33 / 190
#33 味わいミネストローネ
しおりを挟む
13時過ぎ、昼の営業が一段落し、壱はようやく昼食にありつける。今日はバジルソースのパスタが沢山出たので、ソースは残りもとない。なので壱はミネストローネとパンをいただく事にする。
「じゃあありがとう、お先にいただきます」
壱が言うと、方々から「良いんじゃよ」「いいって!」と聞こえる。壱は次期店長とは言えまだ新人なので、みんな甘やかしてくれているのだ。
勿論壱はそれに甘えているつもりは無い。みんなの足手まといにならない様に頑張っているつもりだ。役に立てていると良いのだが。
ミネストローネをスプーンで掬い、口に運ぶ。うん、トマトの甘みと酸味の塩梅がちょうど良い。角を取るために少量入れた砂糖が効いているのか、まろやかにも感じる。
これに使ったトマトは茂造が下拵えをしたのだが、する前を見せてもらっていた。張りがあって真っ赤で良く熟れていた。トマト農家が丹念に育ててくれた証拠だ。
皮の湯剥きなどはしない。食べられるところを捨ててしまうのは勿体無いと言う精神だ。だが気にならない。充分柔らかい。
スープのベースはブイヨンである。昼に出来上がったブイヨンからミネストローネ、もしくはクラムチャウダーの分を取り、そこからボトフ用のコンソメを作るのである。
素材は全てが大振りに切られている。しんなりと甘みが出るまで炒めた玉ねぎ、ほっくりとしたじゃがいも、甘いにんじん。
ブロッコリとカリフラワは茹でてあるものをよそう直前に入れるので、歯応えがしっかりあって彩りも綺麗。
数種類入っている豆類も柔らかく甘く仕上がっている。壱が普段口にする機会の少ない豆ばかりだったが、どれも美味しかった。
角切りされたベーコンも食べ応えがあった。豚農家がベーコンの燻製までを請け負っているのだが、オリーブの木で燻してあるのだそうだ。香ばしいがやや甘い香りもする。
そのベーコンからもスープに味が滲み出ている。ローリエとオレガノも使っているので、香りも豊かだ。
壱はつい破顔する。美味しいご飯は人を幸せにするものだ。仕事中の村人がこれらのご飯を食べて、また昼から仕事を頑張るのだ。うん、頑張れる。
パンをちぎり、ミネストローネのスープに浸してみる。パリッとした香ばしい表面に特に良く合った。柔らかい中身にも勿論合う。これはついつい掬い切れなかったスープもソースも、根こそぎいただいてしまう。
「どうだー? イチ、我らユミヤ食堂のミネストローネは」
これも昼限定メニューのホットケーキを焼きながら、カリルが声を掛けて来た。壱は素直な感想を告げる。
「すっごく美味しい。凄いな」
「だろー? オレらが小っちぇえ頃から慣れ親しんだ味だぜ。オレさ、ここの飯ずっと食って来て、それで料理人になりてーって思ったんだぜ」
「へぇ?」
少し以外なカリルの過去である。気が利くが、軽い人間だと思っていたのだが。
「料理人の免許って、1年以上の実地訓練の後にやっと試験が受けれんだよ。免許取らなきゃ肉とか魚とか捌けねーのな。あ、イチがやってた、捌いた後をカットとかそーゆうのは大丈夫だからな」
「そうなんだ」
にしても、壱たちの世界よりは随分緩い。
「儂も勿論持っとるぞ」
のんびりとコンソメ作りに始終している茂造も話に加わる。
「さすがに食堂の店長じゃからの。壱にも取って欲しいんじゃが」
「ああうん、それは良いけど」
「そうか! それは嬉しいのう!」
壱はあまり深く考えず、ただ調理師免許を取るぐらいなら、と思ったのだが、茂造が予想外に喜んでくれたので、壱はやや驚く。
「う、うん。今からだと1年後になるのかな。その時に考えるからさ」
サユリは、壱が元の世界に帰れる様になれるまで、後数年は掛かると言った。なら1年後に調理師免許を取って食堂を継ぐ事は避けられないのだと思う。
抗う理由は無いし、この仕事は結構好きである。やりがいもある。ならなる様になっても問題無い。
ミネストローネとパンを食べ終える。
「ごちそうさま」
洗い物をサントに任せ、次はカリルが昼食を摂る番だ。壱はひっくり返したばかりのホットケーキをカリルから引き継いだ。
「おお、そうじゃ壱、あの、なんじゃ、フレンチトーストのリクエストが出ていての。また作ってやってくれんかの」
「材料があったら作れるよ。昼のメニューにするってじいちゃん言ってただろ?」
「そうじゃのう。明日からパンを多めに焼いて、メニューにするかのう」
「前の日のパンでも出来るよ。ラスクとかも作れるし」
「ラスクとは何じゃ?」
「パンで作るお菓子。今度作るよ。まずはフレンチトーストかな」
壱は言いながら、ホットケーキの様子を見る。もう少し焦げ目が付いた方が良さそうだ。
そのタイミングでバジルソースパスタの注文が入ったので、パスタを大鍋に入れる。同時並行でフライパンにバジルソースと、火が通してあるじゃがいもとサーモンを放り込んだ。
