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1章 いらない子、アシェ
8 騎士団長ヴァルド・ノイシュタット
しおりを挟む突然執務室にやって来た少年。
『アシェ・エクリュ』
門番には子供が来たら通す様に伝えていたが。
しかし随分幼いな。着古した衣服に、何度も修繕された様子のある鞄と靴。そして痩せ細った身体。
そんな彼が紋章を自分が盗んだと、偽りの罪を告白しに来たようだが、どうしてそんなことになったのか、詳しく聞いてみる必要がある。しかし……
「もう一度聞くが、本当にお前が盗んだのか?」
「……はい。なので、ぼくを、罰して下さい」
先ほどから何度質問を変えても、ぼくを罰して欲しい。としか言わない。ここに来た経緯をオレは知りたいのだが……。
「何故お前が、ここへ来ることになったのかが知りたいんだが……」
「ば、罰して、くれないと。
ぼくにはもう……、帰る場所が、ないんです」
ようやく違う話が出た。
アシェは、ぼろぼろと大粒の涙をこぼし始める。
「ぼくの、い、命で償います、ので。
許して……下さい。ご、ごめんなさい……」
こんな幼い子がそこまで言うなんて。
どうしてそこまでするのか。
全く、何があったのか。
「……泣くな」
執務机から離れて、タオルを渡してやる。
しかし涙を溜めたまま、受け取らない。
「……ったく」
タオルで軽く顔を拭いてやる。
「あ、うぅ……」
アシェはキョロキョロとオレの様子を伺っている。こちらから話さないと、おそらくこれ以上ここに来た理由は聞けないだろうな。
「アシェ。罰して欲しいと言うが――オレは、お前が盗ってないことを知っている。
……身代わりになれとでも言われたのか?」
「……!ち、違います。本当に、ぼくが……」
小さくため息をつく。
必死に自身を罰しろと訴え続ける。
面倒な訳が山ほどありそうだ。
「……アシェ。よく聞いてくれ。
オレは盗んだ奴が、誰だか知っている。
探知魔法で、分かるんだ」
「……え……」
「そして、お前はずっと怯えているが、盗んだ人物が直接謝罪に来れば……そうだな、一発殴って済まそうと思っていた。それだけだ。
だから身代わりに罰されようなどと、考えなくていい」
「……でも、謝りに、来ないです。
だからぼくを……殺して、終わりにして下さい……」
アシェはぼろぼろと泣き続けている。
「……なにを……」
こんな幼い彼に――身代わりを引き受けた彼に、そこまで言わせるなんて……。
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