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高坂修斗復帰編
元野球少年④
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その後、新之助の暴力行為はクラブ内で問題とされた。
なによりいけなかったのは、スカウトの人達の目の前で暴力行為が行われたというものだった。
いくら将来有望な選手であるとはいえ、チームメイトに暴力を振るう選手は言語道断だということで、大阪桐隻と帝聖は新之助を獲得調査リストから完全に排除した。
その背景には成瀬という代わりの選手がいたことも左右していると言えよう。
また、光里シニアとしても二つのトップクラスの高校にそれぞれ選手を送ることで今後のコネクションが作れたかもしれないという算段を崩され、佐川新之助という選手に対して大きく失望することとなった。
クラブからの詰問に対し、新之助は成瀬の行ったことについて釈明しようとするも、実際にそのような監禁、暴行が成瀬の手によって行われたという事実は一切確認が取れず、成瀬もまたそのような事実はあるわけがないと否認をし、新之助の釈明は一切認められることはなかった。
そしてクラブ側はスカウト進学が決まっている成瀬の将来性を守るため、警察沙汰にはしないかわりに新之助を金輪際公式試合では起用しないことを宣言した。
実質的にそれは、自主退団を勧告するようなものだった。
新之助の母親は新之助と共にクラブ関係者からその話を受け、深く謝罪をし、クラブを後にした。
その間、新之助が言葉を発することはなかった。
「………………」
「………………」
母親の車で家へと帰る途中、母親は新之助に問いただすわけでも非難するわけでもなく、お互いの沈黙が続いていた。
その沈黙を破ったのは新之助だった。
「…………母ちゃんは何も言わないのかよ」
「何がさ」
「今回の……俺の暴力行為だよ」
「まぁ、人を故意に怪我させたのは悪いことだよ。アンタが100%悪い」
その言葉に新之助は反論できずに歯軋りをした。
「何があったかは母ちゃん知らないけど、アンタは少し頭冷やしな」
その日、新之助はクラブを退団することを母親に伝えた。
家に帰ると妹の雫が出迎えた。
「お帰りなさいお母さん、兄さ───」
新之助は雫に一瞥もくれることなく脇を抜け、階段を上がって自分の部屋へと帰っていった。
「まったく、あの子は」
「お母さん……? 兄さんはどうしたんですか……?」
「ちょっと揉め事。ほっといてやんな。しばらくしたら元のお調子者に戻るでしょ」
「そうですか……」
雫は心配そうに新之助が上っていった階段を見つめた。
するとすぐに、ドスンドスンという物が落ちたような音が響いてきたため、雫はギョッとした。
それは新之助がグローブやスパイクを壁に叩きつけた音だった。
(ふざけんな!! なんで俺がッ……俺が辞めることに…………!!)
そしてこれまで丁寧に手入れをしてきたグローブやスパイクを足蹴にした。
体の中に渦巻いていた感情が弾けたように、大事にしてきた物を何度も何度も踏みつけた。
その音は当然1階にも響いてきていた。
「お、お母さん! 兄さんは本当に大丈夫なんですか……!?」
「今声掛けても逆効果でしょ。相当イライラしてんのよ」
「でも……こんな怒ってる兄さん初めてだし……」
「遅れてきた反抗期みたいなもんよ」
(本当に……そんな簡単なものなのかな……?)
雫は兄が音を立てて暴れていることが初めてのことなのに、母が放任的なことに一抹の不安を覚えた。
このまま放っておくことの方がむしろ、元気で野球が好きで家族想いで優しい兄さんが、戻ってこないのではないのかと。
そして、その予想は苦しくも的中してしまうのだった。
それからの新之助は野球をすることはなく、粗暴な行動が目立つようになる。
家族に手を挙げるようなことはそれこそ一切無かったが、コミュニケーションは簡素なものとなり、柄の悪い人間と喧嘩することが多々あるようになった。
それでも両親に喧嘩していることがバレなかったのは、新之助が一方的に相手をぶちのめしてしまうため怪我をすることがほとんど無かったためであった。
それでも妹の雫だけは気付いていた。
新之助の隣の部屋である雫にだけは聞こえていた。
部屋にいる兄が時折苦しそうにすすり泣く声を挙げていたことに。
ボロボロになったグローブやスパイクを捨てられずに、屋根裏の収納箱にしまっていたことに。
雫にはまだ、あの優しかった兄が戻ってくることを信じて止まず、決して新之助を見捨てるようなことはしないと決意した。
「兄さんおはよう」「兄さんお帰りなさい」「今日学校でこんなことがあったんです───」
冷たくあしらわれても、無視をされても、声を掛けることは決してやめなかった。
辛抱強く、粘り強く、荒んで凝り固まった心をゆっくりと解いていくようにコミュニケーションを続けた。
