異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#49 コンシャリド村プチツアー。その5

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 歩いていると、また少し開いた土地が見えて来る。

「壱よ、あそこも田んぼの予定地じゃ。向こうとここ、これだけあれば充分な米が育てられるじゃろ」

「うん。充分だと思う」

 米作りが更に現実味を帯びて来て、壱は嬉しくなる。やはり和食には、味噌汁には欠かせない白いご飯。楽しみだ。

 帰ったらすぐに夜営業の仕込みが始まるだろうから、寝る支度したくを整えたらスマートフォンで田んぼの作り方を調べてみよう。



 さて、次の建物が見えて来た。その横には丸太が積まれている。茂造に続いて壱とサユリも中に入った。

「ほいほい、邪魔するぞい」

「あ、店長、らっしゃい。どうしたよ」

「孫の壱に村を案内しとっての」

「おお、そこの坊主が孫か。よろしくな! ワシはロビンだ」

「よろしくお願いします」

 立ち上がったロビンは、壱より身長の低い茂造よりもずっと小さく、しかし腕やあしはがっちりと太く筋肉質だ。

 この建物内で仕事をする男たちは皆同じ屈強くっきょうな体型だった。ロビンはひげたくわえていて、貫禄かんろくも感じさせる。

「ここでは家具やらを作っておっての。家の修繕しゅうぜんなんかもするんじゃ。木桶も木の食器類なんかもここで作られておるぞ。木に関するものを一手に引き受けとる感じかの」

「こういうのってのは、やっぱワシらドワーフが得意だからな」

「ドワーフ!」

 これもまた、ファンタジー創作物で見聞きした種族だ。

「ハッハッハッ、驚かせたかな! そうだよな、そっちの世界には、ワシらみたいな種族はいないだろうからなぁ。まぁ慣れてくれや」

「あ、はい。エルフもですけど、良い人そうなので大丈夫です」

 快活かいかつに笑うロビンに、壱がややされながら正直に言うと、ロビンはまた面白そうに笑った。

「ハッハッハッハッハッ! 面白い孫じゃな! おうおう、楽しみだな、店長よ」

「ほっほっほっ、そうじゃの」

 茂造も一緒になって笑う。サユリは壱の足元で澄まし顔だ。

「ではまた後での。まだ案内するところが残っとるでの」

「おう。また後でな!」



「さて、次はここじゃ」

 茂造に案内された建物に入ると、また村人が作業にいそしんでいた。紙漉かみすきだ。よくテレビで見る機会があった。

「紙を作っておるの。さっきの木製品工房で出た廃材なんかで作っとるんじゃ」

 成る程、無駄が無い。

「おや店長さん。どうしました?」

 紙をき終わった職人が、手を拭きながら寄って来た。

「手を止めさせて済まんのう。孫の壱を案内しとるんじゃ」

「ああ。フレンチトースト美味しかったよ、イチくん」

「ああ、あの時の」

 ボニーがシェムスに制裁を与えたその時、シェムスと一緒に飲んでいた男連中のうちのひとりだった。

「トーマスです。あらためてよろしく」

「こちらこそよろしくお願いします」

 小さく頭を下げる。

「ここ、面白いもの何も無いけど、良かったら見てってよ」

「あ、俺紙漉き見たいです」

「ははっ、珍しいな。いくらでも見てってよ」

 トーマスが笑いながら持ち場に戻り、壱はそれに付いて言った。

 これまで案内してもらった工房などでも思ったが、こういった職人技を見るのはとても興味深い。面白い。

 畑仕事も面白かった。チーズ工房も見てみたかった。ワイン作りも興味深かったし、陶芸も凄かった。木製品工房も楽しかった。

 トーマスは漉き船すきぶね紙料しりょうすくうと、縦に横にと動かして行く。やがてすだれのようになっていると言う部分に均一の厚みが出来る。それを横の既に出来ている束に重ね、簀から外す。

「これに重石おもしをして水分取って乾かして、紙になるんだ。簡単だろ?」

「いや、紙漉きそのものがかなり難しいって聞いてます」

 壱が漉き終わった束を見ながら感心して言うと、トーマスは可笑しそうに笑う。

「そんな大したもんじゃ無いって。店長さん、やっぱりイチくん良い子ですね」

 壱は恐縮して両手を振ったが、茂造が嬉しそうに言う。

「そうじゃろそうじゃろ。本当に良い子に育ったものじゃ」

 そこまで言われてしまい、壱が恥ずかしげに顔をおおうと、ずっと足元に付いていてくれたサユリが気付わし気に、壱の足に身体をり寄せた。壱はつい屈んでサユリを抱き締めてしまう。

「サユリ~」

「照れる気持ちも解らないでも無いカピが、ここは素直に受け取っておくカピ」

「ほっほっほ、やっぱり良い子じゃのう。じゃあの、トーマス。また後での」

「はい。壱くんもサユリさんも、また後で」

「はい…」

 壱はサユリの身体に顔を埋めたまま外に出た。

「じいちゃ~ん、あんまり持ち上げるの止めてくれよ~」

 壱がようやくサユリを下ろし抗議するも、茂造はどこ吹く風。

「ほっほっほ、まぁまぁ。さて、次に行くかの」

「じいちゃ~ん……」

 壱はまだ照れを抑えられぬまま、茂造を追い掛けた。
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