異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#53 田んぼの作り方(その1、レンガの材料調達。その1)

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 海老出汁味噌汁のうどんを食べながら、サユリが、あ、と思い出した様に顔を上げる。

「ところで壱、そろそろ田んぼを作ろうかと思うカピ。昨日調べてくれていたカピな」

「うん。これちょっとさ、この村にあるもので作ろうと思ったら、結構人の手を借りなきゃいけないかも。村人の眼があったらサユリの魔法そんなに使えないんだろ?」

「ある程度なら大丈夫だカピ。どうするのだカピ?」

「水れを防がなきゃいけないから、田んぼにする部分を掘って固めるか、4隅を煉瓦れんがとかで囲うかなんだけど」

「ふむ……」

 サユリはやや逡巡しゅんじゅんする。

「で、掘る方法だと、水抜き作るのがちょっと大変かも知れない。煉瓦で池みたいにしたら、一部に穴を開けてせんをするので行けると思うから、後々の事を考えたらその方が良いかも。こっちの世界の田んぼは掘って作ってるのがほとんどだけど、それはちゃんと水路があるから出来てるんだと思う。個人が庭とかで作ってるのを見ると、トタンとかで周りを囲ったりして作ってた」

「成る程カピ。では煉瓦を作るカピ。耐火である必要は無いカピな」

「うん。火は使わないし」

「なら村の外で土を採掘さいくつして、陶芸工房のかまで焼くカピ」

「全部人力じんりき?」

「基本はそうカピな。昼営業と夜営業の間に手が空けられる村人をつのって、馬車を出すカピ」

「馬車、あるんだ」

「街に買い出しに行く時にも使うからのう。牧場の馬に引いて貰うんじゃ」

「あ、あの馬は食用じゃ無いの?」

「齢を取ったら潰して食べるぞい。じゃからたまのご馳走ちそうじゃの」

 馬肉は元の世界でもあまり食べる機会が無かったが、居酒屋でたまに食べる馬刺しや、牛の生食が禁止になってから焼き肉屋などで提供される様になったさくらユッケは壱の好みだった。

 この世界で生食出来るかは判らないが、ジビエが流行って来てもいた。献身的けんしんてきに馬車を引いてくれた馬には合掌がっしょうだが、そのタイミングが楽しみである。

 そこでふと思い出す。この村ではサユリの加護のお陰で、腐敗したもの以外の食中毒は無いと。ならもしかして、牛も馬も生で食べられないだろうか。

 しかし今は田んぼの話だ。これは後で聞くとしよう。今日の夜営業の仕込み時にはかつおも届く予定だし、まずはそちらだ。

「昼営業の時に聞いてみるカピ。茂造は力仕事が難しいカピ。カリルとサントを駆り出すとしても、それでも壱と合わせて3人カピ。苦しいカピ。あと3人は欲しいカピ」

「3人なら大丈夫かと思うがの。聞いてみようかの」

「我が営業中に聞いて回るカピ。畑と、牧場と、そうカピな、酒工房から力自慢がひとりずつ来てくれたら助かるカピ」

 サユリが鼻を鳴らす。壱はその様子に恐る恐る聞いてみる。

「サユリ、まさか魔法で言う事聞かせたりとか、そんなのあるのか……?」

「そんな事しないカピ」

 サユリはしれっと応える。

「村人はみんな良い者たちカピ。こちらの頼みを引き受けてくれるカピよ。畑も牧場も酒工房も従事じゅうじする者が多いからカピ。短時間ひとり抜けても回るカピ」

「そうなんだ」

 壱は胸をで下ろす。しかしサユリは眼を細める。

「だが、ごねたらどうするかは判らないカピ」

 不穏だ! サユリが魔法で人の心まで動かせるのだとしたら、これは一大事である。今までの様に接する事が出来なくなるかも知れない。

 そんな壱の思いを知ったか知らずか、サユリは可笑おかしそうに鼻を鳴らした。

「冗談カピ。我が偉大なる魔法使いであっても、人心掌握じんしんしょうあくは出来ないカピ」

 本当にそうであって欲しい。サユリには裏表無く喋る仔カピバラであってくれと切に願う。

「さて、食べて片付けて、昼営業の仕込みを始めるぞい。後片付けは儂がするからの。壱よ、ありがとうの。うどんも海老出汁の味噌汁も旨かったぞい」

「なら良かった」

 味噌汁を最後の1滴まで飲み、壱たちは席を立つ。茂造が洗い物をしてくれると言うが、やはり壱は手伝う。茂造が洗う食器を拭いて行く。

 そして時間になり厨房に降りると、カリルとサントが出勤して来た。
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