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④
しおりを挟むまさか自分が……。
気を付けていたつもりだし、どの世界にも犯罪があるのは当たり前のことだとわかっていたのに、自覚が足りなかった。
「ない……ないっ…!」
ダンから譲り受けた擂り鉢、貯めた小遣いで買ったガラス棒、ソーンがくれた可愛い陶器のカップ。ずっと大切にしていた道具が見当たらない。
ひゅう、と割れた窓から入ってきた風で意識を取り戻し役所へ走る。すぐに町の自警団と、そこに居合わせた王都から派遣されていた役人も来てくれた。
「どうした?」
「あれだよ、泥棒が出やがったんだ」
「隣町に出たって奴らだろうよ」
「かわいそうになぁ」
なんだなんだと町の人たちが見ている。泥棒が入ったと知った近所のおじいちゃんが俺を不憫に思い、色々な種類の酒瓶を割って合間を継いだものを綺麗に窓に嵌め込んでくれた。
「おまえさん越して来たばかりだろ。目ぇつけられたんだねぇ……」
親切に近付いてきて家の場所を特定し、金目のものがないか探る泥棒はどこにでもいるらしい。しかもそれは一般的な手口なのだと聞いて肩ががっくり落ちる。
俺の中身はもう四十過ぎてるっていうのに、なにをやってんだか……。
すぐ王都へ連絡が行き、薬師に必要な道具が支給された。他にも壊された家の修繕と生活費も貸してもらえるというので悩んでいたが『返済は生活ができるようになってからでいい』と聞いて借用書にサインをする。しかも無利子なのだ。本当に頭が上がらない。
「命があるだけよかったですよ、鉢合わせていたらと思うと怖いですし」
役人に慰められぺこぺこと道具を抱えて戻る。店に入った途端、涙が溢れて止まらなかった。
「ごめん、ごめんよダン!ソーン!」
なりふり構わず泣き叫ぶ。
「俺バカだからさ、ぜんぶとられちゃった……!」
その日は何も手に付かず、枕元に置いてあり難を逃れたダンから貰った手書きの本を抱き締め眠った。
翌朝。
というよりまだ暗いうちにむくりと起き上がり、無心で薬草を挽いく。手に馴染まない新品で、前のよりいい道具。それが悲しかった。
あの泥棒たちが、干している薬草には見向きもしなかったのは救いだ。気落ちして店を開ける状態じゃないのでせっせと先に薬を作り置きする。ふたりに運んで貰ったあの机と椅子は見ると切なくなるが、己への戒めとして置いておく。物は悪くないのだから。
「これでよし……」
ダンの本、織った布、道具を毎晩確認して全て寝床の下に仕舞い込むようになった。
──────····
「……お客さんこない」
開店して三日。草まみれの薬屋に、客足はない。
「外でるの怖いなぁ」
一応『開店中』の札をさげているが、草まみれの外装では誰も近寄らず、開店してるのもわからないのかもしれない。せめて宣伝を、と思ったが出鼻を挫かれて心が折れかけている。町に出るのが怖い。親切な人も疑ってしまう。山ではならなかったのに、俺はここにきてホームシックになってしまった。
ダンとソーンの間でゆっくり寝たい。赤ちゃんみたいだって笑われてもいい。頭を叩かれたって、何時間も冷たい水草を採らされたっていい。
あの村でダンに部屋を与えられて嬉しかった。
『なにがいいんだか』と呆れられながら憧れのハンモックも取り付けてもらい、クッションを持ち込んでブラブラと揺らして眠った。
ぶらぶらゆらゆら。抱っこされているみたいだ。
だが、しばらくすると腰を痛めた。沈み込みすぎて体勢がよくなかったらしく、若いのに腰痛持ちだ。ダンに怒られてベッドで寝るよう言い付けられ、ハンモックは昼寝のときだけの贅沢品になった。
ダンとふたり、騒がしくも楽しい日々。この世界に生まれてからはじめての定住だけど、やっぱり帰る家があるのはいいもんだ。
そして村での生活に慣れだした頃。
まだ完成しない布をだむだむ叩いて干したあと、疲れて寝入ってしまったことがある。ふと目覚めるともう夜も深く、虫の声が聞こえるほど静まり返っていた。夜は少し冷えるはずなのにあたたかい。目を凝らすと、棒を抱いて寝る俺にダンが編んだブランケットが掛かっていた。ふくふくと幸福を感じる。
「……っ!」
しばらくウトウトゆらゆらしていると、足が滑り落ちて引っくり返りそうになった。慌ててバランスをとったが、尻がハンモックに乗っていても爪先が床に着いたことに衝撃を受ける。最初の頃は乗るのも大変だったのに、俺は背が伸びたんだなぁ。
冷や汗を拭って、ゆっくり降りようとした。
「…ぁ」
両足が左右に落ちて股に食い込んだハンモック。ぎゅうぎゅうと容赦なく荒い網目に刺激される。俺がしきりに欲しがったハンモック。でもこんな田舎には売ってなくて、ダンがせっせと夜に織ってくれた物だ。
それをこんな風に使うなんてダメだって思いつつ、止まれない。
「ぁ、…ぁ…」
ぎっぎっぎ、無意識に腰を押し付けて、今まで知らんぷりしていたそこの快感に頭を真っ白にした。俺はまだ自分が小さな子供だと自覚していたので、オナニーなんて考えたことがなかった。俺が男のとき初めてしたのはいつだったかな?とぼんやり思い出しながらも、腰は止まらない。
もどかしくて前の柱に抱きつき、細くなったハンモックにずりずり股を擦り付ける。女の子のクリの快感に小さくあんあん声が出て、恥ずかしいのに気持ちよさが勝る。ちょうどいい場所を探しながら腰をくねらせ、未発達なそこを皮の上からくりゅくりゅ捏ね回す。
爪先立ちしてイきやすくなってるのか、俺にエロに関する知識があるからなのか知らないが、初めてのそれはすぐに来た。
「っ…ぁ、♡ぁ…♡」
ビビビッとクリに電流が走ってがくがくする。すごい音を鳴らす心臓。熱い息を吐いて余韻に酔いながら「すごい~!」と女の子の下半身にワクワクしてしまう。
初めて転生した自分の人生をエンジョイした瞬間だった。
ハンモックを食い込ませてのオナニーにハマりすぎて、体重を掛ける繋ぎ目の金具が壊れ転倒したのもいい思い出だ。危ないだろってダンにすごく怒られたし、なんか『察してるぞ』って微妙な顔されて恥ずかしくて死にそうだった。
普段は男ふたりの生活をしてるけど俺は性的には女。扱いにくかったに違いない。いま思うと申し訳ない気分になる。
ていうか俺の声大きかったのかな。聞かれてた……?
