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#13 営業準備をしましょう。その3
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6台並ぶコンロの奥3口には、明日の分のコンソメが仕込まれた大鍋、昨日仕込んだコンソメで作ったポトフの大鍋、パスタを茹でる為に湯が沸かされた大鍋が並び、なかなか壮観だ。
トマトミートソースとカレーソースは、注文が来てから火を通し直すので、調理台に置いた鍋敷きの上へ。どちらもパスタに合わせる。
冷蔵庫には下拵え済みのチキンソテーやビーフステーキ、ポークステーキなどがスタンバイ。これらも注文があってから焼き始める。
クリームソースも冷蔵庫へ。ベーコンとマッシュルームと合わせてパスタに使う。
生きたままの魚も既に届けられ、奥の生け簀で元気に泳いでいる。サーモンやまぐろ、ぶり、かつおなど。壱たちの世界ではそこそこな大型魚だが、こちらの世界では大きくても30センチぐらいらしい。
お陰で捌きやすく、切り身が中途半端に残る事が無くて、助かるのだと言う。ちなみに肉も魚も捌くのはカリルの仕事である。
調理台の上に置かれた木製の平たいケースの中には、こんがりと焼き上がったパンと、練り上げたバスタがそれぞれ並べられている。
ボウルにはチキンソテーなどの付け合わせの人参とじゃがいもが。メインと同じフライパンで火を通す。
それらの横には壱が握った塩むすび。従業員が仕事中に好きにつまむとの事だったので、食べやすい様にと小さめに数多く握った。
メニューはどれも茂造が先代から継いだレシピで、1番人気はポトフなのだと言う。じゃがいもや人参、豆などがたっぷり入っている。
「さて、そろそろ開店かの」
仕込みがあらかた終わったところで、茂造がカウンタチェアから降りる。壱が壁際に置かれた背の高い振り子時計を見ると、午後6時少し前だった。
「開店時間て、6時なのか?」
「まぁ目安じゃがの。村人が仕事を切り上げるのが早くて大体5時ごろでの、それから風呂に入ったりしてから食べに来るんじゃ」
「そういや、村人の仕事って?」
「まずは農業じゃな。麦とか野菜とか果物、ハーブ、スパイス。そして漁師がおるの。一本釣りじゃぞ。貝類やえびは海に潜らにゃならんから、週に1日と決めておる。じゃから贅沢品じゃ。酪農は牛と豚と馬と羊と鶏を育てとる。乳を搾ったりチーズを作ったり、卵を収穫したりの。馬は馬車引き用じゃの。羊は毛を刈って毛糸にする。その職人もおるの。綿の木も育てておる。家畜は歳を取ったら潰すんじゃ。後は木製の家具やらを作る職人、陶器を作る職人。小さいが学校があるから教師もおる。酒も作っておるぞ。種類は限られておるがの。養蜂もやっとる。おおまかにはこんな感じかの。金属は今のところ村ではどうにも出来ん。街に買いに行くんじゃ」
茂造が指を1本1本折りながら、様々な仕事を上げてくれた。
「いろいろあるんだなぁ」
「他にもあるかの? 今ぱっと出て来るのはそれぐらいじゃ」
いや充分だろう。村の中だけでほとんどが賄える様になっている訳だ。サユリがこのコンシャリド村を作ってから、今まで何年かは判らないが、コツコツと積み上げて来たのだろう。
「さて、そろそろ給仕係も来るからの。さっき来たメリアンとあとふたり。ちゃんとした女の子と、またちゃんとしていない女の子の様な子じゃ」
「ちゃんとしてないって」
「要は女の子の格好をしている男じゃな。儂はそういう子にはこっちに来て初めて会うたからの、最初は驚いたものじゃ」
「こっちの、つか現実世界じゃ、最近多いよ。よくテレビに出てるし、女装させてくれる店があったり」
「凄いのう。時の流れを感じるのう」
茂造がしみじみと眼を細めた。そうだ。10年も経ったのだ。
現在24歳の壱も、当時は14歳だった。多感なお年頃だ。茂造の細君──祖母の圭子が亡くなり、茂造が行方不明になり、母が取り乱して。そう思うとなかなかハードは中学2年だったのかも知れない。2歳下の柚絵はまだ小学生だった。
