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第5章 砂漠の国の錬金術師
14. 塔
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なにが起こったのか、わからなかった。
ニケが手を叩くと扉が開き、衛兵が二人部屋に入ってきて、杖を取られた。
衛兵はその杖をニケに渡した。
「ニケ――…」
「ごめんね、ノア」
俺は呆然として、ニケを見た。眉はきつくしかめられ、今まで見たことがないほどつらそうに見えた。
衛兵たちによって頭に袋のような布を被せられた。視界は閉ざされ、かすかな光しか感じる事ができなくなった。
わけのわからないまま、衛兵に両脇を固められ、腕を引かれて歩かされる。
どこまで続くのかというほどの螺旋階段を登らされた。これは夢で階段は永遠に続くのではと思い始めたとき、階段上の扉の小窓から漏れる明かりが見えた。
衛兵たちが明かりの漏れる扉の鍵を開け、俺を部屋の中へ放り込むと、すぐに扉を閉めた。
ガシャン――再び鍵がかけられる音を聞いた。
「「ノア!」」
エトワールとジンの声を聞いて、安堵に胸を撫でおろした。
被せられた布を取り外されると、懐かしいふたりの心配そうな顔が目の前にあった。
「ノア……っ!ケガはない?」
「ああっ、あなたが無事でよかった、ノア。毎日どれほど気がかりだったか……なにか酷いことをされているのではないのかと……」
息を切らせながらふたりに尋ねた。
「ふたり…とも…どうして……」
「ニケから聞いていますか?ベルムデウス帝国がザハブルハーム王国に宣戦布告したことを……近いうちに、戦争が始まるそうです」
なんだって……
戦争――…それは、いつもどこか遠くで起こっていて、身近にあるものではなかった。今日までは……
「ひと月前、私たちは市街地で町の人たちからその噂を聞きました。すぐにノアに知らせようと宮殿に戻ったところ、衛兵たちに捕えられ、この塔に囚われたのです」
ニケはあのとき――
『エトワールは故郷のエルフの里に、ジンは人間の姿じゃなくても魔法が使えるようする方法がないか、ホルデウム様に聞きに帰るって言ってたかな……ノアがあんまり集中してたから、声をかけられなかったみたい』
全部、うそだった……
俺は腕に嵌められた腕輪を見つめた。魔力を封じる効果が付与されていて、外せない。無理に外そうとすれば、手を失ってしまうかもしれない。
エトワールとジンにも、同じものが嵌められていた。
「ふたりとも…ごめん。俺がニケを信用したばっかりに、こんなことに……」
「ノアのせいじゃないよ。俺たちみんな、ニケにはめられたんだ」
「ニケはどうしてこんなことを……」
「ノアは帝国の皇子です。ザハブルハーム王国が戦争に負けたとき、切り札として交渉を有利に進める駒とするためでしょう」
かあさまを守るためなら、どんなことだってする。
ニケの強い意志を宿した言葉が頭の奥に、いつまでも残っていた……
第5章・完
ニケが手を叩くと扉が開き、衛兵が二人部屋に入ってきて、杖を取られた。
衛兵はその杖をニケに渡した。
「ニケ――…」
「ごめんね、ノア」
俺は呆然として、ニケを見た。眉はきつくしかめられ、今まで見たことがないほどつらそうに見えた。
衛兵たちによって頭に袋のような布を被せられた。視界は閉ざされ、かすかな光しか感じる事ができなくなった。
わけのわからないまま、衛兵に両脇を固められ、腕を引かれて歩かされる。
どこまで続くのかというほどの螺旋階段を登らされた。これは夢で階段は永遠に続くのではと思い始めたとき、階段上の扉の小窓から漏れる明かりが見えた。
衛兵たちが明かりの漏れる扉の鍵を開け、俺を部屋の中へ放り込むと、すぐに扉を閉めた。
ガシャン――再び鍵がかけられる音を聞いた。
「「ノア!」」
エトワールとジンの声を聞いて、安堵に胸を撫でおろした。
被せられた布を取り外されると、懐かしいふたりの心配そうな顔が目の前にあった。
「ノア……っ!ケガはない?」
「ああっ、あなたが無事でよかった、ノア。毎日どれほど気がかりだったか……なにか酷いことをされているのではないのかと……」
息を切らせながらふたりに尋ねた。
「ふたり…とも…どうして……」
「ニケから聞いていますか?ベルムデウス帝国がザハブルハーム王国に宣戦布告したことを……近いうちに、戦争が始まるそうです」
なんだって……
戦争――…それは、いつもどこか遠くで起こっていて、身近にあるものではなかった。今日までは……
「ひと月前、私たちは市街地で町の人たちからその噂を聞きました。すぐにノアに知らせようと宮殿に戻ったところ、衛兵たちに捕えられ、この塔に囚われたのです」
ニケはあのとき――
『エトワールは故郷のエルフの里に、ジンは人間の姿じゃなくても魔法が使えるようする方法がないか、ホルデウム様に聞きに帰るって言ってたかな……ノアがあんまり集中してたから、声をかけられなかったみたい』
全部、うそだった……
俺は腕に嵌められた腕輪を見つめた。魔力を封じる効果が付与されていて、外せない。無理に外そうとすれば、手を失ってしまうかもしれない。
エトワールとジンにも、同じものが嵌められていた。
「ふたりとも…ごめん。俺がニケを信用したばっかりに、こんなことに……」
「ノアのせいじゃないよ。俺たちみんな、ニケにはめられたんだ」
「ニケはどうしてこんなことを……」
「ノアは帝国の皇子です。ザハブルハーム王国が戦争に負けたとき、切り札として交渉を有利に進める駒とするためでしょう」
かあさまを守るためなら、どんなことだってする。
ニケの強い意志を宿した言葉が頭の奥に、いつまでも残っていた……
第5章・完
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