新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART1 ~この恋、日本を守ります!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第一章その3 ~とうとう逢えたわ!~ 鶴ちゃんの快進撃編

強運を持つ花嫁。そこはかとないチートの香り

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 女神そっくりの女は、誠達に言葉をかける。

「良かった、うまく合流したようだな。私は平たく言えば日本神話の女神、岩凪姫だ。地上に派遣された神人しんじん大祝鶴姫おおほうりつるひめの監督役である。どうせすぐには信じぬだろうが、それなら取り急ぎ岩凪監察官とでも呼べ。通信が通じているのは、他ならぬ鶴の霊力のおかげだ。邪気の影響を受けない高次の霊波通信だから、この距離でも十分会話できる」

 誠は目の前の少女を見た。ひょうきんで何も考えていないように見えるが、何げに凄い事をやってるらしい。

「ちなみにお前の仲間は、私が術で黙らせている。今は時間が無いし、聞き役に徹してもらおう」

 誠が画面で確認すると、隊員達は口を閉じ、焦った顔でこちらに訴えかけていた。元がおしゃべりな難波は身振り手振りが忙しかったが、今はこのままがいいかもしれない。誠だって混乱しているのだ。

 自称女神は、続いて少女に語りかけた。

「早速だが鶴、聖者としての晴れ舞台だ。黒鷹達と協力し、高縄半島避難区を守り抜け」

「任せといて! みんなが困ってるんだもの、私が必ず守ってみせるわ!」

 鶴と呼ばれた少女は、鎧の胸を叩いて力強く答える。どこからか日の丸の扇子を取り出し、誠に向かい高らかに叫んだ。

「さあ黒鷹、私達の出番よ! この鶴ちゃんとともに悪鬼羅刹を討ち払い、日いづる国を守りましょう!」

「い、いや、いきなりそう言われましても……」

 誠が面食らっていると、コマと呼ばれた生き物が誠の肩に飛び乗って来た。

「やあ黒鷹、僕は狛犬のコマ。戸惑うのは当然だけど、この子は君の味方なんだ。姫といっても気にしないで。水軍の家系だし、船を飛び移って遊んでたおてんばの化身だよ」

「黙らっしゃいコマ、あなたは常々私への尊敬が足りないのよ。このまま三日三晩お説教といきたいけど……今はそれどころじゃなさそうね。この土地の霊気と馴染んできたから、敵の布陣が分かってきたわ」

「ふ、布陣……? 敵陣の様子が分かるのか?」

「勿論よ。ちょっと待ってね」

 鶴はそう言って、両の手を拍手かしわでのように叩き合わせる。

 するとたちまち、目の前に半透明のミニチュア地図が広がっていく。

「う、うわあ……!」

 誠は思わず声を上げた。

 それはまるで、巨人になったような眺めだった。

 道路が、建物が、そして地形が完璧に再現されていたし、坂の上には誠達の機体もあった。

 ミニチュアの範囲はどんどん広がり、本当に彼方の敵陣が見えてきた。

 敵は突撃力のある大型餓霊、機動力のある餓霊というふうに、幾つかの部隊に別れているようだ。

「黒鷹、どれか触ってごらんよ」

 コマに促され、誠が敵部隊の1つに触れると、敵の種類・数・隊の指揮官などが吹き出しで表示された。敵の進路とスピードは矢印で示されている。

「す、すごい……! 霧で見えない相手の情報が、ここから全部分かるなんて……」

 感動する誠を横目に、鶴は得意げに何度も頷いた。

「ほらね、全く私ときたら凄いでしょう? あらっ、この敵面白い顔をしてるわ」

「顔はどうでもいいけど、これじゃまるで攻略本じゃないか。これだけ情報が分かれば、最短距離でボスまで行ける……」

「待ちくたびれたが、ようやく納得したか?」

 モニターに映る自称女神は、満足そうにそう言った。

「先も言った通り、その子はお前達を救いに来た神の代行者。そしてその地図は、鶴の魂に組み込まれた道和多志みちわたし大鏡おおかがみだ。進むべき道を示す厳島いつくしまの女神達と、国土を総鎮守そうちんじゅするわが父・大山積おおやまつみの力を合わせた神器で、敵の動きを完璧に読み切る事が出来る。余程の事態にしか使う事が許されぬ物だが、今がそのよっぽどなのだ」

「そ、そんな事、急に言われても……」

 戸惑う誠の言葉を、自称女神は遮った。

「混乱は百も承知。だったら今は、最新科学でそうなるとでも思っておけ。まずは生き延びる事が先決だ。私はそのために、こんな格好までしているのだぞ?」

 女は誠の内心を見通しているかのようだった。

「それでは今のうちに、反撃の準備をしておくがいい。私も少ししたら戻る」

 彼女はそう言ってモニターから消えた。

「反撃の準備か……」

 誠はおうむ返しに呟いて、半透明の地図に目を戻した。

「準備ったって、そもそも敵の大将はどこにいるんだ?」

 懸命に目を凝らす誠に、コマが答えた。

「今は探知の範囲外だね。まだ鶴も実体化して間もないから、このぐらいしか見えないんだ」

「時間が経つと、もっと見えるようになるのか?」

「その土地の邪気の濃さにもよるけどね。さてと、差し当たって立てこもる場所がいるけど、どうしようか。確か海辺に城があったよね」

「駄目よコマ、海辺だったら、敵の大将が近付かないわ」

「じゃあどうするのさ?」

「こうするわ」

 鶴はウインクして答えると、再び手を合わせて念じる。

 次の瞬間、機体が、いや広場そのものが揺れ動き、高々と競り上がっていくのだ。

「う、うわあああっ!? 地震か! それとも噴火なのか!?」

 誠は本で読んだ昭和新山の事を思い出した。地下のマグマ次第では、何も無い平地で噴火が始まり、火山が出来る事もあるらしいのだ。

 しかし心配した噴火が起きる様子もなく、誠達がいる場所だけが、不自然に隆起していた。隆起地の直径は数十メートル、高さはちょっと見当がつかない。



 鶴は辺りを見回し、城普請しろぶしんを終えた武将のように満足げだ。

「これでいいわ。即席の山城って感じよ」

「……い、いや、確かに凄いよ。凄いけど、増援のあてもないのに篭城ろうじょうなんて。それにもう、機体がかなり壊れてるんだ」

「それも任せて。この鎧は、あのでっかいおじさんの体を使ってるのよね。確かガオーン……」

「ガレオン!」

「そうそうコマ、それなら治せるわ」

 鶴がそこまで言うと、機体が青い光に包まれた。

 すると機体の人工筋肉がみるみる再生していくのだ。それは仲間達の機体も同じだった。

「嘘だろ……!? ていうかお前達、ガレオンと会ったのか?」

 誠はそこで左手に異変を感じた。

 何かがガードグラブの中で動いているような、くすぐっているような感覚だったが、やがてグラブが散り散りに弾け飛んで、左手の甲の逆鱗が顕わになる。

 そして低く落ち着いた声が響き渡った。

「君がその娘の言っていたナルセだな。私は第5船団の保護する祭神ガレオン。私の意識を君の逆鱗と同期リンクさせた。しばらく君の逆鱗に宿り、外の世界を見学しよう。機体との神経接続は、今までよりずっと速度が増すぞ」

「が、ガレオンの意識が合体したのか……?」

 誠は呆然と呟いた。

 さっきから、やる事為す事無茶苦茶だ。

 胸がどきどきして、不思議な予感が五体を駆け巡っている。

 何か素敵な事が始まるかもしれない。

 それも今までの人生とは違う、劇的な何かが。

 誠は不意に、母の言葉を思い出した。

「誠は頑張り屋さんでしょう。そういう人は、何か1つ歯車がずれたら、きっとガチっと噛み合うのよ。そしたらいろんな事がうまくいくようになるわ」

 母は更にこう言ったのだ。

「そうね…………すご~く運のいいお嫁さんが来てくれるとか?」

「いやいや、何を考えてるんだ……!」

 誠は思わず首を振った。自分には雪菜さんがいるのである。

(けどこの力なら、もしかしたら……)

 戸惑いで目が泳ぐ誠だったが、ふと仲間達の様子に気が付いた。画面の上で、難波達が身振り手振りで訴えかけ続けている。

「ちょっとごめん、こいつら喋れるようにしてやってくれ!」

 誠は慌てて鶴に嘆願した。
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