97 / 142
第7章 命の代償
4. 未知の島
しおりを挟む
王都から大海へと出航した日にはまだ夏の名残りの暑さが感じられたが、船が北に向かうにつれ空気は次第に冷たくなっていた。
航海を続け、船での保存食中心の食事にも飽きてきた頃――
「陸が見えたぞ!」
切り立った岩肌の上にはまばらに緑の植物が茂っている。
入り江の奥に船が上陸できそうな海岸を見つけ、俺たちはその島へと降り立った。
「ここから魔族の里まで行けるかな?ジン……って!」
ジンの頭からは角が、背からは漆黒の翼が生え、目は真紅に光っていた。その姿を目にするのは初めて会った頃以来だった。
「血を飲んだの?いったい誰の……」
「僕の血をあげたよ。もちろん容器に移してだから。みんな、変な想像しないでよね」
「ニケ……ジンと仲良くなったんだ」
「んっなわけないだろ!」
「え~……なんか否定強めじゃない?」
ジンはすがめた目で不満げにニケを見つめている。
「はあ……そういうわけじゃないけどさ。僕はただ、一刻も早く魔族の里に辿りつきたいだけ。ジンが里までの道をもう覚えてないって言うから、空から見たら何か手掛かりになるものが見つかるかなって……」
「ジン、ニケの期待に応えなきゃね」
「りょーかい!っと。それじゃ、ちょっくら行ってくるよ」
ジンは空へと飛び立っていった。
「ニケ、献血ありがとう!」
「……当然のことをしたまでだよ。ラウルス殿を一刻も早く助けなきゃ」
ラウルスはまだ船室で休んでもらっている。
「ラウルスの容体はどう?」
「……あまりよくないかも。魔法で呪いの進行をできるだけ抑えてはいるんだけど……」
「ニケ……顔色が悪いよ?ちゃんと寝てる?」
「僕は大丈夫だよ」
「昨日も遅くまでラウルス殿の治療をされていましたよね」
エトワールもニケに心配そうに尋ねる。
「そんなんじゃぶっ倒れちまうぞ」
ウィルも不安げな表情だ。
「ニケ……あんまり無茶しないでね。」
ニケの頭を撫でてみた。さらさらの金の髪が指に触れて心地いい。
「きみたちってほんと、お人好しなんだから……」
それからしばらくして、ジンが空から戻ってきた。
「どうだった?何かわかった?」
「里の場所を思い出したよ。ここから北東に徒歩で半日ってところかな」
俺たちは早速、里へ向かって移動することにした。
ジンとエトワールが先頭、ウィルがしんがりを務め、中央のラウレスを俺とニケがその両脇を固めて守っている…つもりだ。
ラウルスはいつもの甲冑に身を包んではいない。その腕には包帯が巻かれている。
歩きながら、怪我の具合はどうかと尋ねた。
「ニケのおかげで随分助かっています。ありがとう、ニケ」
「当然のことをしているまでです」
「目的地まで半日かかるみたいだけど、大丈夫そう?」
「移動するだけならば問題ありません。モンスターとの戦闘は、申し訳ないのですが……」
「それは俺たちに任せてよ。兄上からいただいた伝説の杖もあるし」
「心強い限りですが……騎士として皇子に守られるというのは、いかがなものかと……」
俺はラウルスの言葉を否定しようと口を開いたが、エトワールの緊張した声に遮られた。
「みなさん、前方よりモンスターの気配が近づいています。警戒を」
さっそく、おでましだ――
航海を続け、船での保存食中心の食事にも飽きてきた頃――
「陸が見えたぞ!」
切り立った岩肌の上にはまばらに緑の植物が茂っている。
入り江の奥に船が上陸できそうな海岸を見つけ、俺たちはその島へと降り立った。
「ここから魔族の里まで行けるかな?ジン……って!」
ジンの頭からは角が、背からは漆黒の翼が生え、目は真紅に光っていた。その姿を目にするのは初めて会った頃以来だった。
「血を飲んだの?いったい誰の……」
「僕の血をあげたよ。もちろん容器に移してだから。みんな、変な想像しないでよね」
「ニケ……ジンと仲良くなったんだ」
「んっなわけないだろ!」
「え~……なんか否定強めじゃない?」
ジンはすがめた目で不満げにニケを見つめている。
「はあ……そういうわけじゃないけどさ。僕はただ、一刻も早く魔族の里に辿りつきたいだけ。ジンが里までの道をもう覚えてないって言うから、空から見たら何か手掛かりになるものが見つかるかなって……」
「ジン、ニケの期待に応えなきゃね」
「りょーかい!っと。それじゃ、ちょっくら行ってくるよ」
ジンは空へと飛び立っていった。
「ニケ、献血ありがとう!」
「……当然のことをしたまでだよ。ラウルス殿を一刻も早く助けなきゃ」
ラウルスはまだ船室で休んでもらっている。
「ラウルスの容体はどう?」
「……あまりよくないかも。魔法で呪いの進行をできるだけ抑えてはいるんだけど……」
「ニケ……顔色が悪いよ?ちゃんと寝てる?」
「僕は大丈夫だよ」
「昨日も遅くまでラウルス殿の治療をされていましたよね」
エトワールもニケに心配そうに尋ねる。
「そんなんじゃぶっ倒れちまうぞ」
ウィルも不安げな表情だ。
「ニケ……あんまり無茶しないでね。」
ニケの頭を撫でてみた。さらさらの金の髪が指に触れて心地いい。
「きみたちってほんと、お人好しなんだから……」
それからしばらくして、ジンが空から戻ってきた。
「どうだった?何かわかった?」
「里の場所を思い出したよ。ここから北東に徒歩で半日ってところかな」
俺たちは早速、里へ向かって移動することにした。
ジンとエトワールが先頭、ウィルがしんがりを務め、中央のラウレスを俺とニケがその両脇を固めて守っている…つもりだ。
ラウルスはいつもの甲冑に身を包んではいない。その腕には包帯が巻かれている。
歩きながら、怪我の具合はどうかと尋ねた。
「ニケのおかげで随分助かっています。ありがとう、ニケ」
「当然のことをしているまでです」
「目的地まで半日かかるみたいだけど、大丈夫そう?」
「移動するだけならば問題ありません。モンスターとの戦闘は、申し訳ないのですが……」
「それは俺たちに任せてよ。兄上からいただいた伝説の杖もあるし」
「心強い限りですが……騎士として皇子に守られるというのは、いかがなものかと……」
俺はラウルスの言葉を否定しようと口を開いたが、エトワールの緊張した声に遮られた。
「みなさん、前方よりモンスターの気配が近づいています。警戒を」
さっそく、おでましだ――
1
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる