38 / 117
第一章その2 ~黒鷹、私よ!~ あなたに届けのモウ・アピール編
いざ夢の中へ。ダイブイントゥドリーム
しおりを挟む
鶴と神使達は、再び車座になって話し合っていた。
「確かに夢なら黒鷹にも見えるけど、目が覚めると夢だって思っちゃうのよね」
鶴の言葉に、神使達も頷いた。少し重い雰囲気になりかけるが、キツネが手を上げて皆を励ました。
「でもな、前に姫様が言うた通り、1回で駄目でも、2回3回とたたみかければ、もしかしてって思うもんやろ」
「それは確かに、南蛮風に言えば人のサガでさあ」
旅装束をまとった猿も、キツネの言葉に同意する。
鶴も頷いて、一同を見渡し言葉をかけた。
「よーし、それならここからは力押しよ。夢の余韻が醒めないうちに、どんどん黒鷹にアピールしましょう!」
鶴達はまず、勧誘のチラシを用意した。
ブイサインをする鶴の似顔絵の周りを、コマやキツネといった神使達の顔がぐるりと取り囲んでいて、下の方には『夢で契約、秋の勇者はフレッシュ・得々キャンペーン』と記されている。
猿は感心して頷いた。
「ナイスアイディアですぜ。これなら夢で見たキーワードと現実が、頭の中でコラボしやす」
「そうでしょうウキちゃん。南蛮風に言えば、アイディアのマリアージュよ」
「南蛮はポルトガルだし、英語とフランス語も混じってるじゃないか」
コマのツッコミに聞く耳を持たず、鶴と神使達は盛り上がっている。牛がメガネを直しながら報告した。
「私の情報によりますと、彼らはモウレツな勢いで作戦指令室に向かっているようです」
「なるほど。あっ、早速黒鷹が来たわ!」
鶴の言葉通り、廊下の向こうから、黒鷹とその隊の面々が走って来ている。廊下は走るな、という張り紙もガン無視である。
「よっしゃ、ほな行くで!」
肩に乗るキツネにほっぺたをつままれた少年が現れると、自分でも何故そうしているのか分からない、といった表情で黒鷹の前に立ちふさがった。
「な、なんかキツネにつままれたような気分ですけど、鳴瀬さん、これを!」
少年は手にしたチラシを差し出した。
突然の事態に、黒鷹達は『えっ?』という表情で立ち止まった。
「ごめん、後で読んどく。緊急の呼び出しなんだ」
黒鷹はポケットに紙を突っ込むと、そのまま廊下を走って行った。
「なんやあいつ、読みもせんと!」
「いたたた、痛い痛い!」
頬をつまむ手に力を入れられ、少年が悲鳴を上げている。
「大丈夫よ、それじゃ作戦第二弾に移行しましょう!」
一同は壁を通り抜けて黒鷹に先回りした。
鶴と神使達は、2階への階段で黒鷹達を待ち受けた。
それぞれの神使が1人ずつ少年少女の肩に乗り、ほっぺたをつまんでいるのだ。
コマは自分も少女の頬をつまみつつ、悲鳴のようにツッコミを入れた。
「ちょっと鶴、何も変わってないじゃないか!」
「作戦その2、数で押しちゃえ作戦よ」
鶴は腕組みして満足そうに頷いている。
少年少女はキツネにつままれたような顔をしながら、両の手に数枚ずつ、扇のようにチラシを持っていた。念のためチラシをコピーしていたのが役立ったのだ。
「あっ、来たわ! ものども、かかれ!」
わーっ、と鬨の声を上げて突進した少年少女に、さすがの黒鷹も目を丸くしている。
だが黒鷹達は必死の体捌きで彼らをかわすと、階段の手すりに飛び乗った。そのまま左右の手すりを斜めにジャンプしながら、2階へ駆け上がっていくのだ。
「すごい、最近の子はあんなにアグレッシブなんだ!」
コマは感心してしまう。
「駄目だ鶴、これはもう、止めるのは無理なんじゃないかな」
