異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#14 ヒロイン候補、あとのふたり

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「メリアンちゃん再び参上ー! 今夜もよろしくお願いしまーす!」

「ちょっとメリアン、うるさいわよぉ。もう少しおしとやかにしなさいな~」

「あ、あの、元気で良いと、思います」

 メリアンの後に続く声は、壱が現実世界のテレビで聞き慣れたオネエの様なものと、高くややか細いもの。

「ほっほ、ウエイトレス3人勢揃せいぞろいじゃ。紹介するから来るが良い」

 フロアに向かう茂造に付いて行く。そこに立っていたのはメリアンと、赤い髪の派手な女性、そして黒髪の大人しそうな女の子だった。

「ほいほい、今夜もよろしく頼むぞい」

「よろしくー!」

「よろしくねぇ」

「よ、よろしくお願い、します」

 三者三様の返事である。メリアンはもうすでに男性だと判っているから、もうひとり、どちらかが男性だと言う事だ。壱は赤髪の方がそうだと目星を付けた。背が高く、声も聞き慣れた雰囲気のものだったからだ。

「メリアンから聞いとるかの? こいつが儂の孫の壱じゃ。今日から早速厨房に入るでの。よろしく頼むぞい」

「よろしくお願いします」

 壱は言い、軽く頭をさげる。

「あらためてよろしくね! イチ!」

「あらぁ、可愛い男の子ねぇ。ワタシはマーガレット。身体は男だけど、心は女なの。だから女としてあつかってくれたら嬉しいわぁ。よろしくねぇ」

 やはり赤髪の方が男性だったか。しかし美人だと思う。

 メリアンの事もあるが、壱は現実世界のテレビでオネエな方々を見慣れているせいか、見目が悪くなければどちらでも良いという気になっていた。

「よ、よろしく、お願いします。マユリ、です」

 もうひとりは小柄で、大人しそうな女の子だ。少し吃りながら喋る。吃音癖きつおんぐぜなどがあるのだろうか。だとしたらホール係は難しいのでは無かろうか。いや、余計なお世話か。

「さ、そろそろ営業時間じゃぞ。お前さんら、エプロンを着けてな」

「はーい!」

「はぁい」

「は、はい」

 それぞれ返事をし、3人はカウンタに移動する。エプロンは内側の棚に置いてある様だ。

 3人が着けたものは、ネイビーに白の水玉という、可愛らしいエプロンドレスだった。

 続けてマーガレットは、ふんわりと波打つ赤髪を左横で緩い三つ編みにまとめる。マユリはもともと後ろでひとつに纏めていたのでそのままだ。メリアンは纏められる長さが無いからか、エプロンと同じネイビーのカチューシャを付けた。

「あれ、エプロンあるんだ。割烹着かっぽうぎじゃ無いんだ」

「前は割烹着じゃったんじゃが、マーガレットが街に行った時にエプロンを見付けて来ての。こっちが良いと言われたんで、変えたんじゃ」

「何で厨房は割烹着のままなんだ」

「誰からも文句が出なかったからのう」

 調理をする者が着るものだと言われ、それを受け入れてしまうと、そういうものなのかも知れない。しかしカリルなどはコックコートなどを見ると「こっちが良い」などと言いそうな気がする。街にはあるのだろうか。

 メリアンあたりは、現実世界のメイド服などを見たら狂喜乱舞きょうきらんぶしそうだ。

「さて、そろそろ開て……」

「店長そろそろいいかー!? 腹減ったー!」

 茂造が言い終える前に、ひとりの若い男性客が飛び込む様にドアを開けた。

「ほっほっほ、開店じゃな。いらっしゃい」

「いらっしゃーい!」

「いらっしゃいませぇ」

「い、いらっしゃい、ませ」

 客1号を迎え、さぁ、ユミヤ食堂本日夜の部、開店である。
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