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⑤
しおりを挟む寝床に潜るが空腹で眠れず、モチモチ草をしゃぶりながらまた旅に出ようかと考える。
でもそうしたら違約金も道具の借金も抱えることになって、とてもじゃないが返せるとは思えない。ダンに迷惑もかけたくないし。
「はぁぁ…」
考えれば考えるだけ出るため息。アーネシアに来てまだ何も出来ていない。尻尾を巻いて逃げるみたいで悔しいけど、期待しただけあって何もかもがつらすぎる。俺は間違えたのかな……。
「ふぁあ…」
何度も何度も所持金を数えて変な声がでた。もしアーネシアでやっていけないにしても、薬師の稼ぎだけでは心許ない。せめてなにか副業をするべきだろうか……。
ある町の飲み屋でダンと晩飯を食べているときに見かけた男娼は、ダンに素っ気なくされたあと俺を見て「うちで働けばそんな布切れじゃなくていい服が着れるよ」と笑いかけてきた。キレイな男だったので(こんなレベルの高い男娼がいるんだなぁ)と考えてるうちにダンに追い払われて、ケラケラ笑いながら「考えといて」と他の客に声をかけに行った。
中身がオッサンの俺は何も気にせずそのまま食事を済ませたが、ダンは気まずそうにしてた気もする。
飲み屋を出るときにダンはその男娼に何か握らせていたが、たぶん虫下しと軟膏だと思う。軟膏は天然の成分しか入ってないから安心して尻にでもなんでも塗ればいい。
そのあと宿の近くまで追っかけてきた男娼にえらく感謝され「金なんかいらないから」と胸にスリスリされるダン。
おっ、いいじゃん!と見上げると困り顔で俺を見ていたので、親指を突き出し頷いてやった。
子供と二人旅なんて溜まる一方だろう。ここは空気を読むぜ!とニヤニヤしながらその男娼を引っ付かせたままのダンと三人で宿に戻る。宿屋の主人や他の薬師にもニヤニヤされながら、俺は顔見知りの南の薬師の部屋に泊めて貰えることになった。
ダンは普段見えないが髭面の味のある男だ。飯を食く時は壁際に座るし、ささっと食べてさっと隠すもんだから知人の薬師以外で素顔を見たことのある人間は少ない。
こりゃあの男娼も今ごろ顔布を取ったダンを見て胸を高鳴らせてるだろうな。ぐふふ、と笑いながら眠ったのが懐かしい。
翌日うるうると腕に抱きつき「コブ付きでもいい」とダンに惚れ込んだ男娼に頭を抱える様を見てみんなで笑った。
なんでも、治療を兼ねて薬をそこかしこに塗り込まれたのが堪らなく嬉しくて気持ちよかっただの、脱いだらスゴいだのかたくて大きいだのべた褒めだ。
周りの薬師がサッと俺の耳を塞いだが、バッチリ聞いたぜ!
男として夜が強いのはいいことじゃないか、と亜鉛のとれる野菜をダンの皿に分けてやった。イヤな目付きで見られたが、バチリとウインクして返す。
泣く泣く俺たち(というかダン)を見送る男娼の姿を思い出し、俺も金がなかったらその手もあるのかなぁと投げやりに考えた。
俺は美人だし、股の間は特殊。性病が怖いけど俺は薬師だしどうにかそこら辺は処置できる。男娼なら半年せず借金を返せるかな?この世界の夜の相場を知らない。おっさん相手は嫌だけど、物珍しさに高値で買ってもらえないだろうか。そのままパトロンとか……いや、こうなったら玉の輿を……。
ムシャクシャして、そんな勇気もないくせに漠然と現実逃避する俺。
ダンやソーンに貰った物は盗られたし、金もなけりゃ言葉も片言で知人もいない。
もう明日、だれも来なかったらここを出よう。家賃と道具の借金は頑張って返す。情けないし、恥ずかしいけどダンのところに戻って全部話そう。ダメだったんだって。
そして翌日、
──カラコロカン…
運命の鐘が鳴った。
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