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#177 サユリがいない事の影響 その1
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サユリを見送った壱は、どうしたら良いのか判らなくなり、暫しその場に呆然と立ち尽くす。
サユリの様子は明らかにおかしかった。何があったと言うのだ。
しかしひとりで考えていても、何の答えも出ない事にはすぐに思い至る。壱は早足で食堂の表、結婚パーティの会場に戻り、茂造の元に急いだ。
「じいちゃん!」
呼んで、小さく手招き。食堂のメンバーを含め、他の村人には聞かれない方が良いのではと思った壱の判断だ。
壱は茂造の耳元に口を寄せた。
「サユリがさ……」
そうしてサユリの行動と台詞をそのまま伝える。すると茂造はやや考え込む様に眼を閉じた後、うむ、と大きく頷いた。
「成る程のう。解ったぞい。大丈夫じゃ。サユリさんに任せておけば良いからの」
「それは良いとして、何があったのか」
壱が不安げな表情を浮かべると、茂造はそんな壱を安心させるためか、大らかにほっほっほっと笑った。
「多分じゃがのう、ほれ、ノルドが言っておったじゃろ。この村の存在が噂になっておると。それと関連しておると思うのう。要はの、この村に危険が迫っておると言う事じゃの」
「なっ!」
あまりの事につい声が大きくなってしまい、壱は慌てて口を押さえた。
周りを見ると、みんな会話に夢中で壱の声は聞こえていなかったらしい。安心して胸を撫で下ろした。しかし。
「そんな、そんなのサユリひとりに任せておいて」
「大丈夫なんじゃよ」
壱の台詞に被せる様に茂造は言う。
「壱もサユリさんの魔法の凄さは知っておるじゃろ?」
「知ってるよ、知ってるつもりだけど、でも」
壱が慌てる様に言うと、茂造は落ち着かせる様に、ゆっくりと穏やかに口を開いた。
「うんうん、サユリさんはの、壱が知っている以上にもの凄い魔法使いなんじゃよ。サユリさんに任せておけば、本当に大丈夫なんじゃ。この小さな村を守る事くらい、なんて事無いからの、安心すると良いぞい。ああそれより壱よ、サユリさんが近くにおらずとも大丈夫かの? 体調とかのう」
何故サユリが常に壱の傍にいてくれていたのかを思い出す。壱はここで漸く少し落ち着いて体調を見てみるが、熱が出る気配がある訳でも無し、腹痛が起こる訳でも無し。問題無い様だ。
「うん、大丈夫みたい」
「なら良かったぞい。サユリさんが迂闊な事をするとは思えんが、万が一何かあったらすぐに儂に言うんじゃよ。ノルドもおるからの」
「わ、解った」
壱が小さく頷くと、茂造はうんうんと首を縦に振って壱の肩を優しく叩く。
「さて、パーティの続きじゃぞい。村人にはサユリさんがいない事は適当に言っておくからの。安心して楽しむと良いぞい」
「う、うん」
茂造は言うが、壱は不安を拭えない。この村云々では無く、サユリの事だ。サユリ自身は大丈夫なのだろうか。
サユリ本人も「自分は偉大な魔法使いだ」と言っていたし、先程の茂造の言葉もある。サユリは迷い無さそうに食堂に入って行ったし、茂造から不安の種は感じない。
それでも心配になってしまう。
しかし今は、特に目出度い場なのだ。壱が狼狽えていては、周りにも申し訳無い。壱は切り替える様に両の頬を軽く叩き、顔を上げた。
「良しっ!」
半ば気合を入れる様に言うと、茂造に続く様に食堂メンバーの輪に戻って行った。
村人のみんなには、サユリは急用で村の外に出たと茂造は伝えた。
村人は「毎日の癒しが~」と項垂れたが、2~3日の事だろうと言うと、みんな「それぐらいなら」と納得した。
実際はいつまでかは判らないが、そう言わなければ村人は静まらなかっただろう。
如何にサユリがこの村で愛されているか、そして食堂営業中にサユリがきっちりと仕事をしていた事が判るエピソードとなった。
そうして、表向きはサユリがいない日々が始まった。
朝には米の苗に水を遣って昼の仕込みに昼営業。夕方に差し掛かる頃になれば夜の仕込みに夜営業。
