異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#34 大きな味噌への1歩

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 13時半になるまでに、全ての村人が訪れた。店内を軽く掃除し、休憩に入る。

 従業員が全員一時帰宅して、2階のダイニングでサユリと茂造だけになった時に、壱は聞いてみた。

「俺、そろそろ味噌を作りたいんだ。時間貰えるかな」

「それは勿論だカピ。言っていたものカピな。まず材料を揃えなければならないカピ。大豆以外に何がいるカピ?」

 あまりにもあっさり言われたものだから、壱は若干じゃっかん拍子ひょうし抜けする。が、作れるのならそれは嬉しい。壱は食い入る様に口を開く。

「後は塩と、米麹こめこうじ麦麹むぎこうじ、それか両方。ただ、こうじを作るのには麹菌きくきんがいるんだ。その作り方をスマホで調べてたんだけど、全然出て来なくて」

「ふむ……」

 サユリは眼を伏せ、逡巡しゅんじゅんする。が、やがて口を開いた。

「その麹菌とやら、壱の世界から持って来る事が出来るカピよ」

「本当に?」

「けども」

 サユリはやや興奮した壱を落ち着かせる様に言う。

「物質の移動は魔力を多く使うカピ。実体の無いWi-Fiらしきものをここに繋げるのとは訳が違うカピ。次、お前たちの世界に渡れる様になれる程の魔力を、今、我は貯めているいるカピが、麹菌を持って来るのに使うと、その分削られるカピ。壱がそれで良いなら」

「勿論良いよ」

 壱があっさり言うものだから、サユリは言葉を詰まらせた。

 帰れるまで何年掛かるか判らない。だがしかし、それ以前に壱はここでの生活が嫌いでは無い。祖父が、茂造が願うのであれば、それを叶えてやりたいとも思っている。

 向こうにいる家族は悲しんでくれるだろう。だが現状どうにも出来ない。それなら多少期間が延びても、まずは味噌である。自分の安定を確保する。

「壱よ、本当に良いのかの?」

「大丈夫だって」

 気遣ってくれる茂造を安心させる為に、壱は笑みを浮かべた。

「では、麹菌とやらを取るカピ。何かお好みのやつはあるカピ?」

「うちの蔵から取って来て貰えたら嬉しいかな。白い粉で、麹菌て書いてある大きめな紙袋に入ってて、蔵のーー」

 記憶を頼りに置いてある場所を言う。多分変わっていない筈だ。

「解ったカピ。と言っても今の魔力だとほんの少ししか持っては来れないカピ。持って来た後に、足りなければ我の魔法で増やすカピ」

「それで全然問題無いよ。むしろ好都合。あんまりたくさん持ち出して、泥棒だ何だって事になったら大変だから」

「ああ、それはそうカピな。あまり向こうの世界に騒ぎを起こすのを良しとはしないカピよ」

 あんた人ひとり、いやふたり行方不明にさせといて。そうは思うが、今更なので突っ込まない。

「紙袋を用意するカピ。小さいので良いカピよ。それと、壱の部屋を借りるカピ」

「それは良いけど何で?」

 壱は立ち上がると、棚から未使用の紙袋を出す。

「物質移動の魔法はかなりの集中力を要するカピ。それにあまり見られたく無いカピ」

 サユリは言い残すと、空の紙袋を加えて壱の部屋に向かった。

 そして数分後、サユリが戻って来た。加えている紙袋が膨らんでいる。それを壱の前に置いた。

「これで間違い無いカピか?」

 開けて見ると、中には白い粉。匂いをいでみる。

「うん、これだ。ありがとう」

 蔵の中に白い粉は、この麹菌と塩しか無い。サユリなら間違える事は無いと思っていた。

「では早速試作してみるカピか? 我の時間魔法を使うカピ」

「楽しみじゃなぁ。久々に味噌汁が飲めるのかのう。ほう、これが麹菌とやらか」

 茂造がのぞき込んで来る。

出汁だしを何で取るか、考えなきゃだけどな。よし、じゃあ早速!」

 壱は意気込んで立ち上がった。
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