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第6章 あなたは私の宝物
1. 虜囚
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季節は夏の盛りを過ぎた頃とは言え、残暑の厳しい暑さが続いていた。けれども、塔の中は魔法で空調が整えられているため、不快な暑さを感じるということはなかった。
俺、エトワール、ジンの三人は、ザハブルハーム王国の王都の王宮にある塔の上に幽閉されていた。
塔の上の部屋には十二畳くらいの居間と、同じくらい広さのベッドルームがあった。キッチンや暖炉など、火を使う設備はさすがになかったが、バスタブ付きの風呂やトイレも完備されていて、魔法で温度管理された温かいお湯を使うことができた。
だが当然魔力は封じられているため、世間から隔離された場所にいてできることは限られていた。することと言えば、本を読むことと、共に囚われているエトワールとジンと話すくらい――常に不安と退屈だった。
修行をしたりクラフトしたり……やりたいことはあるのにできないのってツラいな……
魔力を封じる金の腕輪は二週間前、ニケによって右腕に嵌められたときと同じ状態で、そこにあった。
そういえば、初めてブラウフォンスに来たくらいの頃、ウィルに言われたのになあ……
『ノアは自分の立場がわかってない。君はこの国の皇子なんだから……どこに敵が潜んでいるのかわからない。どんなに警戒してもしすぎるってことはない』
ウィルの言っていた通りになってしまった……
ウィルは今頃、どうしてるのかな……心配……してるよね。それか、帝都の冒険者ギルドで、冒険者としての腕を磨くのに夢中で、気づいてない?
それにしても――
「戦況はどうなっているんだろう……」
塔の小さな窓から地上を見下ろす。王宮の敷地や城下町はこの一か月間、ニケに教わりながらクラフターとして励んでいた頃と変わらないように見えて、前より活気がなくなってしまったようにも思えた。
「王都は静かなものですから、どうにも判断できかねますね」
「でもさー…あの恐ろしい皇帝陛下が負けちゃうなんて、全然想像できなくない?」
「うん……」
ジンの言うようにベルムデウス帝国の優位な戦況が続いたとき、この塔に囚われた俺たちはどうなってしまうのだろうか……
不安はつきることはなかったが、やがて日は沈み、宵闇が辺りを包んだ。
夕食を終えて風呂に入れば、もう特にすることもないので、早々と床に就くことにした。
これといってすることのない塔の上で、俺にはひとつ、楽しみがあった。それは眠りについてから訪れる。
その世界はいつも穏やかな夜だった。
寄せては引く波の音。明るい月に照らされた海面がきらきらと輝いている。
海を見渡すテラスで、その人は海を見つめていた。
金色のまっすぐな長い髪は月の光を反射して青白い光を放っている。
「こんばんは、王妃殿下」
「こんばんは、ノア」
振り返ったその人は、ニケの母親でザハブルハーム王国国王の四番目の王妃、イリス殿下だった。
俺、エトワール、ジンの三人は、ザハブルハーム王国の王都の王宮にある塔の上に幽閉されていた。
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ウィルは今頃、どうしてるのかな……心配……してるよね。それか、帝都の冒険者ギルドで、冒険者としての腕を磨くのに夢中で、気づいてない?
それにしても――
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塔の小さな窓から地上を見下ろす。王宮の敷地や城下町はこの一か月間、ニケに教わりながらクラフターとして励んでいた頃と変わらないように見えて、前より活気がなくなってしまったようにも思えた。
「王都は静かなものですから、どうにも判断できかねますね」
「でもさー…あの恐ろしい皇帝陛下が負けちゃうなんて、全然想像できなくない?」
「うん……」
ジンの言うようにベルムデウス帝国の優位な戦況が続いたとき、この塔に囚われた俺たちはどうなってしまうのだろうか……
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これといってすることのない塔の上で、俺にはひとつ、楽しみがあった。それは眠りについてから訪れる。
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