「諦めちゃ駄目よコマ、ここは瞬間移動して作戦その3よ!」
鶴が叫ぶと、一同は少年少女の肩からジャンプし、虚空で光に包まれ消えた。
「さあ、ここが最後の正念場よ」
鶴は3階の視聴覚教室……今はブリーフィングルームと呼ばれる部屋の前に陣取り、きりりと鉢巻を締め直した。
無駄に器量の良い彼女は、こうして真面目な顔をすると見栄えはいいのだったが、結局毎回ろくな事を考えていないのだ、とコマは思う。
「それで鶴、今回はどうするのさ」
「恥ずかしいけど、こうなったら私自ら夢に乗り込んで説得するわ」
「やめてあげてよ!」
コマは思わず黒鷹に同情した。
「それにあの勢いで走ってきた人間が、いきなり寝たりするもんか」
「大丈夫、要は気を失えばいいのよ」
鶴が得意げに言うと、小さな影が左右から飛びかかり、黒鷹の首に手刀を見舞った。
「うわっ、鳴っちが倒れたで!」
きりもみして倒れた少年に驚き、周囲が血相を変えている。
「おい隊長、しっかりしろ! お前ならやれる!」
短髪の少年は黒鷹を応援するが、スキンヘッドの少年は何かに怯えて後ずさりしていた。髪の長い少女が刃物を取り出すと、関西弁の少女に止められていた。
「このバカ鳴瀬っ、だから倒れるって言ったのよ! すぐ手術するわ!」
「カノっち、いきなり手術はあかん! てかあんた、凄い力やな!」
「混乱してるわ! みんな、今よ!」
鶴と神使達はここぞとばかりに突進し、倒れた黒鷹の襟元にシールを貼った。
使用にほとんど霊力のいらない、夢に入るための簡易の神器である。
一同は助走をつけ、そのシールめがけてぽんぽん飛び込んでいく。飛び込まれる度に、うつぶせに倒れた黒鷹は痙攣している。
「ええいもう、どうなっても知らないぞ!」
コマもやけくそで駆けつけ、シールに向かってダイブした。
「確かに夢なら黒鷹にも見えるけど、目が覚めると夢だって思っちゃうのよね」
鶴の言葉に、神使達も頷いた。少し重い雰囲気になりかけるが、キツネが手を上げて皆を励ました。
「でもな、前に姫様が言うた通り、1回で駄目でも、2回3回とたたみかければ、もしかしてって思うもんやろ」
「それは確かに、南蛮風に言えば人のサガでさあ」
旅装束をまとった猿も、キツネの言葉に同意する。
鶴も頷いて、一同を見渡し言葉をかけた。
「よーし、それならここからは力押しよ。夢の余韻が醒めないうちに、どんどん黒鷹にアピールしましょう!」
鶴達はまず、勧誘のチラシを用意した。
ブイサインをする鶴の似顔絵の周りを、コマやキツネといった神使達の顔がぐるりと取り囲んでいて、下の方には『夢で契約、秋の勇者はフレッシュ・得々キャンペーン』と記されている。
猿は感心して頷いた。
「ナイスアイディアですぜ。これなら夢で見たキーワードと現実が、頭の中でコラボしやす」
「そうでしょうウキちゃん。南蛮風に言えば、アイディアのマリアージュよ」
「南蛮はポルトガルだし、英語とフランス語も混じってるじゃないか」
コマのツッコミに聞く耳を持たず、鶴と神使達は盛り上がっている。牛がメガネを直しながら報告した。
「私の情報によりますと、彼らはモウレツな勢いで作戦指令室に向かっているようです」
「なるほど。あっ、早速黒鷹が来たわ!」
鶴の言葉通り、廊下の向こうから、黒鷹とその隊の面々が走って来ている。廊下は走るな、という張り紙もガン無視である。
「よっしゃ、ほな行くで!」
肩に乗るキツネにほっぺたをつままれた少年が現れると、自分でも何故そうしているのか分からない、といった表情で黒鷹の前に立ちふさがった。
