎの苗を植える為だ。

 営業が終わるまで、サユリに時間魔法を使って貰い、しおれてしまうのを止めて貰っていた。

 根の部分を水に浸しておけば大丈夫だっただろうが、既に夜営業の仕込みが始まろうとしており、その時間も惜しかったのだ。

 早速サユリの魔法に頼ってしまった訳だ。

「ごめん、サユリ」

 壱が項垂れて言うと、サユリは首を振った。

「これくらいは何とも無いカピ。頼れるところは頼ると良いカピ。我の魔法はそれくらい朝飯前あさめしまえなのだカピ」

 そう言って鼻を鳴らす。その何時いつもの得意げな様子に、壱はほっとする。

「ありがとう」

 そう笑顔で言うと、サユリはまた鼻を鳴らした。
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