そんな関係が1ヶ月ほど続き、徐々に徐々に雫の諦めないコミュニケーションに心折れ、新之助が雫との会話に時折笑顔で応えることができるようになった頃、一つの事件が起きた。
なによりいけなかったのは、スカウトの人達の目の前で暴力行為が行われたというものだった。
いくら将来有望な選手であるとはいえ、チームメイトに暴力を振るう選手は言語道断だということで、大阪桐隻と帝聖は新之助を獲得調査リストから完全に排除した。
その背景には成瀬という代わりの選手がいたことも左右していると言えよう。
また、光里シニアとしても二つのトップクラスの高校にそれぞれ選手を送ることで今後のコネクションが作れたかもしれないという算段を崩され、佐川新之助という選手に対して大きく失望することとなった。
クラブからの詰問に対し、新之助は成瀬の行ったことについて釈明しようとするも、実際にそのような監禁、暴行が成瀬の手によって行われたという事実は一切確認が取れず、成瀬もまたそのような事実はあるわけがないと否認をし、新之助の釈明は一切認められることはなかった。
そしてクラブ側はスカウト進学が決まっている成瀬の将来性を守るため、警察沙汰にはしないかわりに新之助を金輪際公式試合では起用しないことを宣言した。
実質的にそれは、自主退団を勧告するようなものだった。
新之助の母親は新之助と共にクラブ関係者からその話を受け、深く謝罪をし、クラブを後にした。
その間、新之助が言葉を発することはなかった。
「………………」
「………………」
母親の車で家へと帰る途中、母親は新之助に問いただすわけでも非難するわけでもなく、お互いの沈黙が続いていた。
その沈黙を破ったのは新之助だった。
「…………母ちゃんは何も言わないのかよ」
「何がさ」
「今回の……俺の暴力行為だよ」
「まぁ、人を故意に怪我させたのは悪いことだよ。アンタが100%悪い」
その言葉に新之助は反論できずに歯軋りをした。
「何があったかは母ちゃん知らないけど、アンタは少し頭冷やしな」
その日、新之助はクラブを退団することを母親に伝えた。
家に帰ると妹の雫が出迎えた。
「お帰りなさいお母さん、兄さ───」
新之助は雫に一瞥もくれることなく脇を抜け、階段を上がって自分の部屋へと帰っていった。
「まったく、あの子は」
「お母さん……? 兄さんはどうしたんですか……?」
「ちょっと揉め事。ほっといてやんな。しばらくしたら元のお調子者に戻るでしょ」
「そうですか……」
雫は心配そうに新之助が上っていった階段を見つめた。
するとすぐに、ドスンドスンという物が落ちたような音が響いてきたため、雫はギョッとした。
それは新之助がグローブやスパイクを壁に叩きつけた音だった。
(ふざけんな!! なんで俺がッ……俺が辞めることに…………!!)
そしてこれまで丁寧に手入れをしてきたグローブやスパイクを足蹴にした。
体の中に渦巻いていた感情が弾けたように、大事にしてきた物を何度も何度も踏みつけた。
その音は当然1階にも響いてきていた。
「お、お母さん! 兄さんは本当に大丈夫なんですか……!?」
「今声掛けても逆効果でしょ。相当イライラしてんのよ」
「でも……こんな怒ってる兄さん初めてだし……」
「遅れてきた反抗期みたいなもんよ」
(本当に……そんな簡単なものなのかな……?)
雫は兄が音を立てて暴れていることが初めてのことなのに、母が放任的なことに一抹の不安を覚えた。
このまま放っておくことの方がむしろ、元気で野球が好きで家族想いで優しい兄さんが、戻ってこないのではないのかと。
そして、その予想は苦しくも的中してしまうのだった。
それからの新之助は野球をすることはなく、粗暴な行動が目立つようになる。
家族に手を挙げるようなことはそれこそ一切無かったが、コミュニケーションは簡素なものとなり、柄の悪い人間と喧嘩することが多々あるようになった。
それでも両親に喧嘩していることがバレなかったのは、新之助が一方的に相手をぶちのめしてしまうため怪我をすることがほとんど無かったためであった。
それでも妹の雫だけは気付いていた。
新之助の隣の部屋である雫にだけは聞こえていた。
部屋にいる兄が時折苦しそうにすすり泣く声を挙げていたことに。
ボロボロになったグローブやスパイクを捨てられずに、屋根裏の収納箱にしまっていたことに。
雫にはまだ、あの優しかった兄が戻ってくることを信じて止まず、決して新之助を見捨てるようなことはしないと決意した。
「兄さんおはよう」「兄さんお帰りなさい」「今日学校でこんなことがあったんです───」
冷たくあしらわれても、無視をされても、声を掛けることは決してやめなかった。
辛抱強く、粘り強く、荒んで凝り固まった心をゆっくりと解いていくようにコミュニケーションを続けた。
そんな関係が1ヶ月ほど続き、徐々に徐々に雫の諦めないコミュニケーションに心折れ、新之助が雫との会話に時折笑顔で応えることができるようになった頃、一つの事件が起きた。
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