ハンモックを破壊してから、俺の相棒はあの布を叩く棒になった。またもやダンの手製の道具だが、許せ!
太さが俺の腕くらいのちょっと楕円の形をした棒を寝床に潜って股の間に食い込ませたり、楕円の細くなってる場所を上にし腹で潰して固定し、突起とスジに当てるように跨がり擦り付けるのに忙しい。
クリが揉みくちゃにされたり、ただ食い込むだけで気持ちんだからなぁ。バカにもなる。
童貞じゃなかったし遊び呆けていた昔の俺の記憶があるので、まんこに指を挿入してみようかなとチャレンジしたこともあった。だけど何でだか自分の身に起きるとなると怖い。体内に異物を挿入されるなんて怖すぎないか?なんて挿入してた側が言っていいのやら。
それもあって俺はもっぱらクリオナで満足していた。股に挟んだり指で触ったりと何だかんだ毎日一回はしてたかもしれない。やっぱり一番気持ち良いのはハンモックだった。元ハンモックの布をベッドに引きずり込み、股に挟んでうつ伏せの状態になって後ろ手でぎゅうぎゅう引っ張る。クリからスジ、そしてアナルまで擦れて最高だった。角オナ床オナみたいなもんかな?射精っていうフィニッシュがないので永遠にできる。癖になるからヤバいって分かっていてもやめられなかった。
それにソーンが来てからは二人のいちゃいちゃ声がするのが丸聞こえで恥ずかしすぎて、ダンに無言で渡された綿を耳に詰めて寝ていたのが懐かしい。いやまてよ、ダンとソーンのラブラブいちゃいちゃが聞こえてたなら、俺のオナニー中のあんあんも聞こえてたに決まってる。死ぬ!
「ううっ……!」
数年越しに気付いて悶える。
あれ?おかしいな……。ホームシックになって昔を恋しんでいたのに、気づいたらエロ方面の記憶ばっかりだ。親不孝者め。
夕暮れになり、今日も誰も来なかったなぁと肩を落とす。軟膏がダメになるのは勿体ないので、窓を嵌めてくれた近所のおじいちゃんの家に恐る恐る突撃してみた。
コンコンとドアを控えめにノックするが誰も出てこない。誰か居る気配はあるのに。どうしよう……とうろうろしていたら庭にいたおばあちゃんに気付いてもらえた。
「まど、ありがとうございます。伝えて。おねがいします。これ、お礼」
あのときのお礼を片言で述べ、軟膏を渡してぴゅーっと帰宅。前まではこれ程じゃなかったのにコミュ障すぎる。
ううっ俺は元々接客業に向かないんだ!
煮た薬草をろ過した液体を、ぐぅぐぅ腹がなるのを無視して混ぜる。食べられる花や山芋を採ってきたり、コーヒーに似た豆を挽いて飲みつつ空腹を紛らわしていたが、流石に辛い。
歩き回っていた時は物々交換や、治療の礼に食べ物を貰うことが多くて食べることに困らなかったし、ダンと居たときなんか狩ってきた兎や鳥の肉を食べさせてもらっていた。どれだけ世話焼いてもらっていたのかを実感して、寂しくて情けなくて何をしていても涙がぽろぽろこぼれる。
日本にいたときも、アーネシアに住む前までも俺はひもじい思いなんてしたことがなかったんだ。残業だらけで帰れない日もあったけど仕事もまぁそれなりに頑張ってやってた。だから一人立ちくらい何とかなるって思ってた。
俺はここまできてもまだ夢の中の気分だったんだなぁ。嫌になる。現実は辛い。
「はぁ……おなかへった…」
薬草を煎じる時の臭いはキツいので、挽いた豆を葉にくるんであちこち臭い消しとして置く。
内装を整えても客が来ないなら意味もないけど……。
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