49 / 190
#49 コンシャリド村プチツアー。その5
しおりを挟む
歩いていると、また少し開いた土地が見えて来る。
「壱よ、あそこも田んぼの予定地じゃ。向こうとここ、これだけあれば充分な米が育てられるじゃろ」
「うん。充分だと思う」
米作りが更に現実味を帯びて来て、壱は嬉しくなる。やはり和食には、味噌汁には欠かせない白いご飯。楽しみだ。
帰ったらすぐに夜営業の仕込みが始まるだろうから、寝る支度を整えたらスマートフォンで田んぼの作り方を調べてみよう。
さて、次の建物が見えて来た。その横には丸太が積まれている。茂造に続いて壱とサユリも中に入った。
「ほいほい、邪魔するぞい」
「あ、店長、らっしゃい。どうしたよ」
「孫の壱に村を案内しとっての」
「おお、そこの坊主が孫か。よろしくな! ワシはロビンだ」
「よろしくお願いします」
立ち上がったロビンは、壱より身長の低い茂造よりもずっと小さく、しかし腕や脚はがっちりと太く筋肉質だ。
この建物内で仕事をする男たちは皆同じ屈強な体型だった。ロビンは髭を蓄えていて、貫禄も感じさせる。
「ここでは家具やらを作っておっての。家の修繕なんかもするんじゃ。木桶も木の食器類なんかもここで作られておるぞ。木に関するものを一手に引き受けとる感じかの」
「こういうのってのは、やっぱワシらドワーフが得意だからな」
「ドワーフ!」
これもまた、ファンタジー創作物で見聞きした種族だ。
「ハッハッハッ、驚かせたかな! そうだよな、そっちの世界には、ワシらみたいな種族はいないだろうからなぁ。まぁ慣れてくれや」
「あ、はい。エルフもですけど、良い人そうなので大丈夫です」
快活に笑うロビンに、壱がやや圧されながら正直に言うと、ロビンはまた面白そうに笑った。
「ハッハッハッハッハッ! 面白い孫じゃな! おうおう、楽しみだな、店長よ」
「ほっほっほっ、そうじゃの」
茂造も一緒になって笑う。サユリは壱の足元で澄まし顔だ。
「ではまた後での。まだ案内するところが残っとるでの」
「おう。また後でな!」
「さて、次はここじゃ」
茂造に案内された建物に入ると、また村人が作業に勤しんでいた。紙漉きだ。よくテレビで見る機会があった。
「紙を作っておるの。さっきの木製品工房で出た廃材なんかで作っとるんじゃ」
成る程、無駄が無い。
「おや店長さん。どうしました?」
紙を漉き終わった職人が、手を拭きながら寄って来た。
「手を止めさせて済まんのう。孫の壱を案内しとるんじゃ」
「ああ。フレンチトースト美味しかったよ、イチくん」
「ああ、あの時の」
ボニーがシェムスに制裁を与えたその時、シェムスと一緒に飲んでいた男連中のうちのひとりだった。
「トーマスです。あらためてよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
小さく頭を下げる。
「ここ、面白いもの何も無いけど、良かったら見てってよ」
「あ、俺紙漉き見たいです」
「ははっ、珍しいな。いくらでも見てってよ」
トーマスが笑いながら持ち場に戻り、壱はそれに付いて言った。
これまで案内してもらった工房などでも思ったが、こういった職人技を見るのはとても興味深い。面白い。
畑仕事も面白かった。チーズ工房も見てみたかった。ワイン作りも興味深かったし、陶芸も凄かった。木製品工房も楽しかった。
トーマスは漉き船で紙料を掬うと、縦に横にと動かして行く。やがて簾のようになっている簀と言う部分に均一の厚みが出来る。それを横の既に出来ている束に重ね、簀から外す。
「これに重石をして水分取って乾かして、紙になるんだ。簡単だろ?」
「いや、紙漉きそのものがかなり難しいって聞いてます」
壱が漉き終わった束を見ながら感心して言うと、トーマスは可笑しそうに笑う。
「そんな大したもんじゃ無いって。店長さん、やっぱりイチくん良い子ですね」
壱は恐縮して両手を振ったが、茂造が嬉しそうに言う。
「そうじゃろそうじゃろ。本当に良い子に育ったものじゃ」
そこまで言われてしまい、壱が恥ずかしげに顔を覆うと、ずっと足元に付いていてくれたサユリが気付わし気に、壱の足に身体を擦り寄せた。壱はつい屈んでサユリを抱き締めてしまう。
「サユリ~」
「照れる気持ちも解らないでも無いカピが、ここは素直に受け取っておくカピ」
「ほっほっほ、やっぱり良い子じゃのう。じゃあの、トーマス。また後での」
「はい。壱くんもサユリさんも、また後で」
「はい…」
壱はサユリの身体に顔を埋めたまま外に出た。
「じいちゃ~ん、あんまり持ち上げるの止めてくれよ~」
壱が漸くサユリを下ろし抗議するも、茂造はどこ吹く風。
「ほっほっほ、まぁまぁ。さて、次に行くかの」
「じいちゃ~ん……」
壱はまだ照れを抑えられぬまま、茂造を追い掛けた。
