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第一章その5 ~負けないわ!~ 蠢き出す悪の陰謀編
鳴門地区防衛戦3
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「ほんとに何しに行ったんだ?」
鶴を乗せて走りながら、コマが問いかけてくる。コマは巨大化すると声が太く、口調も厳めしくなるのだ。
「悪い人じゃないと分かったわ。それだけでも収穫よ」
鶴は宙を見上げながら、半ば上の空で答えた。
「近くで見ても悪意も感じなかったし、あの3人は信じていいみたい。周りの隊も、特に隠し事してる感じも無かったわ」
「なるほど、背中を撃たれるか見に行ったのか。割と真面目に偵察してたんだな」
「当たり前よ、私を誰だと思ってるの。決しておいしいもの調査に行ったわけじゃないのよ」
「怪しいな」
コマは風のように駆け戻る……はずだったのだが、そこで鶴はふと思いついた。
「そうだコマ、本陣にも寄って行きましょう」
「また寄り道か!」
「面倒なら、コマは先に帰ってて。私だけ瞬間移動で行ってくるわ」
「長い戦いになるかもしれん。長距離を渡ると霊力が消耗するし、近くまで走っていこう」
コマはそう言って身を翻すと、本陣へと駆け出していった。
「こんにちは! こないだはありがとう!」
「うわっ!? ぐはぁっ! 何だ、また君達か……!」
鳴門地区の戦闘コントロールセンターにいた阿波丸は、椅子を宙に舞わせて豪快にひっくり返った。
「まあ。さっきの人といい、現世の人はよくひっくり返るのねえ」
「鶴がいきなり現れるからだよ。おじさん大丈夫?」
「あ、ああ問題ない。毎回毎回、時間と空間を無視してくるね君達は。それで何の用だね」
「陣中見舞いよ。それに此度は正式に共闘するから、戦いの備えを見に来たの」
「既に伝わっている通りだよ。敵部隊が徳島自動車道を東進中で、平野部に陣を敷いて迎え撃つんだ……って、いない!」
鶴はもうあちこち歩き回って、人々に話しかけていた。
このコントロールセンターは、正面に大きなモニターが掲げられ、それと向き合うように沢山の作業員席が配されている。
モニターには地図が表示され、そこに味方の布陣や敵の予想進路が記されていた。
鳴門避難区を東端とし、そこから幾つかの防衛ラインが引かれていて、基本的には中央に人型重機部隊、両翼に砲撃部隊が待ち受けている。
敵が現れれば、たちどころに砲撃部隊が十字砲火を浴びせ、突破してきた相手に人型重機がトドメをさす、という手はずだ。
コマが地図を見ながら言った。
「今までに比べたら、かなり豪華な戦力だね。これなら守り切れそうだよ」
だが鶴は首を傾げた。
「確かにいい備えだけど……これだけ充実してる陣に、闇雲に攻めて来るかしら」
「龍穴の位置がばれたから、焦ってるかもしれないよ」
「それもあるかもしれないわね」
鶴は納得して頷いた。
「まあ、これ以上考えても仕方がないわ。それじゃお互い頑張りましょう。またね!」
鶴は阿波丸氏や作業員に手を振ると、いきなり光に包まれる。
「あっ、また消えた!」
最後に阿波丸氏の叫びが聞こえた。
「ただいまっ」
「うわっ!?」
突如操縦席に現れた鶴とコマに、誠はひっくり返りそうになったが、そこはなんとか耐え忍んだ。このぐらいで転んでいては、この子の相手は務まらない。
「毎度いきなり現れるんだよな。それより何しに行ってたんだよ」
「もちろん偵察よ」
「偵察?」
誠が繰り返すと、コマが鶴に尋ねている。
「ねえ鶴、さっきの指揮所に怪しい奴はいた?」
「ううん、変な人はいなかったわ」
鶴は珍しく悩んだ顔を見せている。
「敵も特務隊?とやらも、何の魂胆もないとは思えないけど、一体どうしてなのかしらね」
「確かに気になるな……」
誠もそれが気がかりだった。
不安が拭いきれないまま、戦いはかつて無いほど静かに開幕したのだ。
鶴を乗せて走りながら、コマが問いかけてくる。コマは巨大化すると声が太く、口調も厳めしくなるのだ。
「悪い人じゃないと分かったわ。それだけでも収穫よ」
鶴は宙を見上げながら、半ば上の空で答えた。
「近くで見ても悪意も感じなかったし、あの3人は信じていいみたい。周りの隊も、特に隠し事してる感じも無かったわ」
「なるほど、背中を撃たれるか見に行ったのか。割と真面目に偵察してたんだな」
「当たり前よ、私を誰だと思ってるの。決しておいしいもの調査に行ったわけじゃないのよ」
「怪しいな」
コマは風のように駆け戻る……はずだったのだが、そこで鶴はふと思いついた。
「そうだコマ、本陣にも寄って行きましょう」
「また寄り道か!」
「面倒なら、コマは先に帰ってて。私だけ瞬間移動で行ってくるわ」
「長い戦いになるかもしれん。長距離を渡ると霊力が消耗するし、近くまで走っていこう」
コマはそう言って身を翻すと、本陣へと駆け出していった。
「こんにちは! こないだはありがとう!」
「うわっ!? ぐはぁっ! 何だ、また君達か……!」
鳴門地区の戦闘コントロールセンターにいた阿波丸は、椅子を宙に舞わせて豪快にひっくり返った。
「まあ。さっきの人といい、現世の人はよくひっくり返るのねえ」
「鶴がいきなり現れるからだよ。おじさん大丈夫?」
「あ、ああ問題ない。毎回毎回、時間と空間を無視してくるね君達は。それで何の用だね」
「陣中見舞いよ。それに此度は正式に共闘するから、戦いの備えを見に来たの」
「既に伝わっている通りだよ。敵部隊が徳島自動車道を東進中で、平野部に陣を敷いて迎え撃つんだ……って、いない!」
鶴はもうあちこち歩き回って、人々に話しかけていた。
このコントロールセンターは、正面に大きなモニターが掲げられ、それと向き合うように沢山の作業員席が配されている。
モニターには地図が表示され、そこに味方の布陣や敵の予想進路が記されていた。
鳴門避難区を東端とし、そこから幾つかの防衛ラインが引かれていて、基本的には中央に人型重機部隊、両翼に砲撃部隊が待ち受けている。
敵が現れれば、たちどころに砲撃部隊が十字砲火を浴びせ、突破してきた相手に人型重機がトドメをさす、という手はずだ。
コマが地図を見ながら言った。
「今までに比べたら、かなり豪華な戦力だね。これなら守り切れそうだよ」
だが鶴は首を傾げた。
「確かにいい備えだけど……これだけ充実してる陣に、闇雲に攻めて来るかしら」
「龍穴の位置がばれたから、焦ってるかもしれないよ」
「それもあるかもしれないわね」
鶴は納得して頷いた。
「まあ、これ以上考えても仕方がないわ。それじゃお互い頑張りましょう。またね!」
鶴は阿波丸氏や作業員に手を振ると、いきなり光に包まれる。
「あっ、また消えた!」
最後に阿波丸氏の叫びが聞こえた。
「ただいまっ」
「うわっ!?」
突如操縦席に現れた鶴とコマに、誠はひっくり返りそうになったが、そこはなんとか耐え忍んだ。このぐらいで転んでいては、この子の相手は務まらない。
「毎度いきなり現れるんだよな。それより何しに行ってたんだよ」
「もちろん偵察よ」
「偵察?」
誠が繰り返すと、コマが鶴に尋ねている。
「ねえ鶴、さっきの指揮所に怪しい奴はいた?」
「ううん、変な人はいなかったわ」
鶴は珍しく悩んだ顔を見せている。
「敵も特務隊?とやらも、何の魂胆もないとは思えないけど、一体どうしてなのかしらね」
「確かに気になるな……」
誠もそれが気がかりだった。
不安が拭いきれないまま、戦いはかつて無いほど静かに開幕したのだ。
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