異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#179 味噌雑炊、佃煮、和風カルパッチョの朝ご飯

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 壱はサユリの元に駆け寄ると、両手でサユリを抱え上げて頬擦りをした。

 サユリの毛はあまり柔らかいものでは無く、顔に細かく刺さったりして小さな痛みを感じたが気にしない。

「サユリ良かった~! 終わったんだね~!」

 嬉しそうに満面の笑みで。

「終わったカピよ。もう安心カピ。それより眠いカピ。それ以上にお腹が空いたカピ」

 壱とは正反対に、冷静に返すサユリ。壱はひとしきりサユリをで、それでも名残惜しそうにそっと下に降ろしてキッチンに戻った。

 完成を待つ米の鍋を見て、このメニューにして良かった、良いタイミングだったと息を吐く。

 数日振りの空きっ腹に、濃いものや刺激の強いものは禁物だ。サユリなのだから大丈夫だとは思うが。

「もうちょっと待ってね。ひとり増えたから何か作り足さなきゃな。ええと、すぐに出来るもの、出来るもの……」

 厨房の冷蔵庫や棚にあるものを思い出しながら、何がぐに作れるかを考える。確か冷蔵庫に魚のさくがあった筈だ。

「サユリ、普通のご飯って食べられる? 消化の良いものが良いとかある?」

「無いカピ。むしろがっつりと食べたいと思う程度には空腹カピよ」

「そっか。じゃあすぐに追加作るから。じいちゃんは顔洗っておいでよ」

「ではそうさせて貰うかの」

 茂造が洗面所に向かうと、壱は厨房へと降りる。冷蔵庫を開けて魚の柵を取り出す。たいだった。うん、それなら。

 裏庭に出て、玉ねぎの苗を少し刈り取る。

 壱は上のキッチンに戻ると、まずは米の仕上げである。解いた卵を全体に回し入れ、ふたをして、火を止めておく。

 次に赤味噌を取り出す。ボウルに適量を入れて、砂糖を加え、オリーブオイルと少量の水でクリーム状に伸ばす。

 先ほど使って半分残っている玉ねぎをスライスして水にさらし、布で水気を拭き切って皿に並べる。玉ねぎの苗は小口切りに。

 鯛を切り付け、玉ねぎの上に盛る。そこに先ほど作った赤味噌だれを掛け、いろどりに玉ねぎの苗を散らした。

 米もそろそろ良いだろうか。蓋を開けると卵がふんわりと半熟に。そこにも玉ねぎの苗をぱらりと。

「じいちゃん、サユリ、お待たせ。出来たよ!」

 壱が言ってテーブルに並べたものは、味噌雑炊、鰹節と昆布の佃煮、鯛の和風カルパッチョだった。

 気力を失いつつ作ったものと、慌てて作った時短もの。

「そんな訳でこのメニューになっちゃった。ご免」

 壱は申し訳無さげに正直に言うと、茂造はほっほっほっと笑い、サユリは鼻を鳴らした。

「何を言っておるんじゃ。今朝も美味しそうじゃぞい」

「我は味噌が美味しく食べられるのなら問題無いカピ」

 ふたりの台詞に壱は安堵し、サユリの言葉に突っ込んだ。

「え、サユリ味噌そんなに気に入ってくれてたの?」

「味噌を作ってから毎朝の習慣になっているカピからな。勿論旨いとも思っているカピが」

「嬉しいなぁ。お腹いっぱい食べてね。じいちゃんもね」

 壱は嬉しさについ頬を綻ばせてしまう。

「ありがとうの。ではいただきます」

「いただくカピ」

「はい、いただきます」

 まずは味噌雑炊。玉ねぎと米の甘みの相性がとても良い。人参の食感と玉ねぎの苗の仄かな辛味は良いアクセントに。

 それらを味噌と卵がまろやかにまとめている。

 そこに佃煮を乗せ、少し味を変えてみる。やや濃い味が食欲を刺激する。

 ああ、良かった、ちゃんと美味しく出来ている。壱は安心した。

 次に和風カルパッチョ。赤味噌だれは咄嗟とっさの思い付きで作った様なものだから、正直味に不安があった。

 味醂や日本酒があれば煮切って使いたかったところだが、両方無いので砂糖とオリーブオイルと水で伸ばしたのだが。さて、どうか。

 組み合わせ的に問題は無いと思うのだが、何せ初めて作ったのだから。

 スライス玉ねぎと鯛を重ね、赤味噌だれを付けて、いざ口に。

 うん、全然大丈夫。美味しく出来ている。赤味噌だれの風味、鯛の甘み、玉ねぎの辛みが良く合っている。上出来では無いだろうか。

 茂造とサユリを見ると、ふたりも満足そうに口を動かしていた。

「雑炊の優しい味が嬉しいのう。勿論いつもの朝ご飯も旨いがのう」

「確かに朝に食べるには重いものも多かったかも。食べたくなってつい。これからは雑炊も挟むね」

 壱は苦笑する。茂造は元気に見えても年寄りだった。こういったものの方が嬉しいのだと思う。

 だが毎日だと飽きも来るだろうし、壱は他の味噌料理だって食べたい。交互か、3~4回に1食のペースで織り交ぜてみようか。

「味噌は鯛とも合うのだカピな。うむ、悪く無いカピ」

 サユリもそう言いながら、和風カルパッチョに舌鼓したづつみを打っている。

「気に入ってくれて良かったよ」

 壱は笑みを浮かべた。
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