忙しい中でも、サユリのいない寂しさを時折感じる。何せ寝る時まで傍にいたのだから。
早く問題が解決してくれれば良い。そしてサユリよ無事であってくれ。壱はそう願うしか無かった。
サユリの様子は明らかにおかしかった。何があったと言うのだ。
しかしひとりで考えていても、何の答えも出ない事にはすぐに思い至る。壱は早足で食堂の表、結婚パーティの会場に戻り、茂造の元に急いだ。
「じいちゃん!」
呼んで、小さく手招き。食堂のメンバーを含め、他の村人には聞かれない方が良いのではと思った壱の判断だ。
壱は茂造の耳元に口を寄せた。
「サユリがさ……」
そうしてサユリの行動と台詞をそのまま伝える。すると茂造はやや考え込む様に眼を閉じた後、うむ、と大きく頷いた。
「成る程のう。解ったぞい。大丈夫じゃ。サユリさんに任せておけば良いからの」
「それは良いとして、何があったのか」
壱が不安げな表情を浮かべると、茂造はそんな壱を安心させるためか、大らかにほっほっほっと笑った。
「多分じゃがのう、ほれ、ノルドが言っておったじゃろ。この村の存在が噂になっておると。それと関連しておると思うのう。要はの、この村に危険が迫っておると言う事じゃの」
「なっ!」
あまりの事につい声が大きくなってしまい、壱は慌てて口を押さえた。
周りを見ると、みんな会話に夢中で壱の声は聞こえていなかったらしい。安心して胸を撫で下ろした。しかし。
「そんな、そんなのサユリひとりに任せておいて」
「大丈夫なんじゃよ」
壱の台詞に被せる様に茂造は言う。
「壱もサユリさんの魔法の凄さは知っておるじゃろ?」
「知ってるよ、知ってるつもりだけど、でも」
壱が慌てる様に言うと、茂造は落ち着かせる様に、ゆっくりと穏やかに口を開いた。
「うんうん、サユリさんはの、壱が知っている以上にもの凄い魔法使いなんじゃよ。サユリさんに任せておけば、本当に大丈夫なんじゃ。この小さな村を守る事くらい、なんて事無いからの、安心すると良いぞい。ああそれより壱よ、サユリさんが近くにおらずとも大丈夫かの? 体調とかのう」
何故サユリが常に壱の傍にいてくれていたのかを思い出す。壱はここで漸く少し落ち着いて体調を見てみるが、熱が出る気配がある訳でも無し、腹痛が起こる訳でも無し。問題無い様だ。
「うん、大丈夫みたい」
「なら良かったぞい。サユリさんが迂闊な事をするとは思えんが、万が一何かあったらすぐに儂に言うんじゃよ。ノルドもおるからの」
「わ、解った」
壱が小さく頷くと、茂造はうんうんと首を縦に振って壱の肩を優しく叩く。
「さて、パーティの続きじゃぞい。村人にはサユリさんがいない事は適当に言っておくからの。安心して楽しむと良いぞい」
「う、うん」
茂造は言うが、壱は不安を拭えない。この村云々では無く、サユリの事だ。サユリ自身は大丈夫なのだろうか。
サユリ本人も「自分は偉大な魔法使いだ」と言っていたし、先程の茂造の言葉もある。サユリは迷い無さそうに食堂に入って行ったし、茂造から不安の種は感じない。
それでも心配になってしまう。
しかし今は、特に目出度い場なのだ。壱が狼狽えていては、周りにも申し訳無い。壱は切り替える様に両の頬を軽く叩き、顔を上げた。
「良しっ!」
半ば気合を入れる様に言うと、茂造に続く様に食堂メンバーの輪に戻って行った。
村人のみんなには、サユリは急用で村の外に出たと茂造は伝えた。
村人は「毎日の癒しが~」と項垂れたが、2~3日の事だろうと言うと、みんな「それぐらいなら」と納得した。
実際はいつまでかは判らないが、そう言わなければ村人は静まらなかっただろう。
如何にサユリがこの村で愛されているか、そして食堂営業中にサユリがきっちりと仕事をしていた事が判るエピソードとなった。
そうして、表向きはサユリがいない日々が始まった。
朝には米の苗に水を遣って昼の仕込みに昼営業。夕方に差し掛かる頃になれば夜の仕込みに夜営業。
忙しい中でも、サユリのいない寂しさを時折感じる。何せ寝る時まで傍にいたのだから。
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