ついそんな事を思い出してしんみりしてしまう。しかしそんな気持ちを打ち消す様に、フロアから元気な声が届いた。
トマトミートソースとカレーソースは、注文が来てから火を通し直すので、調理台に置いた鍋敷きの上へ。どちらもパスタに合わせる。
冷蔵庫には下拵え済みのチキンソテーやビーフステーキ、ポークステーキなどがスタンバイ。これらも注文があってから焼き始める。
クリームソースも冷蔵庫へ。ベーコンとマッシュルームと合わせてパスタに使う。
生きたままの魚も既に届けられ、奥の生け簀で元気に泳いでいる。サーモンやまぐろ、ぶり、かつおなど。壱たちの世界ではそこそこな大型魚だが、こちらの世界では大きくても30センチぐらいらしい。
お陰で捌きやすく、切り身が中途半端に残る事が無くて、助かるのだと言う。ちなみに肉も魚も捌くのはカリルの仕事である。
調理台の上に置かれた木製の平たいケースの中には、こんがりと焼き上がったパンと、練り上げたバスタがそれぞれ並べられている。
ボウルにはチキンソテーなどの付け合わせの人参とじゃがいもが。メインと同じフライパンで火を通す。
それらの横には壱が握った塩むすび。従業員が仕事中に好きにつまむとの事だったので、食べやすい様にと小さめに数多く握った。
メニューはどれも茂造が先代から継いだレシピで、1番人気はポトフなのだと言う。じゃがいもや人参、豆などがたっぷり入っている。
「さて、そろそろ開店かの」
仕込みがあらかた終わったところで、茂造がカウンタチェアから降りる。壱が壁際に置かれた背の高い振り子時計を見ると、午後6時少し前だった。
「開店時間て、6時なのか?」
「まぁ目安じゃがの。村人が仕事を切り上げるのが早くて大体5時ごろでの、それから風呂に入ったりしてから食べに来るんじゃ」
「そういや、村人の仕事って?」
「まずは農業じゃな。麦とか野菜とか果物、ハーブ、スパイス。そして漁師がおるの。一本釣りじゃぞ。貝類やえびは海に潜らにゃならんから、週に1日と決めておる。じゃから贅沢品じゃ。酪農は牛と豚と馬と羊と鶏を育てとる。乳を搾ったりチーズを作ったり、卵を収穫したりの。馬は馬車引き用じゃの。羊は毛を刈って毛糸にする。その職人もおるの。綿の木も育てておる。家畜は歳を取ったら潰すんじゃ。後は木製の家具やらを作る職人、陶器を作る職人。小さいが学校があるから教師もおる。酒も作っておるぞ。種類は限られておるがの。養蜂もやっとる。おおまかにはこんな感じかの。金属は今のところ村ではどうにも出来ん。街に買いに行くんじゃ」
茂造が指を1本1本折りながら、様々な仕事を上げてくれた。
「いろいろあるんだなぁ」
「他にもあるかの? 今ぱっと出て来るのはそれぐらいじゃ」
いや充分だろう。村の中だけでほとんどが賄える様になっている訳だ。サユリがこのコンシャリド村を作ってから、今まで何年かは判らないが、コツコツと積み上げて来たのだろう。
「さて、そろそろ給仕係も来るからの。さっき来たメリアンとあとふたり。ちゃんとした女の子と、またちゃんとしていない女の子の様な子じゃ」
「ちゃんとしてないって」
「要は女の子の格好をしている男じゃな。儂はそういう子にはこっちに来て初めて会うたからの、最初は驚いたものじゃ」
「こっちの、つか現実世界じゃ、最近多いよ。よくテレビに出てるし、女装させてくれる店があったり」
「凄いのう。時の流れを感じるのう」
茂造がしみじみと眼を細めた。そうだ。10年も経ったのだ。
現在24歳の壱も、当時は14歳だった。多感なお年頃だ。茂造の細君──祖母の圭子が亡くなり、茂造が行方不明になり、母が取り乱して。そう思うとなかなかハードは中学2年だったのかも知れない。2歳下の柚絵はまだ小学生だった。
ついそんな事を思い出してしんみりしてしまう。しかしそんな気持ちを打ち消す様に、フロアから元気な声が届いた。
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