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第9章 嵐の前に
2. 休息
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「……はあ」
ウィルが返したのは呆れたような溜め息だった。
「なんだよ?」
「魔族はお気楽でいいよな。世界の破滅が迫ってるっていうのに……」
「あっ……」
忘れたくなる気持ちもわからないではないけど……
「サナトリオルムの言ったとおりに厄災が起こるのだとしたら、最初は各地に魔獣が出現する――でしたか……」
「アルゴグみたいなやつがいっぱい出るってこと?……やばくない?」
「やばいに決まってるだろ!だから、俺は修行する!!」
「私もウィルに賛成です」
「じゃあ俺もいっしょに…」
「いやいやノアはダメでしょ」
ジンに真顔で止められてしまった。
「えっ…なんでだよ?」
「なんでって……休まなきゃ!禁断の魔術で魂を元のからだに移し変えたばかりなんだよ!?」
「うーん……でも、それから半日眠ってたわけだし……今はほんとに何ともないけど」
ニケが少し声を荒げて言った。
「ジンの言う通りだ。それに、その直前にはルクスに腹をナイフで刺されただろ……けっこう傷、深かったんだよ!?」
あ、そういえば……
「あのときの傷、ニケが治してくれてたよね。まだお礼を言ってなかった。いつもありがとう、ニケ」
「いや……あの傷を治したのはほとんどきみの兄上だよ……あの人、僕より断然回復魔法が使えるんだ……攻撃魔法もあれだけ使えるって言うのに……」
「ニ、ニケ……」
ニケが落ち込んじでしまった……その気持ち、わかる…………そうだ!
「ニケはクラフトが得意じゃないか!また色々教えてもらいたいな」
そう言うと、ニケの顔が明るくなった。
「ノア……」
やっぱり、ニケは笑っている方がいい。
「もちろん、僕でよければ、何でも教えてあげるよ」
「…ノア、俺もイロイロと教えてあげられことがあるんだけど~」
「何?ジン」
「例えば……」
「はあー……馬鹿なことを言おうするなよ。行くぞ、ジン」
「はい!?行くってどこに?ちょっと~、服引っ張らないでよ」
「ノアは休まないといけなし、ニケは外に出られないからしょうがない。でも、おまえは大丈夫だろ。俺たちと修行だ」
「はあぁ!?嫌ですけどお??俺もノアとニケと一緒に……」
「ジン、修行がんばれよ。俺も休息取ったらそっちに行くし……あ、ニケごめん……」
「ううん……僕の回復魔法の訓練は部屋の中でもできるから気にしないで。落ち着いたら一緒にクラフトしよう」
「うん!そうしよう」
ジンはウィルとエトワールに両脇をがっちり固められ、城の訓練場へと連れて行かれた。
「ふわあ――……」
「ノア?眠いの?」
「急に静かになったせいかな……みんなの言う通り、やっぱり疲れてたのかも」
俺はニケにあいさつした後、自室へ戻ってしばらく眠ることにしたのだった。
次に目が覚めたのは、夕陽が沈む刻限だった。
……そんなに眠っていたのか。自分では気がつかなかったけれど、やっぱり疲れてたのか……
寝室から居室へと移動し、窓辺に立って外を眺める。
城は高台に建っているため、城下はもちろん、森が拡がる彼方先の地平線まで見渡すことができた。
綺麗だなあ……
こんなに綺麗だったっけ……
『厄災を起こす』
そう言ってせせら笑っていた――人の魂を糧とする悪霊の言葉がふと浮かび、心に暗雲が立ち込める。
アイツの思い通りになんか、絶対にさせない。
守らなきゃ――
美しくかがやくこの世界を。
大切な人たちが生きる世界を。
ウィルが返したのは呆れたような溜め息だった。
「なんだよ?」
「魔族はお気楽でいいよな。世界の破滅が迫ってるっていうのに……」
「あっ……」
忘れたくなる気持ちもわからないではないけど……
「サナトリオルムの言ったとおりに厄災が起こるのだとしたら、最初は各地に魔獣が出現する――でしたか……」
「アルゴグみたいなやつがいっぱい出るってこと?……やばくない?」
「やばいに決まってるだろ!だから、俺は修行する!!」
「私もウィルに賛成です」
「じゃあ俺もいっしょに…」
「いやいやノアはダメでしょ」
ジンに真顔で止められてしまった。
「えっ…なんでだよ?」
「なんでって……休まなきゃ!禁断の魔術で魂を元のからだに移し変えたばかりなんだよ!?」
「うーん……でも、それから半日眠ってたわけだし……今はほんとに何ともないけど」
ニケが少し声を荒げて言った。
「ジンの言う通りだ。それに、その直前にはルクスに腹をナイフで刺されただろ……けっこう傷、深かったんだよ!?」
あ、そういえば……
「あのときの傷、ニケが治してくれてたよね。まだお礼を言ってなかった。いつもありがとう、ニケ」
「いや……あの傷を治したのはほとんどきみの兄上だよ……あの人、僕より断然回復魔法が使えるんだ……攻撃魔法もあれだけ使えるって言うのに……」
「ニ、ニケ……」
ニケが落ち込んじでしまった……その気持ち、わかる…………そうだ!
「ニケはクラフトが得意じゃないか!また色々教えてもらいたいな」
そう言うと、ニケの顔が明るくなった。
「ノア……」
やっぱり、ニケは笑っている方がいい。
「もちろん、僕でよければ、何でも教えてあげるよ」
「…ノア、俺もイロイロと教えてあげられことがあるんだけど~」
「何?ジン」
「例えば……」
「はあー……馬鹿なことを言おうするなよ。行くぞ、ジン」
「はい!?行くってどこに?ちょっと~、服引っ張らないでよ」
「ノアは休まないといけなし、ニケは外に出られないからしょうがない。でも、おまえは大丈夫だろ。俺たちと修行だ」
「はあぁ!?嫌ですけどお??俺もノアとニケと一緒に……」
「ジン、修行がんばれよ。俺も休息取ったらそっちに行くし……あ、ニケごめん……」
「ううん……僕の回復魔法の訓練は部屋の中でもできるから気にしないで。落ち着いたら一緒にクラフトしよう」
「うん!そうしよう」
ジンはウィルとエトワールに両脇をがっちり固められ、城の訓練場へと連れて行かれた。
「ふわあ――……」
「ノア?眠いの?」
「急に静かになったせいかな……みんなの言う通り、やっぱり疲れてたのかも」
俺はニケにあいさつした後、自室へ戻ってしばらく眠ることにしたのだった。
次に目が覚めたのは、夕陽が沈む刻限だった。
……そんなに眠っていたのか。自分では気がつかなかったけれど、やっぱり疲れてたのか……
寝室から居室へと移動し、窓辺に立って外を眺める。
城は高台に建っているため、城下はもちろん、森が拡がる彼方先の地平線まで見渡すことができた。
綺麗だなあ……
こんなに綺麗だったっけ……
『厄災を起こす』
そう言ってせせら笑っていた――人の魂を糧とする悪霊の言葉がふと浮かび、心に暗雲が立ち込める。
アイツの思い通りになんか、絶対にさせない。
守らなきゃ――
美しくかがやくこの世界を。
大切な人たちが生きる世界を。
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