異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#33 味わいミネストローネ

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 13時過ぎ、昼の営業が一段落し、壱はようやく昼食にありつける。今日はバジルソースのパスタが沢山出たので、ソースは残りもとない。なので壱はミネストローネとパンをいただく事にする。

「じゃあありがとう、お先にいただきます」

 壱が言うと、方々から「良いんじゃよ」「いいって!」と聞こえる。壱は次期店長とは言えまだ新人なので、みんな甘やかしてくれているのだ。

 勿論壱はそれに甘えているつもりは無い。みんなの足手まといにならない様に頑張っているつもりだ。役に立てていると良いのだが。

 ミネストローネをスプーンですくい、口に運ぶ。うん、トマトの甘みと酸味の塩梅あんばいがちょうど良い。角を取るために少量入れた砂糖が効いているのか、まろやかにも感じる。

 これに使ったトマトは茂造が下拵したごしらえをしたのだが、する前を見せてもらっていた。張りがあって真っ赤で良くれていた。トマト農家が丹念に育ててくれた証拠だ。

 皮の湯剥ゆむきなどはしない。食べられるところを捨ててしまうのは勿体無いと言う精神だ。だが気にならない。充分柔らかい。

 スープのベースはブイヨンである。昼に出来上がったブイヨンからミネストローネ、もしくはクラムチャウダーの分を取り、そこからボトフ用のコンソメを作るのである。

 素材は全てが大振りに切られている。しんなりと甘みが出るまで炒めた玉ねぎ、ほっくりとしたじゃがいも、甘いにんじん。

 ブロッコリとカリフラワはでてあるものをよそう直前に入れるので、歯応えがしっかりあって彩りも綺麗。

 数種類入っている豆類も柔らかく甘く仕上がっている。壱が普段口にする機会の少ない豆ばかりだったが、どれも美味しかった。

 角切りされたベーコンも食べ応えがあった。豚農家がベーコンの燻製くんせいまでを請け負っているのだが、オリーブの木でいぶしてあるのだそうだ。香ばしいがやや甘い香りもする。

 そのベーコンからもスープに味がにじみ出ている。ローリエとオレガノも使っているので、香りも豊かだ。

 壱はつい破顔する。美味しいご飯は人を幸せにするものだ。仕事中の村人がこれらのご飯を食べて、また昼から仕事を頑張るのだ。うん、頑張れる。

 パンをちぎり、ミネストローネのスープに浸してみる。パリッとした香ばしい表面に特に良く合った。柔らかい中身にも勿論合う。これはついついすくい切れなかったスープもソースも、根こそぎいただいてしまう。

「どうだー? イチ、我らユミヤ食堂のミネストローネは」

 これも昼限定メニューのホットケーキを焼きながら、カリルが声を掛けて来た。壱は素直な感想を告げる。

「すっごく美味しい。凄いな」

「だろー? オレらが小っちぇえ頃から慣れ親しんだ味だぜ。オレさ、ここの飯ずっと食って来て、それで料理人になりてーって思ったんだぜ」

「へぇ?」

 少し以外なカリルの過去である。気が利くが、軽い人間だと思っていたのだが。

「料理人の免許って、1年以上の実地訓練の後にやっと試験が受けれんだよ。免許取らなきゃ肉とか魚とかさばけねーのな。あ、イチがやってた、捌いた後をカットとかそーゆうのは大丈夫だからな」

「そうなんだ」

 にしても、壱たちの世界よりは随分緩い。

「儂も勿論持っとるぞ」

 のんびりとコンソメ作りに始終している茂造も話に加わる。

「さすがに食堂の店長じゃからの。壱にも取って欲しいんじゃが」

「ああうん、それは良いけど」

「そうか! それは嬉しいのう!」

 壱はあまり深く考えず、ただ調理師免許を取るぐらいなら、と思ったのだが、茂造が予想外に喜んでくれたので、壱はやや驚く。

「う、うん。今からだと1年後になるのかな。その時に考えるからさ」

 サユリは、壱が元の世界に帰れる様になれるまで、後数年は掛かると言った。なら1年後に調理師免許を取って食堂を継ぐ事はけられないのだと思う。

 あらがう理由は無いし、この仕事は結構好きである。やりがいもある。ならなる様になっても問題無い。

 ミネストローネとパンを食べ終える。

「ごちそうさま」

 洗い物をサントに任せ、次はカリルが昼食をる番だ。壱はひっくり返したばかりのホットケーキをカリルから引き継いだ。

「おお、そうじゃ壱、あの、なんじゃ、フレンチトーストのリクエストが出ていての。また作ってやってくれんかの」

「材料があったら作れるよ。昼のメニューにするってじいちゃん言ってただろ?」

「そうじゃのう。明日からパンを多めに焼いて、メニューにするかのう」

「前の日のパンでも出来るよ。ラスクとかも作れるし」

「ラスクとは何じゃ?」

「パンで作るお菓子。今度作るよ。まずはフレンチトーストかな」

 壱は言いながら、ホットケーキの様子を見る。もう少しげ目が付いた方が良さそうだ。

 そのタイミングでバジルソースパスタの注文が入ったので、パスタを大鍋に入れる。同時並行でフライパンにバジルソースと、火が通してあるじゃがいもとサーモンを放り込んだ。
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