189 / 203
高坂修斗復帰編
誘引拒絶①
しおりを挟む
【若元梨音目線】
修斗が生徒会に来なくなってから二週間。
神奈月先輩の話ではひとまず保留という形で落ち着いたそうだ。
宇佐木先生も修斗と話し、大きな行事の無い2学期は席を残しておいてもいいだろう、本当にやめるかどうかは3学期になってから決めろ、とのことらしい。
私もあれから家で話すのも少し距離ができてしまったように感じる。
中学の頃もサッカー以外の話題はほとんど興味を示さなかったけど、今はそれがもっと顕著に感じる。
とても不安定なバランスの上に成り立っているような危うさを感じる。
だけどそれを私にはどうにもすることができない。
「若元~八幡~、帰りにニノとマック寄ってくんだけど行くかぁ?」
佐川君から道草のお誘いが来た。
特に用事も無かったので二つ返事で返した。
「修斗は? あいつにも声掛けようぜ」
「修斗は……」
見るとちょうどカバンを持って教室を出て行くところだった。
「私が声かけてくるね」
「おっ、頼んだ」
私もカバンを持ってすぐに修斗の後を追った。
階段のところで追い付いて声をかける。
「修斗! …………ちょっといい?」
「梨音。どうした?」
特に変わらない普段通りの修斗のように見える。
マックに誘うだけだというのに、少し心臓の動悸が早くなる。
一拍落ち着いて私は声を出した。
「このあとみんなでマック行くんだけど、修斗も来ない?」
「マックか…………」
うーんと少し考える素振りを見せる修斗。
「悪い、この後ランニングしないとだし、最近はそういうものを食べないようにしたんだ。梨音も知ってるだろ?」
確かに文化祭の日以降の食事は、修斗にお願いされて過度な脂物を出さないように気を付けることにしたんだ。
甘い物とかも全く食べなくなった。
「で、でもたまには食べたりするのも悪くないんじゃないかな。ほら、みんなだっているし最悪食べなくても一緒に話したりとか───」
「梨音」
低い、底冷えするような声に思わずビクリと体が震えた。
修斗からは聞いたことのない声だった。
「梨音が気遣って俺を誘ってくれてるのは分かるけど、余計なことはしないでくれ」
「ご、ごめん…………」
「怒ってるわけじゃないんだ。ただ、これ以上俺のことで気を遣わせるわけにもいかないからさ。俺のことは気にしないで、梨音は楽しんでこいよ」
「…………うん」
〝だから生徒会も辞めるの?〟という言葉が口をついて出そうになったが、グッとこらえた。
この言葉もきっと今の修斗にとっては気に障る言葉な気がする。
私はみんなのところに戻って修斗は来れないことを伝えた。
「そっか…………若元でもダメか」
「私でも?」
「おお。俺やニノでちょこちょこ声を掛けてたんだけどな、最近はめっぽう断られてばっかでよ。そこで1番の幼馴染から言ってもらえれば修斗も来るかと思ってな」
「またそうやって梨音のことを出汁にして……」
「でもコーサカ君どうしたんだろうね? 何か夢中になることでも見つけたのかな?」
どうやら修斗はまだみんなにサッカーに打ち込み始めたことを話していないみたいだった。
特に佐川君には話していそうだと思ったのに。
「若元は何か知らない? 修斗の弱みでもいいぜ」
「そんなもの知ってどうするのよ」
「…………実は」
「梨音も言わなくていいのよ!?」
「ううん、弱みの方じゃなくってね……」
私は3人に修斗の付き合いが悪いことについての理由を話した。
話すたびに修斗のことを思い出しては心が苦しくなる。
「そっか……修斗のやつ、怪我が治ったんだな。良いことじゃん」
「元々コーサカ君はサッカーで有名だったんだよね? 一時期動画でも大騒ぎにもなってたし……やりたかったことができるなら僕も良いことだと思うけど」
「うん……そう、だよね……」
やっぱり普通は佐川君やニノみたいに祝福して然るべきなんだ。
間違ってるのは私。
これはただの私のエゴ。
修斗と一緒にいられないからって、修斗の邪魔をするのは間違ってるんだ。
みんなが望んでいるのも、修斗がサッカーの道を一直線に突き進む姿なんだ。
「…………梨音はそれでいいの?」
「な、なんのこと?」
冬華が聞いてきた意味を私は理解していたけど、分かっていないフリをした。
「高坂、誰かが手綱を握っててあげないと危ない気がしたんだけど」
「手綱だなんて…………修斗はきっと一人でも大丈夫だよ」
「そうかしら? 梨音がいいって言うならいいんだけど……」
冬華は私の修斗に対する気持ちに気が付いているからこそ釘を刺したのかもしれない。
隣にいなくてもいいのかと。
「じゃ、しばらくは修斗のことは放っといてやろうぜ。遊びたくなったらアイツからまた来んだろ」
「そうだね」
「ええ」
「………………うん」
