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#15 夜営業スタート
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それはもう、なかなかに忙しかった。
このコンシャリド村は、大人は全員が仕事をし、子どもたちも学校や宿題の時間以外ではその手伝いをする。なので各家庭で調理をする習慣が無いのである。
昼食と夕食を、この村唯一の食堂であるユミヤ食堂で摂り、翌朝の食事を買って行く。
朝っぱらから重たいものは喉が通りにくいので、ほとんどの村人がパンやマッシュポテト、ポトフなどを買って行く。ポトフが1番人気なのはこれが理由だ。夕食にも朝食にもなるからである。
なので村人全員が、入れ替わり立ち替わりこの食堂に来るのだ。
幸いだったのが、メニューがシンプルだと言う事だった。
パスタは常に沸かされている大鍋で、茹で時間の短い生パスタを茹でて、トマトミートソースかカレーソースと合わせるだけだし、ポトフは常にとろ火に掛けられているので器によそうだけ。
肉類は漬け込んだ以外のものは塩胡椒をして焼き、その傍らで付け合わせのじゃがいもや人参の火を通すので、手間はそう掛からない。
カルパッチョの魚を捌くのにカリルが奮闘しているが、注文が続く事は無いので、時折塩むすびを摘んでいる。
肉類を焼くのは主に茂造である。手際良く鉄製のフライパンを動かす。こちらの世界に来る前にはろくにキッチンに立った事も無かったはずなのに、大したものだ。
壱の主な仕事はパスタ作りとなった。普段は手が空いている料理人の仕事だ。今日は壱がいるので、それぞれがそれぞれの専門に専念出来ている。それだけで随分助かるのだと言う。
客足のピークは18時から21時ごろまで。その間に村人が入れ替わり立ち替わり訪れ、各々に注文し、エールなどを傾ける。
村人の多くは力仕事な為に食欲も旺盛で、ひとり一品では済まない。バスタとポトフ、肉類とポトフ、カルパッチョとパスタ、等々の組み合わせでの注文が多く、洗い物も多く出るのだ。
それぞれの生活リズムもあるのか、不思議と満席を理由で客を待たせてしまう事は無かったが、代わりに途切れないので、壱も茂造もあとのふたりも、そしてホール係もほとんど休む間も無く動いた。
サユリも忙しなく客席を飛び回り、話し相手をしたり、撫でられたりと、献身的に働いていた。
「まずはエールだエール。エール4つな!」
「ポトフ2皿とトマトのバスタ、ビーフステーキね!」
「チキンのハーブソテーとカルパッチョお願い。サーモン多くしてね!」
「はーい、ちょっと待ってねー」
「はぁい、お待たせぇ」
「あ、ありがとう、ございま、した」
食堂内はホール係と客の声が混じり合って大層賑やかで、それは厨房にも届いていた。
22時になる頃には、客足もぐんと減る。程よくアルコールをかっくらって上機嫌な客がちらほらといる程度。
そんな客らもそう遅くまでは居座らない。明日にはまた早くから仕事が控えているのだから。
そうして客足が穏やかになり、空席が目立つ様になった22時過ぎ。従業員たちは客の邪魔にならない程度の片付けを始める。
この食堂の閉店時間は、厳密には決められていない。客が来なくなれば、正確には村人全員が来れば閉める、そういうルールが村そのものに出来ていた。
そのチェックはホール係が行う。カウンタに茂造が書いたリストが置かれていて、ホール係がチェックするのだ。
手の空いた茂造が、フロアに顔を覗かす。
「どうじゃ、全員来たかの?」
「うん。今日もみんな元気だね! あ、ボニーさんが後でもいっかい来るって」
茂造の問いに、メリアンが応える。
「うむ?」
今、テーブルはひとつだけ埋まっていて、その中にボニーの夫であるシェムスが混じっていた。ワインを傾け、楽しそうに笑っている。
「……ふむ」
「じいちゃん、どうした?」
壱も手が空いたので、フロアに来てみた。
「うむ、ボニーがまた来ると。なる程の。しかしほら、旦那のシェムスがそこで呑んだくれておる」
茂造が指差す方を見ると、壱がこの村に来た時に初めて会った男が、機嫌良さそうに横に座る男性と談笑していた。
「壱よ、この食堂はの、食堂ではあるんじゃが、また別の顔を持っておるんじゃよ。とは言え、そんな構える必要は無いがの」
「ふぅん?」
壱は訳が分からず、そう応えるしか無い。
しかし答えはすぐに転がり込んで来た。
このコンシャリド村は、大人は全員が仕事をし、子どもたちも学校や宿題の時間以外ではその手伝いをする。なので各家庭で調理をする習慣が無いのである。
昼食と夕食を、この村唯一の食堂であるユミヤ食堂で摂り、翌朝の食事を買って行く。
朝っぱらから重たいものは喉が通りにくいので、ほとんどの村人がパンやマッシュポテト、ポトフなどを買って行く。ポトフが1番人気なのはこれが理由だ。夕食にも朝食にもなるからである。
なので村人全員が、入れ替わり立ち替わりこの食堂に来るのだ。
幸いだったのが、メニューがシンプルだと言う事だった。
パスタは常に沸かされている大鍋で、茹で時間の短い生パスタを茹でて、トマトミートソースかカレーソースと合わせるだけだし、ポトフは常にとろ火に掛けられているので器によそうだけ。
肉類は漬け込んだ以外のものは塩胡椒をして焼き、その傍らで付け合わせのじゃがいもや人参の火を通すので、手間はそう掛からない。
カルパッチョの魚を捌くのにカリルが奮闘しているが、注文が続く事は無いので、時折塩むすびを摘んでいる。
肉類を焼くのは主に茂造である。手際良く鉄製のフライパンを動かす。こちらの世界に来る前にはろくにキッチンに立った事も無かったはずなのに、大したものだ。
壱の主な仕事はパスタ作りとなった。普段は手が空いている料理人の仕事だ。今日は壱がいるので、それぞれがそれぞれの専門に専念出来ている。それだけで随分助かるのだと言う。
客足のピークは18時から21時ごろまで。その間に村人が入れ替わり立ち替わり訪れ、各々に注文し、エールなどを傾ける。
村人の多くは力仕事な為に食欲も旺盛で、ひとり一品では済まない。バスタとポトフ、肉類とポトフ、カルパッチョとパスタ、等々の組み合わせでの注文が多く、洗い物も多く出るのだ。
それぞれの生活リズムもあるのか、不思議と満席を理由で客を待たせてしまう事は無かったが、代わりに途切れないので、壱も茂造もあとのふたりも、そしてホール係もほとんど休む間も無く動いた。
サユリも忙しなく客席を飛び回り、話し相手をしたり、撫でられたりと、献身的に働いていた。
「まずはエールだエール。エール4つな!」
「ポトフ2皿とトマトのバスタ、ビーフステーキね!」
「チキンのハーブソテーとカルパッチョお願い。サーモン多くしてね!」
「はーい、ちょっと待ってねー」
「はぁい、お待たせぇ」
「あ、ありがとう、ございま、した」
食堂内はホール係と客の声が混じり合って大層賑やかで、それは厨房にも届いていた。
22時になる頃には、客足もぐんと減る。程よくアルコールをかっくらって上機嫌な客がちらほらといる程度。
そんな客らもそう遅くまでは居座らない。明日にはまた早くから仕事が控えているのだから。
そうして客足が穏やかになり、空席が目立つ様になった22時過ぎ。従業員たちは客の邪魔にならない程度の片付けを始める。
この食堂の閉店時間は、厳密には決められていない。客が来なくなれば、正確には村人全員が来れば閉める、そういうルールが村そのものに出来ていた。
そのチェックはホール係が行う。カウンタに茂造が書いたリストが置かれていて、ホール係がチェックするのだ。
手の空いた茂造が、フロアに顔を覗かす。
「どうじゃ、全員来たかの?」
「うん。今日もみんな元気だね! あ、ボニーさんが後でもいっかい来るって」
茂造の問いに、メリアンが応える。
「うむ?」
今、テーブルはひとつだけ埋まっていて、その中にボニーの夫であるシェムスが混じっていた。ワインを傾け、楽しそうに笑っている。
「……ふむ」
「じいちゃん、どうした?」
壱も手が空いたので、フロアに来てみた。
「うむ、ボニーがまた来ると。なる程の。しかしほら、旦那のシェムスがそこで呑んだくれておる」
茂造が指差す方を見ると、壱がこの村に来た時に初めて会った男が、機嫌良さそうに横に座る男性と談笑していた。
「壱よ、この食堂はの、食堂ではあるんじゃが、また別の顔を持っておるんじゃよ。とは言え、そんな構える必要は無いがの」
「ふぅん?」
壱は訳が分からず、そう応えるしか無い。
しかし答えはすぐに転がり込んで来た。
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