怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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高坂修斗復帰編

脱退宣言③

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 AチームとBチームの紅白戦は時々行われるが、基本的に実力差が開きすぎているためバラバラに混ぜて行われるケースの方が多い。
 今回は高坂がいるからこその対抗戦ということだろう。

「もちろんいつも通り実力を見せたものには相応の評価を下す。Aチームも落とされる覚悟を持って臨むように」

 Bチームが高坂と集まって作戦会議をしていた。
 そもそもウチの戦術フォーメーションとしては4ー4ー2が主流で、これまではボランチの翔哉さんを起点にボールを保持しパスを繋いでいくシステムだったが、俺がエースとして台頭してからはサイドアタックからのパワープレーが攻撃の基本戦術になっている。
 自分で言うのもなんだが、ユース間で俺と空中戦で対等に競り合えるのは台徳丸と城ヶ崎だけだ。
 それ以外の敵であればクロスを上げてもらえれば必ず仕留められる。
 高坂に言われたあの日から、それのみを追求したからな。
 要約すると、俺のいるAチームと俺のいないBチームでは戦い方が違う。
 高坂を入れても基本戦術の4ー4ー2で来るのかそれとも別の形にするのか。
 高坂をどれだけ活かせるかがBチームの活路ってところだな。

「試合は前後半20分ハーフとする。それでは各自コートに入れ」

 試合はこちらからのボールで始まることとなった。

「翔哉さん、高坂の対処は任せましたぜ」

「ああ。俺が見極めてやっからよ」

 Bチームのフォーメーションはこちらと変わらず4ー4ー2。
 そして高坂はトップ下の位置に入っていた。
 本職のポジションだ。

『ピッ!』

 試合開始の合図と共にボールにタッチすると俺は前線へスルスルと上がっていき、最終ラインの位置に張り付いた。
 ボールが後ろでゆっくり回され、翔哉さんに渡ったと同時に前線へ浮き球で蹴り出された。
 CB2枚がプレスを掛けてきていたが、俺は両手で押さえると共に跳んで胸でトラップした。

 悪いが全く脅威にならんな。

 足元に落としてキープしてから、同じFWの紙旗かみはたにボールを出した。
 紙旗が右サイドにボールを流し、少し時間を作ってから中にもう一度戻した。
 受けた翔哉さんが一枚かわして再び右サイドへと繋ぎ、クロスを中へ入れてきた。
 しかし大きさが足りずニア側でキーパーにキャッチされてしまう。

「入れるならここまで届かせぇ!」

「わりぃわりぃ」

 クロスの精度があまり良くないのはなんとかならんもんか。
 それだけで決められるシーンがいくつあったことか。

 キーパーからのパスは下がってきていた高坂へと渡された。
 反転してドリブルを始める。

「さて、どれほどのものか……」

 寄せてきた選手をあっさりとかわし、続けて2枚目も股を抜いてかわしてみせた。
 まだ自陣だというのにドリブルで2枚かわす胆力よ。
 翔哉さんがカバーに入るがワンツーであっさり抜かれてしまい、DFもズルズルと下げられてしまう。

「おいおい待たんかい……やり過ぎだろて」

 スピードを遅らせようとするも止まらない。
 ボールが足にくっ付いているのかと錯覚させられるほどにボールが離れない。
 それもドリブルのスピードが全く落ちないオマケ付き。
 高坂に崩されたおかげで攻めの枚数と守りの枚数が同じになっており、高坂を止めるための枚数を掛けられない状況になっていた。

「…………どこの誰がファーストタッチからゴールまで狙うんじゃい」

 ゴールエリア手前まで押し込められ、DFがシュートコースを塞ぐと同時に高坂にプレスを掛けに行った。
 左足シュートフェイントからの右へパス。からのワンタッチでおとしてもらい、ダイレクトで右足を振り抜き、縦回転のドライブシュートが左サイドネットに突き刺さる。

「なんじゃいこりゃ…………もう失点したんか」

 喜ぶBチームを見て俺は、ヴァリアブルに初めてボコボコにされた中学2年の冬がフラッシュバックして重なった。
 これが1年と半年実戦から離れてた男だって?
 とんでもねぇ。
 ここまで体のキレを維持できて完璧なプレーができる奴の力を推し量る必要なんてねぇだろう。

「魔王が……帰ってきやがった……!」

 冷や汗が流れ、思わず笑みがこぼれてしまう。
 高坂の実力を理解しつつも、心のどこかで俺は見下していたんだ。
 怪我で離脱した男と外国人にも負けないフィジカルを手に入れて日本代表になった俺。
 大きく差は開いていても高坂ならすぐに追い付いて来れるだろうと。
 なんてことはねぇ。
 最初から俺と高坂に差なんてありゃしねぇ。
 ありゃ本物の化け物だ。
 ヴァリアブル世代最強の男が戻って来やがったんだ。

「上々じゃねぇか! やっぱお前はそうでなくちゃなぁ!」

 俺の心はかつてないほどに燃え上がっていた。
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