某国の皇子、冒険者となる

くー

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第9章 嵐の前に

1. 帰還

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魔族の里のある北の諸島から転移魔法を用いて、ベルムデウス帝国の帝都ガルネートゥスへ――
そして俺たちは、城の中庭へと降り立った。

懐かしいな……半年以上も帰ってなかったのか……

最後に城をこの目で見たのは、まだ冬の気配の濃い春の始まりの頃だった。いつの間にか時は経ち、木の葉の色づき始める季節へと月日は流れた。

城の城壁部分は白亜の大理石で造られている。城の屋根は黒大理石から造られており、城壁部分とのくっきりとしたコントラストが美しい。


兄上、大丈夫かな……

兄上はずっと、意気消沈していた。
無理もない……最愛の弟、ルクスの魂を世界に仇なす悪霊サナトリオルムに奪われてしまったのだから……


城に向かって歩いていると、城内から騎士や家臣たちが大慌てで躍り出てきた。
「陛下!!」
「あっ!ルクス殿下もおられる!」

一瞬、えっ――!?と思ったが、家臣たちからすればルクス殿下とは俺のことだった。

なんだか、ここ数週間のことが、夢みたいだ……

「ノア……疲れているだろう。部屋で休むか?食事もすぐに用意できるがが……」
「いえ……食事はしばらく大丈夫です。まず、みんなを客室に案内しますので」
「そうか…私は少々城を空けていたから、応対しなければならない仕事がいくつかあるはずだ。そばにいてやれなくてすまないな」
「少し?いくつか?」

ラウルスはぼそりと呟き、深い溜め息を吐いた。

「ラウルス…頼りにしているぞ」
「……………御意」

だいぶ間があったような……



兄上たちとは別れ、エトワール、ジン、ニケの三人を城の客間へと案内した。

「僕までこんないい部屋を使わせてもらってもいいのかなあ……」

ややこしいことになっては困るので、ニケがザハブルハーム王国の王子であるという事実は伏せていた。

「少しでも快適に過ごしてもらえるといいんだけど……申し訳ないけれど、ニケは帝国と王国の関係が落ち着くまであまり部屋から出ないほうが……」
「……わかった。ごめんね、ノア」
「俺の方こそ、ごめん。ニケは俺の仲間なのに、肩身の狭い思いをさせちゃって……その代わりってわけじゃないけど、必要なものがあれば用意するよ」
「ありがとう、ノア……えっと……図々しいかもしれないんだけど……」
「なんでも言ってよ」
「クラフト用の器具とかがあったら嬉しいんだけど……さすがにそれは贅沢だよね」
「クラフト!そうだよね……俺の部屋に一式揃えようと思うから、そっちに来てもらってもいい?」
「……いいの?」
「もちろん!」

ジンが不満の声を上げた。
「ニケばっかりずるーい!俺もノアの部屋に遊びに行きたい!!ふたりだって、そうだよね?」
ウィルとエトワールに問いかけるジン。


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