その婚約破棄喜んで

空月 若葉

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番外編

王子の愛 聖女の目論見

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~王子の愛~
 広い部屋の中に怒声が響く。
「この馬鹿者」
父上の声だ。父上は穏やかな人なのにこんな時に限ってどうしてこんなに怒るのか。俺は幸せになろうとしているのに。たとえそれが誰かを不幸にする者だったとしても、俺は幸せになろうとしているのに。
 心が沸々と煮立って行く。なぜ父上は俺を睨みつける。なぜ母上は泣いている。
「お前は……お前というやつは、彼女の価値をわかっていないのか」
価値。そんなものない。俺とヒカリの邪魔をする悪者、だろう。
「彼女はこの国を救った張本人だぞ。いや、そうでなくても、お前が愛した女性だったはずだ。それをどうして……」
父上が嘆くように頭を押さえる。愛した、あいした、アイシタ……。確かに愛していた。けれどあいつは段々構ってくれなくなった。……他に好きなやつでもできたと思ったんだ。だけど、何かがおかしくないか。本当に愛していたならどうして構ってくれなかったのか確かめようとしなかったんだ、俺は。いや、それ以前に俺は知っていたはずだ。あいつは、ソフィアはこの国を救うために日々薬の研究を……。あ、れ。俺は一体いつから間違っていた。いったいいつから忘れていたんだ。俺は、ソフィアを、ソフィを……。

~聖女の目論見~
 どうして、どうしてよ。どうしてこうもうまくいかないのよ。
 私は聖女としてゲームの世界に転生した。元々、このゲームが大好きだった私はものすごく喜んだわ。だってあの王子様と結ばれる運命にあるのだもの。
 でも、いざ召喚されてみれば現実は違った。あいつ、あの女は薬の研究なんかやり始めたのよ。それに愛しの王子様はあの女に夢中だった。あの女、もしかしたら私と同じ転生者かも。そう気づくのに大した時間はかからなかった。
 聖女は国の危機を救うために召喚される。けれど聖女自体が何か特別な力を持っているわけではない。神様が聖女の願いを叶えるのだ。
 私は願ってしまった。王子が私のことを愛してくれる未来を。願ってしまった。願ってしまったのだ。
 本当に私の願いは叶ったの。王子様には、ルーカス様には愛された。でも、もう他の人からは愛してもらえない。嘘つきの略奪者としかみてもらえない。ルーカス様からの偽物の愛しかもらえない。……偽物の、愛。
 もういいや。解いてしまおう。こんな魔法、解いてしまおう。神様、ありがとう。もういいよ。王子様、ありがとう。もういいよ。夢を見せてくれてありがとう。もう、いいよ。

さよなら、私の愛しい人。さようなら、私の幸せ。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

このえ
2025.02.02 このえ

国を救った張本人って ( ˊ̱˂˃ˋ̱ )

原因みたいな言い方 (笑

せめて恩人ぐらいにしときなよ〜、王様

解除
みながみはるか
ネタバレ含む
2020.12.22 空月 若葉

感想ありがとうございます。

遅くなりましたが、ルーカス、ヒカリ視点投稿させていただきました。もしよかったら読んでいただけると嬉しいです。

2人とも根っからの悪者、でもよかったのですがこんなのも面白いかな、と。

解除

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