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高坂修斗復帰編
元野球少年⑤
新之助が学校から家に帰ろうとしたところで、最近までつるんでいた同じ学校の連中から呼び出しがかかった。
先日、今後は関わらないことを伝えたばかりのことであった。
当然、新之助は無視をしようとしたが話を聞いて事情が変わった。
見せてきた画像には雫が薄暗いところで座り込んでいるのが映っていた。
雫を拉致していることを瞬時に判断した新之助はすぐに拳が出そうになったが、大人しく付いて来れば何もしないと言われ、一度頭を冷やして大人しく付いていくことにした。
(雫も同じ学校に通ってるわけだし、拉致るのは簡単ってことか)
付いて行った先はなんの因果か、成瀬に騙されて最初に喧嘩することになった解体現場だった。
中に入ると見知った顔が6人待っていた。
新之助と同じ中学の最近つるんでいた奴らに妹の雫。
雫には一見して怪我は無く、地面に座らされていた。
「なんのつもりだよ土屋」
「話は聞いたぜ佐川。もう喧嘩はしないんだってな。1ヶ月前、隣の早坂中学の頭を一人でボコボコにしているお前を見てチームに誘ったわけだが、近隣の中学はほぼ全部占めることができた。これから隣町を占めようって時に俺達を裏切るのか?」
「別に土屋のチームに入った覚えなんてないんだが。あの時も因縁付けてきたやつを返り討ちにしただけだ」
「その割には呼び出しには応じて他の学校の番張ってる奴らを片してくれたよな」
「それは…………」
「お前がいれば俺たちはもっとデカくなれんだよ」
「だから妹を拐って言うことを聞かせようと?」
「俺だってこんなダセーことはしたくねーんだけどな。それによ、一度人を殴る道を選んだのなら、その禊はどう責任取るんだよ」
「兄さん…………」
雫が怯えたように震えていた。
暴力沙汰とは全くの無縁に生きてきた雫にとって、新之助が喧嘩をして過ごしていたことは寝耳に水だった。
荒れていることは知っていても、それは女子中学生の考える反抗期程度のもので、殴り合いの喧嘩をしているとは到底考えていなかった。
それは新之助も同じで、妹にそのことを知られたくなかった。
そのために喧嘩はしないと伝えたというのに、それどころか結局巻き込む形になってしまった。
故に怯える雫を前に新之助は一つ決意をした。
自分の外れた道を正し、最後まで見捨てないでいてくれた妹のために、自分は最後まで妹を守る兄でいると。
新之助はその場で膝を折り、土下座をした。
「…………!?」
「頼む。もう家族に迷惑掛けたくないんだ。一度踏み外した道を修正できるのは今しかないんだ。だから、妹も解放してくれ。この通りだ」
その行動に土屋達も思わず固まった。
いくら妹を拉致していると言っても、新之助が暴れれば誰も止めることが出来ない。
とはいえ新之助が妹を蔑ろにして暴れるわけがないと踏んでいたし、妹をダシにすれば素直に言うことを聞くと思っていた。
そもそも土屋達の知っている新之助は誰かに謝罪するような出来た人間には見えなかった。
だから謝罪でゴリ押しで来るのは予想外の出来事だった。
「ど、どうするつっちー……」
「…………分かった。俺達の関係はここまでにしよう。おい、妹は放してやれ」
雫が引き起こされ、新之助の方に返された。
雫はすぐに新之助の背に隠れて服を掴んだ。
その手は震えていた。
「元々、妹に手を出す気なんてねぇよ。あくまでお前を呼び出すための餌だ。お前のヘイトが俺達に向いたら、誰も勝てないしな」
「…………短い間だけど世話になった」
「ふん、行くぞてめーら」
土屋達は先に解体現場から出て行った。
土屋が関係の無い妹にまで手をだすような畜生であれば、新之助もそもそもつるんだりはしていなかった。
土屋も新之助を利用し、新之助も言いようのない気持ちを吐き出したいがために土屋を利用していたビジネスパートナーのような関係性。
だからこそ終わる時は一瞬だ。
「ごめん雫、兄ちゃんの都合に巻き込んで」
「兄さんのバカっ! ぐすっ……本当に怖かったんですから! ひぐっ……!」
「本当にごめん」
「………………一つ約束してください」
「約束?」
「…………もう今後は喧嘩なんて危ないことしないでください。前みたいに、優しい兄さんでいてください」
目を赤く腫らしながら訴えかけてくる雫に、新之助は柔らかく笑みを浮かべて答えた。
「約束する。俺はもう二度と相手を殴るようなことはしないよ。雫を裏切るような真似はしない」
「…………分かればいいんですっ」
フンと強がってみせた雫に、新之助はまた笑った。
それ以降、新之助は喧嘩をすることはなかったが、無法者として多少顔が知られてしまったため、近隣の高校より少し遠い私立を目指すことになった。
親友に裏切られた傷跡は癒えず、野球をする気にはならなかったためスポーツ推薦を取ることはできなかったが、珍しく真面目に勉強したおかげか瑞都高校に合格することができた。
