異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

文字の大きさ
44 / 190

#44 朝食で贅沢なお味噌汁を。その2

しおりを挟む
 さて、食べるとしよう。

「口に合うと良いんだけど。いただきます」

「いただくとしようかの」

「いただくカピ」

 まずは味噌汁。器に直接口を付け、すする。途中で味見をしていた壱ですら、その出来栄できばえに眼を見開いた。

「やった、うまい!」

 つい口に出す。鯛の出汁がしっかりと出ていて、臭みはまるで無い。鯛と味噌の旨味がしっかりと感じられる。

 鯛は白身なので、そもそも癖の少ない魚ではある。だがそれを丁寧ていねいに、塩振りに霜降りと下処理をし、そこまでして、この味に辿り着く。

 鯛のあっさりとした、しかしコクのある風味に味噌が合わさって、この味が出る。壱は達成感に眼を閉じた。手間を掛けた甲斐かいがあったと。

 次に鯛団子を口に含む。繋ぎの小麦粉と微塵みじん切りの玉ねぎのお陰か、ふんわりと柔らかく仕上がっている。

 それがまた味噌と合って味わい深い。壱は何度も口を動かした。

 ご飯は有無を言わさず美味しい。最後にフォークを伸ばしたのは卵焼き。うん、加減も悪く無い。卵の味を生かした程良い塩加減だ。

「旨いのう。味噌汁も卵焼きもご飯も旨いのう。嬉しいのう」

 恐らく数年ぶりに和食を口にする茂造が、眼を細めてしみじみと言う。その手は止まらない。

 壱も数日振りの味噌汁を堪能たんのうした。ほっとする味。鯛の出汁なので、家で飲んでいた昆布と鰹出汁の味噌汁よりもずっと贅沢だ。なのに懐かしさを覚える。

「サユリはどうだ? 口に合う?」

 黙々と味噌汁のサラダボウルに顔を突っ込むサユリに聞いてみると、しばし後に顔を上げる。

「うむ、面白いカピな。これは味噌を溶かしただけでは無いのだカピな。昨日きゅうりに付けた味噌だけでは無い味がするカピ」

「正解。鯛の粗で出汁を取ったんだ。塩振って霜降りしてって、実は結構手間が掛かるんだよ。昆布と鰹節かつおぶし、せめて昆布だけでもあれば、もっと楽に作れるんだけどなぁ」

「コンブとは何カピ?」

「海の幸なんだけど、こっちでは食べないのかな。つか生えてるのかな」

「ううむ、儂も海に潜る機会が無かったから、海の底がどうなっているかは判らんのう」

「うーん、俺が潜れたら良いんだろうけども、泳ぎは得意じゃ無くてさぁ」

 壱と茂造が困り顔で腕を組むと、サユリが何気無く言った。

「なら、我が潜るカピ」

 ふたりは驚いてサユリを見る。

「サユリ、そんな事まで出来んの?」

「そもそもカピバラは泳げるカピ。我の場合は魔法で息を長時間保たせられるし、濡れもしないカピよ。銭湯に浸かるのは大好きだカピが、海水はべたべたするから苦手カピ」

「へぇ、凄い」

 素直に感心する。そう言えば、サユリに噛まれた、壱が行き着けていた動物園にも池があって、カピバラがそこで気持ち良さそうに泳いでいた。

かつおブシとやらも、この村でも鰹は上がるカピ」

「そうなの?」

 食堂に仕入れられないので、無いものだと思っていた。

「生で食べるにはやや癖があるからのう。村人からの評判があまり良く無くての、カルパッチョから抜いて他の魚を増やしたんじゃ。今は釣り上がっても海に戻しておる」

「そっかぁ。タタキとか美味しいんだけどな」

「タタキか! それは儂も食いたいのう」

 茂造が顔を輝かせる。

「フライパンででも作れるよ。風味はどうしてもわら焼きとか炭焼きよりは落ちるんだけど。ポン酢が無くても塩で食べたら良いし、薬味やくみに玉ねぎとにんにくがあるから、今度作るよ」

「楽しみじゃ」

 茂造は眼を細める。

「壱に来て貰ってから、いろいろな懐かしいものが食べられて嬉しいのう」

「それはそれで興味深いカピが、まずは鰹ブシ、鰹が上がれば作れるのでは無いカピか?」

「うん。作り方すら見た事が無いんだけど、スマホで調べてみるよ。サユリがいたら出来そうな気がする」

「大概は時間魔法でどうにでもなるカピ」

「では、漁師たちに今度鰹が上がったら、持って来て貰える様に言っておくかのう。何尾るかのう」

「鰹節用とタタキ用で、まずは2尾かな?」

 昆布と鰹節があれば、もっと手軽に味噌汁が作れる。となると、毎朝飲める様になるでは無いか。壱は期待にふくらんだ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...