異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#30 コンシャリド村の始まり。その2

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 ふたりが目覚めたのは、一昼夜後だった。どうにか起き上がれる様になり、ユミヤが用意した食事を軽く摂り、ふたりの顔にようやく生気が戻った。

 怪我もしていた様だが、それは軽いもので、体力の消耗や空腹が酷かったのだ。

「で、一体どうしたんだ?」

 ユミヤの問いに、ふたりは眼を合わせた後、男性が語り出した。

 女性には、魔法の素養があるのだと言う。先述せんじゅつしたが、素養があっても魔法が使えるかどうかは違う話。だがふたりが暮らしていた街の上層部は、女性を召し抱えようとした。

 そこ頃、その街には不穏な噂が流れていた。魔法が使えずとも、素養のある人間を集めて、エネルギー元にしようという話。

 魔法を使える人間が、その魔力の補助として使うのである。

 魔法使いとして召されるのであれば、優遇もされる。だがただの電池扱いである者はどうだ。

 魔力の枯渇こかつ云々はまだ証明されていない。だがこれが現実のものだったとして、電池の魔力が途切れれば。

 どういう扱いを受けるか。

 どれもこれも想像の範疇はんちゅうである。だが自らで魔法の素養を測れない人間が警戒するのは無理も無い。誰もがその時が来なければ良いと、怯えて過ごしていた。

 しかし女性にとって、それは現実のものとなった。

 ふたりが一緒に出掛けている時に、騎士団が押し掛けたのだ。

「その女には魔法の素養がある。女、共に来い」

 女性はその瞬間、震えてか細い声を上げ、同時に男性は奮起した。

 守らなければ。好きな女性を何としても守らなければと、女性の腕を取って、立ち並ぶ騎士団の、少し隙間があった中央から突っ込んだ。囲まれていたので他に道は無かった。

 騎士団が身に付けていた硬い鎧で身体にあざが出来る様な痛みを受け、それでも男性は女性をかばい、連れながら走った。途中で女性が弱音を吐いても、声を掛けて立ち上がらせて、走った。

 そうして闇雲に走って辿り着いたのが、サユリとユミヤが暮らす、この土地だった。

 街を出るまでは身を潜めつつ慎重に、しかし他の騎士団にもかち合った。その度に走った。騎士団の鎧に当たっては打ち身を作り服を破き、どうにか街の外に出て、ひたすらに走ったのだ。

「そっか。そりゃあ大変だったな」

 その行程に共感したのかユミヤが眉を潜めると、ふたりは労わり合う様に身を寄せた。

「けど、ここは大丈夫だ。安心だからさ、元気になるまでいてくれて良いから」

「でも、そんな面倒を掛ける訳には」

「面倒なんて思わねーって。それより、お前らこれからどうするつもりだ?」

 ユミヤが言うと、男性は女性を支えながら、強い眼をして言った。

「逃げます。街の上層部がこれで諦めてくれていたら良いけど、判らないから。厳しいかも知れないけど、彼女が辛い目にうよりはましですから」

「お前、良い男だなぁ!」

 ユミヤが関心した様に声を上げる。ここでようやくサユリが口を開いた。

「腹立たしいカピな。もしその噂が本当だったとしたら、我ら魔法使いの名折れカピ。お前たち、この土地は我が加護を与えているカピ。だから他に行く地が無いのであれば、ここにいると良いカピ」

 サユリの発言に、ふたりは大いに驚き、眼を見開いた。

「え、え、喋るカピバラって、まさか」

「そうカピ、我は魔法が使えるカピバラカピ。これまでの経験上、余程強い魔法使いで無い限り我の加護は崩せないカピ。そうカピな、お前たちがここに辿り着いたのは、女性の素養のせいかも知れないカピな」

 ただの偶然かも知れないが、サユリの魔力を感知して引き寄せられた可能性が無いとは言えない。魔法の素養のある者は、魔法使いより少なかった。そして普通の人間として扱われるので、何の証明もされていないのである。

「我としても、ここにいる事を知られたくは無いカピ。利害は一致している筈カピよ。どうする? ここにとどまるか、更に逃げるか」

 ふたりが考え込むと、ユミヤが陽気な声を出す。

「難しく考えんな! 逃げたい人間がこうして集まったんだ。ここは一丁、集落しゅうらくでも作らねーか? ほら、村なら届出とがいるけど、集落ならいらねーだろ? なぁカピバラ、俺が材料集めるからさ、ふたりの小屋を作ってやってくれよ。助け合って生きて行くんだ。お前の加護があるんだから、大丈夫だって」

 ユミヤのその台詞に、ふたりは顔を見合わせて、視線はそのままサユリに移る。希望を見出した様な、ここに来てから初めて見せる、鈍いながらも輝く眸。

 集落云々うんぬんはともかく、情報漏洩ろうえいは避けたかったし、このふたりをここに留めておくには、ユミヤのそれは良い提案なのかも知れない。

 サユリは溜め息をひとつ吐くと、言った。

「そうカピな。現状、それが最適解かも知れないカピ。お前たち、それで良いカピか?」

 ふたりを見ると、手を取り合って今にでも飛び上がりそうな勢いで破顔していた。

 これは、決まりカピな。

 サユリはまたひとつ息を吐いた。だがその頬はかすかに緩んでいた。
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