この一件以降、シスコン気味になってしまった感は否めない(本人は否定している)が、新之助が雫を悲しませることは一度も無かった。
先日、今後は関わらないことを伝えたばかりのことであった。
当然、新之助は無視をしようとしたが話を聞いて事情が変わった。
見せてきた画像には雫が薄暗いところで座り込んでいるのが映っていた。
雫を拉致していることを瞬時に判断した新之助はすぐに拳が出そうになったが、大人しく付いて来れば何もしないと言われ、一度頭を冷やして大人しく付いていくことにした。
(雫も同じ学校に通ってるわけだし、拉致るのは簡単ってことか)
付いて行った先はなんの因果か、成瀬に騙されて最初に喧嘩することになった解体現場だった。
中に入ると見知った顔が6人待っていた。
新之助と同じ中学の最近つるんでいた奴らに妹の雫。
雫には一見して怪我は無く、地面に座らされていた。
「なんのつもりだよ土屋」
「話は聞いたぜ佐川。もう喧嘩はしないんだってな。1ヶ月前、隣の早坂中学の頭を一人でボコボコにしているお前を見てチームに誘ったわけだが、近隣の中学はほぼ全部占めることができた。これから隣町を占めようって時に俺達を裏切るのか?」
「別に土屋のチームに入った覚えなんてないんだが。あの時も因縁付けてきたやつを返り討ちにしただけだ」
「その割には呼び出しには応じて他の学校の番張ってる奴らを片してくれたよな」
「それは…………」
「お前がいれば俺たちはもっとデカくなれんだよ」
「だから妹を拐って言うことを聞かせようと?」
「俺だってこんなダセーことはしたくねーんだけどな。それによ、一度人を殴る道を選んだのなら、その禊はどう責任取るんだよ」
「兄さん…………」
雫が怯えたように震えていた。
暴力沙汰とは全くの無縁に生きてきた雫にとって、新之助が喧嘩をして過ごしていたことは寝耳に水だった。
荒れていることは知っていても、それは女子中学生の考える反抗期程度のもので、殴り合いの喧嘩をしているとは到底考えていなかった。
それは新之助も同じで、妹にそのことを知られたくなかった。
そのために喧嘩はしないと伝えたというのに、それどころか結局巻き込む形になってしまった。
故に怯える雫を前に新之助は一つ決意をした。
自分の外れた道を正し、最後まで見捨てないでいてくれた妹のために、自分は最後まで妹を守る兄でいると。
新之助はその場で膝を折り、土下座をした。
「…………!?」
「頼む。もう家族に迷惑掛けたくないんだ。一度踏み外した道を修正できるのは今しかないんだ。だから、妹も解放してくれ。この通りだ」
その行動に土屋達も思わず固まった。
いくら妹を拉致していると言っても、新之助が暴れれば誰も止めることが出来ない。
とはいえ新之助が妹を蔑ろにして暴れるわけがないと踏んでいたし、妹をダシにすれば素直に言うことを聞くと思っていた。
そもそも土屋達の知っている新之助は誰かに謝罪するような出来た人間には見えなかった。
だから謝罪でゴリ押しで来るのは予想外の出来事だった。
「ど、どうするつっちー……」
「…………分かった。俺達の関係はここまでにしよう。おい、妹は放してやれ」
雫が引き起こされ、新之助の方に返された。
雫はすぐに新之助の背に隠れて服を掴んだ。
その手は震えていた。
「元々、妹に手を出す気なんてねぇよ。あくまでお前を呼び出すための餌だ。お前のヘイトが俺達に向いたら、誰も勝てないしな」
「…………短い間だけど世話になった」
「ふん、行くぞてめーら」
土屋達は先に解体現場から出て行った。
土屋が関係の無い妹にまで手をだすような畜生であれば、新之助もそもそもつるんだりはしていなかった。
土屋も新之助を利用し、新之助も言いようのない気持ちを吐き出したいがために土屋を利用していたビジネスパートナーのような関係性。
だからこそ終わる時は一瞬だ。
「ごめん雫、兄ちゃんの都合に巻き込んで」
「兄さんのバカっ! ぐすっ……本当に怖かったんですから! ひぐっ……!」
「本当にごめん」
「………………一つ約束してください」
「約束?」
「…………もう今後は喧嘩なんて危ないことしないでください。前みたいに、優しい兄さんでいてください」
目を赤く腫らしながら訴えかけてくる雫に、新之助は柔らかく笑みを浮かべて答えた。
「約束する。俺はもう二度と相手を殴るようなことはしないよ。雫を裏切るような真似はしない」
「…………分かればいいんですっ」
フンと強がってみせた雫に、新之助はまた笑った。
それ以降、新之助は喧嘩をすることはなかったが、無法者として多少顔が知られてしまったため、近隣の高校より少し遠い私立を目指すことになった。
親友に裏切られた傷跡は癒えず、野球をする気にはならなかったためスポーツ推薦を取ることはできなかったが、珍しく真面目に勉強したおかげか瑞都高校に合格することができた。
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