異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#178 サユリがいない事の影響 その2

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 サユリが部屋にこもってしまっても、日常は続く。

 食堂は昼の営業を終え、そして夜の営業に突入。

 サユリが傍にいない事以外は、これまでと何も変わらない。

 壱は体調を崩す事も無く、表向きは平穏に日々が淡々と過ぎて行く。



 それも3日も立つ頃には、ほんのわずかではあるが、村人から不満が上がる様になる。

「もう3日になるのに、まだサユリさんは帰って来ないの?」

「やっぱりサユリさんがいないと寂しいわねぇ」

「俺ぁ酒飲みながらサユリさん撫でんのが毎日の楽しみなんだよなー」

 クレームと言う程では無い。多少の差異はあれど村のみんなは善人なので、世間話程度にそんな台詞が零れるだけだ。

 そして壱もみんなの意見には同意なので、「そうですね」と、しかし理由を知っているので苦笑するしか無い。

 今サユリは食事も摂らずひとりで、いや、1匹で頑張っているのだ。

 茂造にサユリの食事の事を聞いたら、必要無い、寧ろ邪魔になると言われたのだ。

 やはり壱に出来る事は、この村とサユリの無事を願うしか無いのだった。



 5日目の朝、壱はすっかりとサユリロスにおちいっていた。そう長くは無いとは言え、常に一緒にいた弊害へいがいだろうか。

 それでも朝食は食べなくてはならない。

 壱は水を張った鍋に昆布を入れ、材料を取りに厨房へ。

 お腹は空いているし味噌は食べたいのに、いまいち作る気が起こらない。だが茂造に作ってもらうのも申し訳無い。

 と言う訳で、今日は手抜きをさせて貰おう。じいちゃんごめん。

 冷蔵庫から豚肉と卵、棚から玉ねぎと人参を出し、裏庭から玉ねぎの苗を刈り取って、上に戻る。

 まずは米を炊く。強火に掛けて。

 玉ねぎは薄切り、人参は銀杏いちょう切りに。玉ねぎの苗は小口切りにし、豚肉はスライスしてから一口大に。

 米の鍋が沸いたので、弱火に落としておく。

 次に鰹節かつおぶしを削る。引き削りももうすっかりと慣れたものだ。

 昆布を入れた鍋を火に掛け、沸く寸前に昆布を引き上げる。そこに削った鰹節を入れ、火を止める。

 取り出した昆布は適当に角切りにしておく。鰹節も沈んだので、出来上がった出汁だしを別の鍋に移し、鰹節が残された鍋に昆布を戻す。

 出汁の鍋を火に掛け、沸いたら豚肉を入れる。灰汁が出たら丁寧に取って。そこに玉ねぎと人参を追加して、煮ていく。

 さて、米の鍋からチリチリとした音がしてきた。炊き上がった様だ。火を止めて解し、蓋をして蒸らす。

 その間に洗い物をしてしまおう。少し気持ちが沈んでいても、手際は変わらない壱である。料理をする事が癒しになっているのかも知れない。そう思えば少し楽しくなって来た気がする。

 蒸らした米を出汁の鍋に入れ、コトコトと煮込んで行く。

 お次は昆布と鰹節。水少量と砂糖と赤味噌を加えて煮詰めて行く。

 さて、そろそろ茂造が起きて来る頃だろうか。壱はボウルに卵を割り入れ、解す。仕上げは茂造が朝の支度をしている時にしよう。

 するとそのタイミングで茂造がキッチンに顔を覗かせた。

「おはようの。今朝もありがとうの」

「おはようじいちゃん。もうすぐ出来るからね」

 壱は仕上げの為に卵のボウルを手にしようとして振り返ると、それを取り損ねてしまう。中身が零れなかったのは幸いだった。

「おはようカピ」

 茂造の足元にはサユリの姿が。眠そうに欠伸をひとつ。

「サユリー!」

 壱は嬉しくなって破顔し、サユリの元へと駆け寄った。
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