「じゃあありがとう、お先にいただきます」
壱が言うと、方々から「良いんじゃよ」「いいって!」と聞こえる。壱は次期店長とは言えまだ新人なので、みんな甘やかしてくれているのだ。
勿論壱はそれに甘えているつもりは無い。みんなの足手まといにならない様に頑張っているつもりだ。役に立てていると良いのだが。
ミネストローネをスプーンで掬い、口に運ぶ。うん、トマトの甘みと酸味の塩梅がちょうど良い。角を取るために少量入れた砂糖が効いているのか、まろやかにも感じる。
これに使ったトマトは茂造が下拵えをしたのだが、する前を見せてもらっていた。張りがあって真っ赤で良く熟れていた。トマト農家が丹念に育ててくれた証拠だ。
皮の湯剥きなどはしない。食べられるところを捨ててしまうのは勿体無いと言う精神だ。だが気にならない。充分柔らかい。
スープのベースはブイヨンである。昼に出来上がったブイヨンからミネストローネ、もしくはクラムチャウダーの分を取り、そこからボトフ用のコンソメを作るのである。
素材は全てが大振りに切られている。しんなりと甘みが出るまで炒めた玉ねぎ、ほっくりとしたじゃがいも、甘いにんじん。
ブロッコリとカリフラワは茹でてあるものをよそう直前に入れるので、歯応えがしっかりあって彩りも綺麗。
数種類入っている豆類も柔らかく甘く仕上がっている。壱が普段口にする機会の少ない豆ばかりだったが、どれも美味しかった。
角切りされたベーコンも食べ応えがあった。豚農家がベーコンの燻製までを請け負っているのだが、オリーブの木で燻してあるのだそうだ。香ばしいがやや甘い香りもする。
そのベーコンからもスープに味が滲み出ている。ローリエとオレガノも使っているので、香りも豊かだ。
壱はつい破顔する。美味しいご飯は人を幸せにするものだ。仕事中の村人がこれらのご飯を食べて、また昼から仕事を頑張るのだ。うん、頑張れる。
パンをちぎり、ミネストローネのスープに浸してみる。パリッとした香ばしい表面に特に良く合った。柔らかい中身にも勿論合う。これはついつい掬い切れなかったスープもソースも、根こそぎいただいてしまう。
「どうだー? イチ、我らユミヤ食堂のミネストローネは」
これも昼限定メニューのホットケーキを焼きながら、カリルが声を掛けて来た。壱は素直な感想を告げる。
「すっごく美味しい。凄いな」
「だろー? オレらが小っちぇえ頃から慣れ親しんだ味だぜ。オレさ、ここの飯ずっと食って来て、それで料理人になりてーって思ったんだぜ」
「へぇ?」
少し以外なカリルの過去である。気が利くが、軽い人間だと思っていたのだが。
「料理人の免許って、1年以上の実地訓練の後にやっと試験が受けれんだよ。免許取らなきゃ肉とか魚とか捌けねーのな。あ、イチがやってた、捌いた後をカットとかそーゆうのは大丈夫だからな」
「そうなんだ」
にしても、壱たちの世界よりは随分緩い。
「儂も勿論持っとるぞ」
のんびりとコンソメ作りに始終している茂造も話に加わる。
「さすがに食堂の店長じゃからの。壱にも取って欲しいんじゃが」
「ああうん、それは良いけど」
「そうか! それは嬉しいのう!」
壱はあまり深く考えず、ただ調理師免許を取るぐらいなら、と思ったのだが、茂造が予想外に喜んでくれたので、壱はやや驚く。
「う、うん。今からだと1年後になるのかな。その時に考えるからさ」
サユリは、壱が元の世界に帰れる様になれるまで、後数年は掛かると言った。なら1年後に調理師免許を取って食堂を継ぐ事は避けられないのだと思う。
抗う理由は無いし、この仕事は結構好きである。やりがいもある。ならなる様になっても問題無い。
ミネストローネとパンを食べ終える。
「ごちそうさま」
洗い物をサントに任せ、次はカリルが昼食を摂る番だ。壱はひっくり返したばかりのホットケーキをカリルから引き継いだ。
「おお、そうじゃ壱、あの、なんじゃ、フレンチトーストのリクエストが出ていての。また作ってやってくれんかの」
「材料があったら作れるよ。昼のメニューにするってじいちゃん言ってただろ?」
「そうじゃのう。明日からパンを多めに焼いて、メニューにするかのう」
「前の日のパンでも出来るよ。ラスクとかも作れるし」
「ラスクとは何じゃ?」
「パンで作るお菓子。今度作るよ。まずはフレンチトーストかな」
壱は言いながら、ホットケーキの様子を見る。もう少し焦げ目が付いた方が良さそうだ。
そのタイミングでバジルソースパスタの注文が入ったので、パスタを大鍋に入れる。同時並行でフライパンにバジルソースと、火が通してあるじゃがいもとサーモンを放り込んだ。
23
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる