異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#176 不穏な気配が……

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 一通り食事を終えたので、壱とサユリは会場内をめぐってみる。まずは新郎新婦の元へ。

「カル、ミル、おめでとうカピ」

「おめでとうございます」

 そう祝うと、ふたりは嬉しそうに破顔はがんした。

「ありがとうございます! その節はお世話になりました」

「ありがとうございます。私、頑張りますね!」

 壱は瞬間、そのミルの頑張り宣言に嫌な予感がしたのだが、目出度めでたい席なので口をつぐむ。ふとサユリを見ると遠い眼をしていて、壱と同じ様に感じたのだと察する。

 まぁまた何かあったら相談があるだろうから、様子を見守ろう。

 ふたりの元をして、村人の間を回る。皆ご機嫌で料理を口にし、ドリンクを傾けていた。子供たちは葡萄ぶどうジュースやミルクだが、大人は殆どがアルコールである。

 彷徨うろついているうちに、結局食堂メンバーの元に辿り着いてしまう壱とサユリ。自然と輪の中に加わった。

「イチ、サユリさん、今までどこに居たんだよ」

 カリルはアルコールですっかりとご機嫌である。その横ではアルコールに弱いサントが黙々と料理に舌鼓したづつみを打っている。

 カリルは酒癖が良く無いので、横でマーガレットが適当に赤ワインを葡萄ジュースに差し替えている。

 このふたつではかなり味が違うと思うが、カリルは気にして居ない様子。と言う事はそれなりにアルコールが回っている様だ。

 壱が苦笑いするとマーガレットがウインクを寄越よこし、サントが大きく頷いたので、ここは任せておいて良さそうである。

「カルさんとミルさんにお祝い言って、会場の中うろうろしてた」

「ボクたちもさっき行ってきたよ! ふたりとも幸せそうだったな~結婚いいな~」

 メリアンがうっとりとした様子で言う。この場合、相手は男性なのか女性なのか。

 ああしかしメリアンは女装しているだけで心は確か男性のままだった。なら結婚するとなると相手は女性なのだろうが。

 外見だけだと女性同士の様で、一部マニアには受けるかもな……と壱は静かに眼を閉じた。

「は、花嫁さんは、や、やっぱり、あ、憧れ、ます……!」

 マユリが皿とグラスを持つ手に力を込め、恥ずかしそうに言う。

「へぇ、やっぱり女の子はそうなのかな」

 元の世界でも「将来の夢はお嫁さん!」と言う女子が少なからず周りにいたので、同感はともかくとして、そういうものなのかと思って来た。そうか、この世界でもそうなのかと、壱は頷く。

「俺自体は今まであんまり結婚したいとか思った事無いし、周りの男にもそんな奴いなかったから考えた事無いけど、そこが男女の違いってものなのかなぁ」

「そ、そうで、すか……」

 壱があっけらかんと言うと、マユリは少しがっかりした様子で眼を伏せた。どうしたのだろうか。

 さて、気付けばつい先程まで足元にいた筈のサユリの姿が消えていた。どこに行ったのか。

 壱はさりげなく輪から外れ、会場内を見渡す。が、サユリの姿は見付けられない。小さいからかと足元に注意しながら彷徨いてみたが、やはりいない。

 なので手にしていたエールのグラスをテーブルに置き、会場を出てみた。閑散としている村をきょろきょろしながら、気付けば村の出入り口に到着していた。

 するとそこに、茶色いかたまりが。サユリの後ろ姿だった。

「サユリ、どうしたの?」

 駆け寄るが、サユリは微動だにしない。集中した様子で村の外を眺めていた。

「……我の考えが甘かったみたいだカピ」

 神妙な面持ちで言うと、壱を振り返る。

「我はこれから部屋にこもるカピ。壱が来るまでに使っていた部屋カピ。しばらくは放って置いて欲しいカピ。茂造にも伝えて置いて欲しいカピ」

 サユリは淡々と言うと素早くきびすを返し、村の中に向かって走り出した。

「サユリ!?」

 壱は突然の事に驚いて叫ぶ様に言い、サユリを追い掛ける。

 サユリはパーティ中の食堂前に差し掛かると方向を変えて裏口へ。魔法でドアを開けて、中に飛び込む様に入って行った。

「サユリ……?」

 壱は呆然とし、サユリを見送るしか出来なかった。
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