「壱よ、あそこも田んぼの予定地じゃ。向こうとここ、これだけあれば充分な米が育てられるじゃろ」
「うん。充分だと思う」
米作りが更に現実味を帯びて来て、壱は嬉しくなる。やはり和食には、味噌汁には欠かせない白いご飯。楽しみだ。
帰ったらすぐに夜営業の仕込みが始まるだろうから、寝る支度を整えたらスマートフォンで田んぼの作り方を調べてみよう。
さて、次の建物が見えて来た。その横には丸太が積まれている。茂造に続いて壱とサユリも中に入った。
「ほいほい、邪魔するぞい」
「あ、店長、らっしゃい。どうしたよ」
「孫の壱に村を案内しとっての」
「おお、そこの坊主が孫か。よろしくな! ワシはロビンだ」
「よろしくお願いします」
立ち上がったロビンは、壱より身長の低い茂造よりもずっと小さく、しかし腕や脚はがっちりと太く筋肉質だ。
この建物内で仕事をする男たちは皆同じ屈強な体型だった。ロビンは髭を蓄えていて、貫禄も感じさせる。
「ここでは家具やらを作っておっての。家の修繕なんかもするんじゃ。木桶も木の食器類なんかもここで作られておるぞ。木に関するものを一手に引き受けとる感じかの」
「こういうのってのは、やっぱワシらドワーフが得意だからな」
「ドワーフ!」
これもまた、ファンタジー創作物で見聞きした種族だ。
「ハッハッハッ、驚かせたかな! そうだよな、そっちの世界には、ワシらみたいな種族はいないだろうからなぁ。まぁ慣れてくれや」
「あ、はい。エルフもですけど、良い人そうなので大丈夫です」
快活に笑うロビンに、壱がやや圧されながら正直に言うと、ロビンはまた面白そうに笑った。
「ハッハッハッハッハッ! 面白い孫じゃな! おうおう、楽しみだな、店長よ」
「ほっほっほっ、そうじゃの」
茂造も一緒になって笑う。サユリは壱の足元で澄まし顔だ。
「ではまた後での。まだ案内するところが残っとるでの」
「おう。また後でな!」
「さて、次はここじゃ」
茂造に案内された建物に入ると、また村人が作業に勤しんでいた。紙漉きだ。よくテレビで見る機会があった。
「紙を作っておるの。さっきの木製品工房で出た廃材なんかで作っとるんじゃ」
成る程、無駄が無い。
「おや店長さん。どうしました?」
紙を漉き終わった職人が、手を拭きながら寄って来た。
「手を止めさせて済まんのう。孫の壱を案内しとるんじゃ」
「ああ。フレンチトースト美味しかったよ、イチくん」
「ああ、あの時の」
ボニーがシェムスに制裁を与えたその時、シェムスと一緒に飲んでいた男連中のうちのひとりだった。
「トーマスです。あらためてよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
小さく頭を下げる。
「ここ、面白いもの何も無いけど、良かったら見てってよ」
「あ、俺紙漉き見たいです」
「ははっ、珍しいな。いくらでも見てってよ」
トーマスが笑いながら持ち場に戻り、壱はそれに付いて言った。
これまで案内してもらった工房などでも思ったが、こういった職人技を見るのはとても興味深い。面白い。
畑仕事も面白かった。チーズ工房も見てみたかった。ワイン作りも興味深かったし、陶芸も凄かった。木製品工房も楽しかった。
トーマスは漉き船で紙料を掬うと、縦に横にと動かして行く。やがて簾のようになっている簀と言う部分に均一の厚みが出来る。それを横の既に出来ている束に重ね、簀から外す。
「これに重石をして水分取って乾かして、紙になるんだ。簡単だろ?」
「いや、紙漉きそのものがかなり難しいって聞いてます」
壱が漉き終わった束を見ながら感心して言うと、トーマスは可笑しそうに笑う。
「そんな大したもんじゃ無いって。店長さん、やっぱりイチくん良い子ですね」
壱は恐縮して両手を振ったが、茂造が嬉しそうに言う。
「そうじゃろそうじゃろ。本当に良い子に育ったものじゃ」
そこまで言われてしまい、壱が恥ずかしげに顔を覆うと、ずっと足元に付いていてくれたサユリが気付わし気に、壱の足に身体を擦り寄せた。壱はつい屈んでサユリを抱き締めてしまう。
「サユリ~」
「照れる気持ちも解らないでも無いカピが、ここは素直に受け取っておくカピ」
「ほっほっほ、やっぱり良い子じゃのう。じゃあの、トーマス。また後での」
「はい。壱くんもサユリさんも、また後で」
「はい…」
壱はサユリの身体に顔を埋めたまま外に出た。
「じいちゃ~ん、あんまり持ち上げるの止めてくれよ~」
壱が漸くサユリを下ろし抗議するも、茂造はどこ吹く風。
「ほっほっほ、まぁまぁ。さて、次に行くかの」
「じいちゃ~ん……」
壱はまだ照れを抑えられぬまま、茂造を追い掛けた。
12
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる