チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

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第9話 追放勇者、ケジメを付ける【その3】

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 クリエの持つ力のひとつ──勇者探索サーチ。どこにいようとも、七勇者の居場所を突き止めることができる。
 この力もあってか、彼女は『勇者専属記者』としてスクープを連発していた。
 ……勇者側としては、プライベートな内容も扱われかねないので、たまったものでは無い。

「北の……大地、ここは……え、うそ……」
 クリエは目を瞑り、顔を伏せ 、ボッサの現在地を探索していた。どうやら彼を見つけたようだが、なんとも煮え切らない表情を浮かべた。
「アイサック様、場所は判りましたが……」
「サック、って呼んでくれ。アイサックはもう死んだ」
「は? ……はあ、わかりました。──サック、ボッサ様の場所ですが、なんというか……」
「滅ぼされた、極寒の街『イリサーヴァ』か」
 クリエの戸惑った顔をみて、なんとなくサックは感づき、彼が脳裏に浮かんだ場所を口に出してみた。すると、クリエの困惑した顔は、一瞬のうちに驚きの顔に変わった。

「な、なんでわかったんですか!?」
「なんとなく、勘だよ」
 サックには僅かに、彼がそこに行く心当たりがあった。

「すぐに出るぞ」
「はぁ?! なに考えてるんですかっ!」
「決まってるだろ、あいつをぶん殴りにいく」
「いえ、そうではなく!」

 極寒の街、イリサーヴァ。
 魔王直属の配下、三鬼神によって滅ぼされた街である。勇者と人類への見せしめとして、その街は一夜にして地図から消えた。

「ボッサ様は今、普通じゃありません! 出向くにも、こちらも準備が!」
「んなもん、既に済ませた。時間が惜しい」
 サックは、クリエの焦りをものともせず、あっけらかんと答えた。体はボロボロで、右手の包帯も痛々しい。そんな彼が『既に準備は終えた』と言い放った。
 素人が見ても、彼の自暴自棄……強がりにしか思えない。

「待ってください! まだ私、アリンショア様の件でお伝えしていないことがあるんです!」
 そういいながら、クリエは右手を差し出した。指の骨は折れており、添え木で固定されていた。
「この手は、アリンショア様と対峙したときに受けた傷です。アリンショア様は、生きてます。ボッサ様と行動を共にしておりました」
 興奮気味に、クリエが説明をした。死んでいると思っていた人物が目の前に現れた驚きは、未だに忘れられない、といった所か。
 しかしその調子とは裏腹に、サックは特に驚きの表情は見せず、さも判っていたといった面持ちで返答した。

「そか。そりゃ大変だ」

 この返しに、クリエは驚きというより理解できないといった表情を示した。
「わ、私の言っている意味、理解してます!?」
「ああ、分かるよ。だったら尚更なおさら早く、ボッサに会いに行かないとな」
 やはり、サックの表情は揺るがない。なんとなく飄々としているように見えるが、しかし、眼力は死んでいない。目から強い決意を感じられた。

「それに! ここからイリサーヴァまで、早馬でも丸一日はかかります!」
「それは大丈夫、名案がある」
「それって……」
「ヨロシクな、新聞屋。追加で一人くらいなら行けるだろ?」
 サックはクリエの前まで歩いていき、彼女の肩をポンっと叩いた。

 クリエの特殊能力『女神のつばさ』だ。望む場所へ瞬時に移動できるスキル。
「ばっ……試したことないです!」
「なら、何事も挑戦だ」
 今の今まで単独で行動していた彼女は、誰かと同伴してスキルを使用したことは無い。クリエの回答を待たずに、サックはクリエの移動スキルめがみのつばさを当てにしていた。
 緊急事態ではあるが、こんな神経が図太いサックを見るのは初めてだ。想い人を失うことが、彼を大きく変えてしまったのだろう。彼の変貌ぶりに、クリエは軽く恐怖すら覚えた。

「……あーんもう! じゃあ、女の子! ヒマワリちゃんをどうするの!」
「……」
 クリエがヒマワリの名前を出すと、今度はサックは怪訝な顔をした。眉間にしわが寄り、口は真一文字に結ばれた。
 先ほどからの威勢は、一気に衰えた。

 すると、遺体安置所の入り口から男性の声がした。
「医者の見立てでは、衰弱してはいるものの、峠は越えた。命に別状はないとのことだ」
 声の主はジャクレイだった。彼の後ろにはナツカも一緒についてきていた。

 ヒマワリは、サックが抱きかかえてきた時には意識は無く、呼吸も弱弱しかった。体温は限界まで下がり、非常に危険な状態と思われた。しかし、サックと一緒に担ぎ込まれたこの病院で懸命な治療が施されたことで、ヒマワリは一命を取り留めた。未だ、意識は回復していないが、昨晩に比べて呼吸は安定したとのことだ。

「そか、腕のいい医者がいてよかっ──」
「おまえさん、何か仕込んだな?」
 サックの安堵の言葉を、ジャクレイが遮った。ジャクレイも多くの人間の『生死の境』を見てきている。正直な感想を言えば、ヒマワリは助からないと思っていたのだ。

「あの衰弱っぷりは、生きる気力を失った人間特有のものだ。そうなると、もう、こっちに戻ってくることは難しい」
 まして、ヒマワリには男性恐怖症というトラウマが根深く植え付けられていた。身も心もボロボロな状態では、そのトラウマに触れられてしまう事が致命傷になる懸念がある。

 ジャクレイが抱く心配が杞憂で終わってくれれば。そう、ジャクレイは願っていたが、サックの回答は明確なものではなかった。
「もう、彼女のトラウマは取りさらった。あとは、ヒマワリの心持ち次第だ」
 あれほど治療が難しいと自身で語っていた心的外傷トラウマを、『もう取りさらった』とサックは言い放った。

 しかしジャクレイは、彼の言動に隠されたを察した。
 別の懸念事項が、ジャクレイの心の底から湧いてきた。

「あのに……何をした!」
 ジャクレイがサックに掴みかかった。サックの服の襟を掴み、右手一本でサックを壁に押し付けた。サックの体は、ジャクレイが思うより軽く、掴んだ本人のほうが驚いた。
「……」
 強く壁に背中を打ち付けたサック。
 あまりに突然の行動に、クリエとナツカは息を飲んで見守るしかできなかった。

 ジャクレイは、何に怒っていたのだろう。いまにもサックの顔を殴り掛かりそうな雰囲気だった。
 そして、ジャクレイ自体も、何に怒りを向けたのか理解できなかった。しかし、ベテラン憲兵の経験、本能から、サックが『取り返しのつかないこと』をしたのではと思い至って、体が勝手に動いてしまったのだ。

 そして、そのジャクレイの考えはあながち間違いではなかった。

「……ヒマワリの記憶を──消した」
 右ひじがサックの首を押さえている。ジャクレイは力を加減しており、動くことは制限されていたが、呼吸は問題なかった。
「消したのは、トラウマ部分か」
「いや……彼女の記憶を消した」
「なん……だと……」

 ジャクレイが、その重大さに気付くまで少し時間がかかった。
 サックは薬効の力を潜在開放ウェイクアップし、ヒマワリの持つ記憶を『10年分』消し飛ばした。
 彼女の年齢は10歳。つまり今、彼女の頭の中は0歳児と同じ状態だ。

「そうしないと、死んでいたよ。家族を奪われ、貞操を汚され、『生きる力』は心的外傷トラウマで潰されかけていた。体よりも、『心』が、持たなかった」

 ヒマワリの命の灯が消えかかっている最中で、生きる力を呼び戻すには、弊害となる全ての記憶を潰す──。あの時、サックが行えた唯一の策だった。

「……」
 ジャクレイは、信じられないといった表情のまま、ゆっくりと右手を下げた。
 ジャクレイから解放されたサックは、左手で首部分を摩った。力加減はしてもらっていたが、多少なりとも首が締まっていたのには変わりない。

「ヒマワリを、頼みたい」
 サックは、ジャクレイに頭を下げた。
 ジャクレイなら、近郊でそういった、身寄りのない子供を預けられる施設を知っているはずだ。口利きもしてくれるだろう。と、サックは考えていた。
 しかし、ジャクレイから出た言葉はサックにとって意外なものだった。

「やだね。てめーが仕出かしたことだろ。自分のケジメは自分で付けろ」
 おそらく、初めての明確な拒絶だったと思う。
 勇者現役時代では、衛兵総隊長として勇者へのサポートを全身全霊で勤め上げ、そしてサックとは親友としても長い付き合いだった。だからこそ、彼は拒否した。

 予想外の返事に、サックはまるで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
 その顔が面白かった……という訳ではないが、ジャクレイは先ほどとは打って変わって、笑いながらサックの肩をたたいた。
「あのさ、サックよ。ハクノ地区このあたりでいいなら、借家を工面してやるぜ。んで、右手がなくても出来る仕事を紹介してやる。なんなら、うちの家内たちも応援に出させる。家事が難しいなら、女中メイドを雇え。資金なら、元勇者が声を上げれば国が補助してくれんだろ」

 ジャクレイは一気にまくし立てた。サックはただただ、彼の言葉を浴びることしかできなかった。
(彼は……ジャクレイは、何を言いたいんだ?)
 サックには理解をするのに時間がかかったが、ジャクレイの熱弁を真正面から受け止めることで、やっと理解ができた。

「……オレに、ヒマワリの面倒をみろ、と」
「ああ。責任逃れは、このジャクレイが許さねぇ」
 ジャクレイの顔が一瞬険しくなる。

「生きて、帰ってこいって、ことか」
「分かってんじゃねえか」
 しかしすぐに、ニヤリ、とジャクレイはニヒルな笑みを向けた。

「おめー、死ぬ気だっただろ。サザンカの復讐果たして、そのまま全部の責任を放り投げてよ」
 サックは言い返せなかった。正に、その腹積もりだったからだ。
 だが、ヒマワリの存在がそれを許さなかった。サザンカが最期に残した希望だ。

「死ぬな。戻れ。そして、サザンカが成せなかった未来を、ヒマワリに繋げ。サポートはする。だから……」

 ドンッ。
 強く、サックの胸に拳が突きつけられた。強く握られたジャクレイの拳は、小刻みに震えていた。

「だから、絶対に戻ってこい」


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