異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#52 手打ちうどんを海老出汁の味噌汁で。その2

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「大変なんだな、この作業」

 壱は呟くと、切り終わった種をほぐし、打ち粉をまぶしておく。

 その頃には鍋に湯が沸いている。壱は時計を見て、小さく頷くと、そこに麺状になった種を入れて、茹でて行く。

 吹きこぼれない様に火加減を調整し、時折混ぜながら茹でて行く。その間に海老出汁の最後の仕上げだ。

 海老出汁の量が少し少なかったので、その分水を足し、火に掛ける。弱火にし、煮詰まらない様に温めて行く。

 そこに味噌を溶く。折角せっかくの海老の味と風味を壊したく無いので、少量から味を見ながら足して行く。

 味が整い、壱が満足気に眼を閉じた頃、小麦の麺も良い感じに茹で上がる。

 手打ちうどんである。サントがパスタを捏ねていた時に卵液を使っていたので、デュラムセモリナなどパスタ用の小麦では無く、普通の小麦なのだと予想した。粉の色も白かったし。

 なので、うどんが作れるのでは無いかと思ったのである。

 茹で上がったうどん予定の麺をザルに上げ、流水で揉み洗いして行く。滑りを取ると同時に絞めて行く。冷たい地下水なので氷は使わない。と言うかこの世界には冷凍庫が無いので、氷は無いのだが。

 そして、壱の目論見もくろみ通り、そのタイミングで茂造が起きて来た。

「おお壱、おはよう。また早く起きておったのかの?」

「おはよう。うん、昨日の海老の殻を使った朝ご飯をな。支度して、サユリ起こして来てくれよ」

「うんうん。また楽しみじゃ。サユリさんは壱の部屋じゃな?」

「うん」

 サユリは壱がこの世界に来てから、毎晩壱の部屋で寝ている。壱も気にならないし、サユリも気持ち良さそうに寝ているので問題は無い。

 茂造が支度をしている間にうどんを仕上げる。念の為に、麺の状態で味を見る。味付けしていないそれを適当に千切ちぎって口に入れる。うん、紛れもなくうどんだ。小麦の風味があり、仄かな塩味。大丈夫だと思ってはいたものの、壱は安堵あんどする。

 洗ったうどんをザルでしっかり水切りし、ボウル状の器に盛る。サユリの分は食べやすい様に細かく切って、サラダボウルに。賄いでもサユリの分のパスタは短く切られていたので、それにならったのだ。そこに海老出汁の味噌汁を掛ける。

 海老出汁の可能性に至った時に、これは是非とも試さねばと思った。だが具に困った。玉ねぎやじゃがいも、人参も考えたが、うどんを作れないかと思ったのだ。

 精米済みの米も残り少ない。節約したかった。うどんなら主食になるので、一石二鳥だ。

 茂造とサユリが、ダイニングに姿を現した。サユリは澄まし顔だが、茂造はその頬が緩んでいる。

「待たせたの。今日も作ってくれてありがとうの。楽しみじゃのう」

「ふむ、また壱たちの世界のご飯カピか。興味深いカピ」

「うん。じいちゃんには懐かしい味じゃないかと思う。サユリはどうかな。口に合うと良いんだけど」

 ダイニングの席に掛けた茂造と、テーブルに上がったサユリの前に、海老出汁の味噌うどんを置く。惜しむらくは箸では無くフォークで食べるというところである。ああ、今度あのドワーフたちに頼んでみようか。

 壱も自分の分を用意して、ダイニングに着く。いただきますと手を合わせ、まずは出汁を飲もうと器に口を付け傾ける。

 途中で味は見ていた。その時に美味しいと確信していた。だが口いっぱい含むと、その旨味が押し寄せて来た。

 海老そのものの甘み、炒めた事により出た香ばしさ、海老味噌のコク、それらを調和する味噌。

 壱は器をテーブルに置くと、拳を作る。つい声を上げてしまいそうになるが、どうにか耐える。

「……じいちゃん、我ながら、俺、とんでも無いものを作っちゃったかも」

 昨日の鯛団子の味噌汁も大変美味しかった。それと遜色の無い出来栄えだと、壱は自画自賛する。

 余す所無く漉し出した海老の出汁の、程良い甘みとコクが旨みを生み、味噌がそれを助けている。

 器から口を離した壱が満足気な息を吐くと、サユリと茂造も頬を緩ませていた。

「これは旨いのう。海老の出汁が濃く出ておる。生で食べるのとは違う香ばしさも旨いのう」

「ふむ。成る程、海老の殻はこうした旨味を生むカピか」

 サユリと茂造の反応に満足しながら、今度はうどんを持ち上げる。これも大丈夫な筈だが。

 つるりと口に含む。うん、喉越しも悪く無い。味もちゃんとうどんである。海老と味噌の出汁が絡んで、ますます美味しい。

 茂造もうどんを啜りながら、口角を上げた。

「またこんなうどんを食べられるなんてのう。嬉しいのう」

 サユリも黙々とサラダボウルに顔を突っ込んでいる。と言う事は、お気に召してくれたと言う事なのだと思う。

 手間は掛かるが、また作ろうと思う。勿論自分もまた食べたいのである。
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