修斗が生徒会に来なくなってから二週間。
神奈月先輩の話ではひとまず保留という形で落ち着いたそうだ。
宇佐木先生も修斗と話し、大きな行事の無い2学期は席を残しておいてもいいだろう、本当にやめるかどうかは3学期になってから決めろ、とのことらしい。
私もあれから家で話すのも少し距離ができてしまったように感じる。
中学の頃もサッカー以外の話題はほとんど興味を示さなかったけど、今はそれがもっと顕著に感じる。
とても不安定なバランスの上に成り立っているような危うさを感じる。
だけどそれを私にはどうにもすることができない。
「若元~八幡~、帰りにニノとマック寄ってくんだけど行くかぁ?」
佐川君から道草のお誘いが来た。
特に用事も無かったので二つ返事で返した。
「修斗は? あいつにも声掛けようぜ」
「修斗は……」
見るとちょうどカバンを持って教室を出て行くところだった。
「私が声かけてくるね」
「おっ、頼んだ」
私もカバンを持ってすぐに修斗の後を追った。
階段のところで追い付いて声をかける。
「修斗! …………ちょっといい?」
「梨音。どうした?」
特に変わらない普段通りの修斗のように見える。
マックに誘うだけだというのに、少し心臓の動悸が早くなる。
一拍落ち着いて私は声を出した。
「このあとみんなでマック行くんだけど、修斗も来ない?」
「マックか…………」
うーんと少し考える素振りを見せる修斗。
「悪い、この後ランニングしないとだし、最近はそういうものを食べないようにしたんだ。梨音も知ってるだろ?」
確かに文化祭の日以降の食事は、修斗にお願いされて過度な脂物を出さないように気を付けることにしたんだ。
甘い物とかも全く食べなくなった。
「で、でもたまには食べたりするのも悪くないんじゃないかな。ほら、みんなだっているし最悪食べなくても一緒に話したりとか───」
「梨音」
低い、底冷えするような声に思わずビクリと体が震えた。
修斗からは聞いたことのない声だった。
「梨音が気遣って俺を誘ってくれてるのは分かるけど、余計なことはしないでくれ」
「ご、ごめん…………」
「怒ってるわけじゃないんだ。ただ、これ以上俺のことで気を遣わせるわけにもいかないからさ。俺のことは気にしないで、梨音は楽しんでこいよ」
「…………うん」
〝だから生徒会も辞めるの?〟という言葉が口をついて出そうになったが、グッとこらえた。
この言葉もきっと今の修斗にとっては気に障る言葉な気がする。
私はみんなのところに戻って修斗は来れないことを伝えた。
「そっか…………若元でもダメか」
「私でも?」
「おお。俺やニノでちょこちょこ声を掛けてたんだけどな、最近はめっぽう断られてばっかでよ。そこで1番の幼馴染から言ってもらえれば修斗も来るかと思ってな」
「またそうやって梨音のことを出汁にして……」
「でもコーサカ君どうしたんだろうね? 何か夢中になることでも見つけたのかな?」
どうやら修斗はまだみんなにサッカーに打ち込み始めたことを話していないみたいだった。
特に佐川君には話していそうだと思ったのに。
「若元は何か知らない? 修斗の弱みでもいいぜ」
「そんなもの知ってどうするのよ」
「…………実は」
「梨音も言わなくていいのよ!?」
「ううん、弱みの方じゃなくってね……」
私は3人に修斗の付き合いが悪いことについての理由を話した。
話すたびに修斗のことを思い出しては心が苦しくなる。
「そっか……修斗のやつ、怪我が治ったんだな。良いことじゃん」
「元々コーサカ君はサッカーで有名だったんだよね? 一時期動画でも大騒ぎにもなってたし……やりたかったことができるなら僕も良いことだと思うけど」
「うん……そう、だよね……」
やっぱり普通は佐川君やニノみたいに祝福して然るべきなんだ。
間違ってるのは私。
これはただの私のエゴ。
修斗と一緒にいられないからって、修斗の邪魔をするのは間違ってるんだ。
みんなが望んでいるのも、修斗がサッカーの道を一直線に突き進む姿なんだ。
「…………梨音はそれでいいの?」
「な、なんのこと?」
冬華が聞いてきた意味を私は理解していたけど、分かっていないフリをした。
「高坂、誰かが手綱を握っててあげないと危ない気がしたんだけど」
「手綱だなんて…………修斗はきっと一人でも大丈夫だよ」
「そうかしら? 梨音がいいって言うならいいんだけど……」
冬華は私の修斗に対する気持ちに気が付いているからこそ釘を刺したのかもしれない。
隣にいなくてもいいのかと。
「じゃ、しばらくは修斗のことは放っといてやろうぜ。遊びたくなったらアイツからまた来んだろ」
「そうだね」
「ええ」
「………………うん」
10
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる