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#182 壱とサユリの小さな宴 その2
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「サユリ、お待たせ」
トレイをとりあえず机に置き、椅子をベッド脇に引き寄せる。テーブル代わりにするのだ。椅子に敷いてある座布団を外し、トレイを移した。
「大丈夫だと思うけど、零さない様に気を付けて飲んでね」
「大丈夫だカピ。我を誰だと思っているカピか」
「そうだね」
壱は小さく笑うと、ベッドに伏せるサユリの前にサラダボウルを置き、白ワインを注ぐ。壱のワイングラスにも。
「じゃ、乾杯」
「乾杯カピ」
壱はワイングラスの足を軽くサラダボウルに当て、ゆったりと口に含む。サユリもそっと口を近付け、ぺろりと舐めた。
この村で作られる白ワインは2種類。さっぱりとした甘みの少ない透明のものと、甘みが強めでフルーティな、やや黄色味掛かったもの。
壱とサユリの好みは甘みの強いものだった。なので今用意したのもそちらである。
壱はワインをじっくりと味わいながら、口角を上げた。
「やっぱりこの村のワインは美味しいな」
「それよりも食べるものカピ。チーズが良いカピ」
「はいはい」
余程腹が空いていたのか、催促するサユリ。壱は取り皿に3種のチーズを乗せ、脇に味噌ディップを盛った。
「好みでディップを付けてね。チーズとも合うと思うよ」
「ふむ」
サユリは早速器用にチーズを咥え、味噌ディップに付けて口に入れる。眼を細めて咀嚼。ごくりと喉を鳴らして飲み込んで、満足そうに頷いた。
「成る程カピ。これは良いカピ。味噌ディップカピか。これは野菜にも合うのだカピな?」
「勿論。味噌を作った時にきゅうりに付けて食べたでしょ。ディップはそれよりまろやかだけどね。野菜用には胡椒マヨネーズも用意してあるよ」
「それも早く皿に乗せるカピよ」
「はいはい」
チーズはとうに無くなっていた。相当腹が空いていたのだろうか。壱は皿に野菜と胡椒マヨネーズを盛ってやった。サユリはそれにも早速口を付ける。
「……ふむ、甘いめのマヨネーズに、胡椒が良いアクセントなのだカピな。これは確かに野菜に合うカピ」
「気に入ってくれて良かったよ。足りなかったらチーズも野菜もまた切って来るからさ」
「ふむ」
サユリの口は黙々とワインのサラダボウル、野菜の皿を往復する。壱はその様子を、ワイングラスを傾けながら眺めていた。
時折チーズと野菜を摘む。勿論味噌ディップと胡椒マヨネーズを付けながら。
我ながら両方とも素材に合い、良い出来栄えだ。両方ともたっぷりと付けてしまえばしつこくもなるが、少量でも充分に役割を果たしてくれる。
壱は夕飯も食べているから腹は空いていない。サユリが満足してくれる様にと様子を見ながらちびちび摘んでいた。
「ふぅ」
サユリが満足げに息を吐く。どうやら落ち着いた様だ。そして旨そうにワインを飲むと、また息を吐いた。
「満足カピ。さて壱、我がいない間、何も無かったカピか?」
サユリはそう言いながら、またワインを舐める。飲み態勢に入ったか。壱のワイングラスも空になったので、お代わりを注いだ。
サユリのサラダボウルを見ると、そちらも無くなり掛けていたので、追加を注いでやった。
「うん。相談事とかも無かったしね。これはサユリがいなかったからみんな待ってたのかも知れないけど。あ、でもみんなサユリがいなくて寂しがってたよ。やっぱり人気者なんだねサユリは」
壱が素直に言うと、サユリはまた鼻を鳴らした。
「当然カピ。我はこの通りキュートなのだカピ」
おや、これはサユリ流のジョークなのだろうか。サユリが可愛いのは勿論だし、普段から態度は尊大だが、外見に関しての自慢は初めて聞いた。
「確かにサユリは可愛いからね」
壱が笑みを浮かべながら言うと、サユリは珍しく照れ臭そうに視線を逸らした。ああしかしそんな仕草も可愛いのだった。仔カピバラ恐るべし。
「でも俺も、サユリが戻って来てくれると嬉しいし安心だよ。俺が言うのもおかしいかも知れないけど、村を護ってくれて本当にありがとう。俺、この村の暮らし結構好きなんだ。たまに不便な事もあるけど、あんまり気にならないと言うかさ。うん、この村、良い村だよね」
壱が言うと、サユリはまた鼻を鳴らす。
「ふむ。また明日から日常が戻るカピよ。壱も精々励むと良いカピ」
済ました顔で言うサユリに壱は笑みを浮かべ、幾度と頷いた。
「うん。これからもよろしくね」
サユリはまた鼻を鳴らし、壱の台詞に応えた。
トレイをとりあえず机に置き、椅子をベッド脇に引き寄せる。テーブル代わりにするのだ。椅子に敷いてある座布団を外し、トレイを移した。
「大丈夫だと思うけど、零さない様に気を付けて飲んでね」
「大丈夫だカピ。我を誰だと思っているカピか」
「そうだね」
壱は小さく笑うと、ベッドに伏せるサユリの前にサラダボウルを置き、白ワインを注ぐ。壱のワイングラスにも。
「じゃ、乾杯」
「乾杯カピ」
壱はワイングラスの足を軽くサラダボウルに当て、ゆったりと口に含む。サユリもそっと口を近付け、ぺろりと舐めた。
この村で作られる白ワインは2種類。さっぱりとした甘みの少ない透明のものと、甘みが強めでフルーティな、やや黄色味掛かったもの。
壱とサユリの好みは甘みの強いものだった。なので今用意したのもそちらである。
壱はワインをじっくりと味わいながら、口角を上げた。
「やっぱりこの村のワインは美味しいな」
「それよりも食べるものカピ。チーズが良いカピ」
「はいはい」
余程腹が空いていたのか、催促するサユリ。壱は取り皿に3種のチーズを乗せ、脇に味噌ディップを盛った。
「好みでディップを付けてね。チーズとも合うと思うよ」
「ふむ」
サユリは早速器用にチーズを咥え、味噌ディップに付けて口に入れる。眼を細めて咀嚼。ごくりと喉を鳴らして飲み込んで、満足そうに頷いた。
「成る程カピ。これは良いカピ。味噌ディップカピか。これは野菜にも合うのだカピな?」
「勿論。味噌を作った時にきゅうりに付けて食べたでしょ。ディップはそれよりまろやかだけどね。野菜用には胡椒マヨネーズも用意してあるよ」
「それも早く皿に乗せるカピよ」
「はいはい」
チーズはとうに無くなっていた。相当腹が空いていたのだろうか。壱は皿に野菜と胡椒マヨネーズを盛ってやった。サユリはそれにも早速口を付ける。
「……ふむ、甘いめのマヨネーズに、胡椒が良いアクセントなのだカピな。これは確かに野菜に合うカピ」
「気に入ってくれて良かったよ。足りなかったらチーズも野菜もまた切って来るからさ」
「ふむ」
サユリの口は黙々とワインのサラダボウル、野菜の皿を往復する。壱はその様子を、ワイングラスを傾けながら眺めていた。
時折チーズと野菜を摘む。勿論味噌ディップと胡椒マヨネーズを付けながら。
我ながら両方とも素材に合い、良い出来栄えだ。両方ともたっぷりと付けてしまえばしつこくもなるが、少量でも充分に役割を果たしてくれる。
壱は夕飯も食べているから腹は空いていない。サユリが満足してくれる様にと様子を見ながらちびちび摘んでいた。
「ふぅ」
サユリが満足げに息を吐く。どうやら落ち着いた様だ。そして旨そうにワインを飲むと、また息を吐いた。
「満足カピ。さて壱、我がいない間、何も無かったカピか?」
サユリはそう言いながら、またワインを舐める。飲み態勢に入ったか。壱のワイングラスも空になったので、お代わりを注いだ。
サユリのサラダボウルを見ると、そちらも無くなり掛けていたので、追加を注いでやった。
「うん。相談事とかも無かったしね。これはサユリがいなかったからみんな待ってたのかも知れないけど。あ、でもみんなサユリがいなくて寂しがってたよ。やっぱり人気者なんだねサユリは」
壱が素直に言うと、サユリはまた鼻を鳴らした。
「当然カピ。我はこの通りキュートなのだカピ」
おや、これはサユリ流のジョークなのだろうか。サユリが可愛いのは勿論だし、普段から態度は尊大だが、外見に関しての自慢は初めて聞いた。
「確かにサユリは可愛いからね」
壱が笑みを浮かべながら言うと、サユリは珍しく照れ臭そうに視線を逸らした。ああしかしそんな仕草も可愛いのだった。仔カピバラ恐るべし。
「でも俺も、サユリが戻って来てくれると嬉しいし安心だよ。俺が言うのもおかしいかも知れないけど、村を護ってくれて本当にありがとう。俺、この村の暮らし結構好きなんだ。たまに不便な事もあるけど、あんまり気にならないと言うかさ。うん、この村、良い村だよね」
壱が言うと、サユリはまた鼻を鳴らす。
「ふむ。また明日から日常が戻るカピよ。壱も精々励むと良いカピ」
済ました顔で言うサユリに壱は笑みを浮かべ、幾度と頷いた。
「うん。これからもよろしくね」
サユリはまた鼻を鳴らし、壱の台詞に応えた。
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