某国の皇子、冒険者となる

くー

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第6章 あなたは私の宝物

12. 処刑

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「あああああああああああああああああ!!」
絶叫が、宮殿内に響いた。

「ニケの声だ!」
「ええ!あちらからです!」

その部屋は数週間前、塔に閉じ込められる前にニケに初めて案内された場所――イリスが眠る部屋だった。十数名の帝国兵ごしに、部屋の奥でうずくまっている人物が見える。

「ニケ…!?」

「ル、ルクス皇子!?」

兵たちが俺に目をとめ、口々に驚きの声を漏らしている。

「囚われていたのでは……本物なのか!?」
「ともあれ、すぐに陛下に報告を!」

ニケに近づこうとする俺の行く手を、一人の兵士が遮った。

「ヤツに近づいてはなりません!危険です!」
「どいてくれ!友達なんだ!」

ウィルが俺と兵士の前に割り込む。

「なんだ貴様は!」
「俺は皇子の従者、ウィル・クリスティオです。どうか、皇子の思うとおりに――」

ウィルが兵士の気を逸らしている内に、兵士の横をすり抜け、ニケの元へ向かった。

「ニケ……!」
「かあさま…かあさま……どうして……」

ニケは力なくぐったりとしたイリスを抱きしめて泣いていた。ふたりとも血まみれだった。
イリスは棺で眠っていたときよりもずっと血の気のない、真っ白な顔色をしていた。背中から胸へと矢が貫通し、彼女がもうこの世にはいないことは明白だった。

遅かった……ニケは一番大事な人を、亡くしてしまったのだ。

「ニケ……」
「ノア……かあさまが……僕の、かあさまが――……」

うわああああ――と、また激しく泣き出したニケにいったい、どんな言葉をかけたらいいのだろうか……

イリスの亡骸に縋りつくニケの震える背をさすってやることくらいしか、俺にはできなかった。


しばらくそうしていると、部屋の外がにわかに騒がしくなり始めた。

「ノア!!」

現れたのは、兄上だった。

「兄上……」
「大丈夫か!?ケガはないか!?」
「はい……私は大丈夫です」
「ああ、よかった……ところで、ソイツは誰だ?」

兄上のニケを見る目はこの上なく冷たかった。

「彼は……私の友人です」
「……貴様、名は?」

「……うっ……うっ」

ニケはひどく泣いていたせいで、まともにしゃべれそうになかった。

「彼は…今さっき母親を亡くしたショックでうまく話せないようです。あとで必ず……」
「貴様、ハディール・ニケ・ザハブルハームか?」
「……兄上?」
「貴様からの手紙、受け取ったよ。思惑通りにならなくて残念だったな」

ニケはいったい……兄上にどんな手紙を送ったのだろう……?

「ノア――いやルクスよ、コイツにいったい何をされた?」
「兄上……ニケは俺に何もしていません。ですから……」
「ルクス!ああ!なんということだ!!」

兄上は亜空間召喚魔法からロングソードを取り出し、構えた。
「蛮族の王子よ……答えろ。ルクスに何をした?」

兄上の魔力が膨れ上がるように増幅していく。

「カッ……!!」
「ニケ!?」

ニケは突然、喉を押さえて苦しみ始めた。まるで、見えない手に首を絞め上げられているかのように……

「兄上!やめてください!」

「ハディール王子よ……私の可愛い弟を捕らえ洗脳した罪、万死に値する。もう答えずともよい……死ね」

兄上の負の感情が強大な魔力とともに、周囲に漏れ出していた。



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