「な、なんかキツネにつままれたような気分ですけど、鳴瀬さん、これを!」
少年は手にしたチラシを差し出した。
突然の事態に、黒鷹達は『えっ?』という表情で立ち止まった。
「ごめん、後で読んどく。緊急の呼び出しなんだ」
黒鷹はポケットに紙を突っ込むと、そのまま廊下を走って行った。
「なんやあいつ、読みもせんと!」
「いたたた、痛い痛い!」
頬をつまむ手に力を入れられ、少年が悲鳴を上げている。
「大丈夫よ、それじゃ作戦第二弾に移行しましょう!」
一同は壁を通り抜けて黒鷹に先回りした。
鶴と神使達は、2階への階段で黒鷹達を待ち受けた。
それぞれの神使が1人ずつ少年少女の肩に乗り、ほっぺたをつまんでいるのだ。
コマは自分も少女の頬をつまみつつ、悲鳴のようにツッコミを入れた。
「ちょっと鶴、何も変わってないじゃないか!」
「作戦その2、数で押しちゃえ作戦よ」
鶴は腕組みして満足そうに頷いている。
少年少女はキツネにつままれたような顔をしながら、両の手に数枚ずつ、扇のようにチラシを持っていた。念のためチラシをコピーしていたのが役立ったのだ。
「あっ、来たわ! ものども、かかれ!」
わーっ、と鬨の声を上げて突進した少年少女に、さすがの黒鷹も目を丸くしている。
だが黒鷹達は必死の体捌きで彼らをかわすと、階段の手すりに飛び乗った。そのまま左右の手すりを斜めにジャンプしながら、2階へ駆け上がっていくのだ。
「すごい、最近の子はあんなにアグレッシブなんだ!」
コマは感心してしまう。
「駄目だ鶴、これはもう、止めるのは無理なんじゃないかな」
「諦めちゃ駄目よコマ、ここは瞬間移動して作戦その3よ!」
鶴が叫ぶと、一同は少年少女の肩からジャンプし、虚空で光に包まれ消えた。
「さあ、ここが最後の正念場よ」
鶴は3階の視聴覚教室……今はブリーフィングルームと呼ばれる部屋の前に陣取り、きりりと鉢巻を締め直した。
無駄に器量の良い彼女は、こうして真面目な顔をすると見栄えはいいのだったが、結局毎回ろくな事を考えていないのだ、とコマは思う。
「それで鶴、今回はどうするのさ」
「恥ずかしいけど、こうなったら私自ら夢に乗り込んで説得するわ」
「やめてあげてよ!」
コマは思わず黒鷹に同情した。
「それにあの勢いで走ってきた人間が、いきなり寝たりするもんか」
「大丈夫、要は気を失えばいいのよ」
鶴が得意げに言うと、小さな影が左右から飛びかかり、黒鷹の首に手刀を見舞った。
「うわっ、鳴っちが倒れたで!」
きりもみして倒れた少年に驚き、周囲が血相を変えている。
「おい隊長、しっかりしろ! お前ならやれる!」
短髪の少年は黒鷹を応援するが、スキンヘッドの少年は何かに怯えて後ずさりしていた。髪の長い少女が刃物を取り出すと、関西弁の少女に止められていた。
「このバカ鳴瀬っ、だから倒れるって言ったのよ! すぐ手術するわ!」
「カノっち、いきなり手術はあかん! てかあんた、凄い力やな!」
「混乱してるわ! みんな、今よ!」
鶴と神使達はここぞとばかりに突進し、倒れた黒鷹の襟元にシールを貼った。
使用にほとんど霊力のいらない、夢に入るための簡易の神器である。
一同は助走をつけ、そのシールめがけてぽんぽん飛び込んでいく。飛び込まれる度に、うつぶせに倒れた黒鷹は痙攣している。
「ええいもう、どうなっても知らないぞ!」
コマもやけくそで駆けつけ、シールに向かってダイブした。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
