新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART1 ~この恋、日本を守ります!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第一章その2 ~黒鷹、私よ!~ あなたに届けのモウ・アピール編

始めよう、フレッシュ勇者三点セット

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 あの10年前の輝く日々を、誠は今でも覚えている。

 生前に研究者だった父は、その功績を認められ、高千穂研における竜芽細胞ドラゴンセル研究のメンバーに抜擢されたのだ。

『あなたも魔法使いになれる!』

 このキャッチコピーで喧伝された新技術で、人類は夢の扉をひらくはずだった。だがいたのは地獄の釜の蓋であり、現れたのは血肉に飢えた怪物だったのだ。

 母と入学式に行った学校が潰され、父に手を引かれて遊んだ海が血に染まった時、誠は頭の中が真っ白になり……けれど確かに感じていた。

 僕の育った故郷を壊すな! 僕の大事な人達を奪うな!

 だがいくら泣いても叫んでも、殺戮の宴は止まらなかった。神社の境内には逃げ惑う人々が溢れ、『毒蛇に注意』の看板は、踏み破られて泥にまみれた。

 家族も住む場所も、それこそ全てを失って、当時7歳だった誠は避難所で震えていた。泥水に濡れて、冷え切った足には感覚がない。毛布だって足りないし、着替えなんて尚更無い。

 避難所はまるで神に見放された恐ろしい場所のように思えたし、そこではどんな残酷な事も、当たり前のように毎日起きた。

『これはお前の親父のせいだ』

『お前のせいでこんな事になったんだ』

 心ない一部の大人は凶暴な怒りを誠にぶつけたが、苦しんだのは誠だけではなかった。多くの若者が国土の防衛に駆り出され、死と隣り合わせでいたからだ。

 コネのある者は安全な島嶼部に逃げたが、親を亡くした者、権力の無い者は、海辺の避難所で震えながら眠った。

 あまりの災害規模の大きさに、国の借金は膨大に膨らみ、国家機能は完全に破綻。病になっても保険が無い、ケンカが起きても警察がいない。

 強く粗暴な者が幅をきかせ、誠を含めた子供達は、一気に生存競争の底辺に叩き落とされた。

 あれから10年。生きるため、そしてあの人を守るため、誠はずっともがいてきた。連日の戦いで体はボロボロ、仲間は次々食われていく。


(……そうか、いつもの夢だったんだ)

 そこで誠は、これがよく見る追憶の夢だと気が付いた。

 やがて落雷のような衝撃が起こると、目の前に長身の女神が現れていた。

 女神は誠に向かい、いつものように語り始める。

「今よりしばしの後、この国を守る神の使い……つまり聖者が、お前の元にやって来る。その者を助け、共に戦い、悪鬼羅刹あっきらせつからもとを取り戻すのだ」

(……毎度の事ながら、空々しい事を言うもんだ)

 誠はどこか醒めた感覚で女神を見つめていたが、その時、夢はいつもと違う様相を見せ始めた。バチン、と何かの音がして、ふいに映像が途絶えたのだ。

『しまった!』

 確かにそう聞こえると、慌てて右往左往する小さな影が幾つも見えた。

『早く早く! スイッチ入れてよ』

『まあそう急かさずに、モウすぐです』

 再びバチン、と音がすると、雑な繋がり方をして、誠の目の前に映像が戻った。と言っても文字だけで、次のように記されている。

『あなたは英雄となって日の本の国を守り抜き、栄光を掴む事になります。日いづる国を守るため、今こそ旅立ちの時なのです。ちなみにこの戦いは……』

 文字は次々近付いては消えていく。勇ましい式典音楽ファンファーレが鳴り響き、誠は昔見た宇宙冒険活劇スペースオペラ映画を思い出した。

 文言は次第に高尚さを失っていき、『救国・得々キャンペーン』とか、『秋に始める・フレッシュ勇者三点セット』とか、色々と怪しい誘いを並べ始めた。番組終了30分以内に勇者になれば、更にお得らしい。

 やがて虚空にペンと紙が現れ、誠の方に近付いて来る。魔法の絨毯のようにゆったりした飛び方だったが、忘れていたのか、下敷きも急いで飛んできた。

 紙には『姫様と契約し、冒険を開始しますか』『はい/いいえ』と書いてある。

 誠が迷いなく『いいえ』に丸を描くと、もう1枚同じ紙が飛んできた。

 誠が意地になって『いいえ』を選択すると、今度は猛スピードで紙がすっ飛んで来て、ばしりと誠の顔に張り付いた。ペンが勝手に動き出すと、誠の顔を下敷き代わりに、『はい』に丸が描かれていくのだ。

「くっ! こいつ、何を勝手に!」

 誠がペンを持って抵抗していると、先ほどの小さな生き物らしき影が、ずらりと誠を取り囲んでいた。

「ええい、いつまでうじうじしとんのや、このとうへんぼく!」

 関西弁を皮切りに、1匹が誠の顔に飛び蹴りしてくる。

「ぐあっ!?」

 誠がきりもみして倒れたところを、その他の小さな生き物が、一斉に背中に駆け上がってきた。

「人間の分際で、こんな名誉なお役目なんやぞ! さっさと契約せんかい!」

「そうです、モウレツに反省すべきです!」

 背中を踏みつけるひづめの感覚から、これは子牛だろうか。耳を引っ張るのは人の手に近いから、多分子猿か。

 誠は命の危険を感じて叫んだ。

「やめろお前ら、いつもはこんなシーンないだろ! 誰か、さっきの女神でもいいから、こいつらを止めてくれ!」
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