某国の皇子、冒険者となる

くー

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第6章 あなたは私の宝物

13. 騎士と皇帝

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兄上の魔法によって首を絞められたニケの顔色が、みるみるうちに黒く変色していく。
ニケを助けたいが、からだが動かない。あたりを見回してみると、ウィルや帝国兵たちも床に膝を付いていた。
この部屋にいるものはみな、兄上の強大な魔力に押さえつけられ、動くことができなくなってしまったのだ。

「兄上!お願いですから……っ!」
俺の声も届かない。このままじゃ、ニケは――

「グラヴィス!」
空気を揺るがす大音声と同時に、兄上に向かって衝撃波が放たれた。
すると、上から押さえつけられるような圧力から解放され、からだを動かせるようになった。
ニケも拘束から解放されたようだった。差し止められていた分の空気を取り戻そうと、必死に息を吸っている。

ニケ、よかった……

入り口に目を向けると、そこにいたのは帝国近衛騎士団団長ラウルス・アダマースだった。

「ラウルス……貴様いま、自分が何をしたかわかっているのか?」
「……きみが取り返しのつかない過ちを犯すのを止めた。頭を冷やせ、グラヴィス」
「私は冷静だ」
「どこがだ。ハディール王子を殺せば、ルクス皇子に嫌われるどころでは済まないぞ。わかっているのか?」
「……貴様のその、なんでもわかっているという態度が気に入らなかった。昔からずっと」
「わたしはいつも、きみのために助言をしている。きみは弟君が絡むと、度を越すきらいがあるからな」
「……貴様に、何がわかると言うのだ」

苦しそうに息をするニケの背をさすりながら、俺はふたりのやりとりを固唾を飲んで聞き耳を立てていた。

「ノア……」
「ニケ、大丈夫?」
「僕のことなんて、もう……放っておいて……」
「そんなこと、できるわけないだろ!それに、イリス…きみの母上からきみへの伝言を預かってる。きみは生きなきゃ……」
「かあさまが…?どうして……」
「あとで詳しく話すよ。歩けそう?」
「え……でも、かあさまが……」
「大丈夫」

ウィルたち三人に向かって手を振ると、すぐに気づいてくれて、手を貸そうと駆け寄ってきてくれた。
ジンがイリスの遺体をそっと抱きかかえた。
「俺が彼女を運ぶよ。ウィルは港までの案内を頼む」
「任せてくれ」

「ありがとう、ジン……」
ジンにお礼を言うニケに、頷きを返すジン。
俺とエトワールでニケのからだを支えてやり、部屋の出口へと歩き始めた。

兄上とラウルスの横を通り抜け、五歩ほど歩いたところで、問いかけられた。
「ルクス……どこへ行くんだ?」
やはりというか、すんなりとは通してはくれないか……

「ニケを安全な場所へと送り届けます」
「ふふふ……聞いたか、ラウルス?」



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