怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
199 / 203
高坂修斗復帰編

元野球少年⑤

 新之助が学校から家に帰ろうとしたところで、最近までつるんでいた同じ学校の連中から呼び出しがかかった。
 先日、今後は関わらないことを伝えたばかりのことであった。
 当然、新之助は無視をしようとしたが話を聞いて事情が変わった。

 見せてきた画像には雫が薄暗いところで座り込んでいるのが映っていた。
 雫を拉致していることを瞬時に判断した新之助はすぐに拳が出そうになったが、大人しく付いて来れば何もしないと言われ、一度頭を冷やして大人しく付いていくことにした。

(雫も同じ学校に通ってるわけだし、拉致るのは簡単ってことか)

 付いて行った先はなんの因果か、成瀬に騙されて最初に喧嘩することになった解体現場だった。
 中に入ると見知った顔が6人待っていた。
 新之助と同じ中学の最近つるんでいた奴らに妹の雫。
 雫には一見して怪我は無く、地面に座らされていた。

「なんのつもりだよ土屋」

「話は聞いたぜ佐川。もう喧嘩はしないんだってな。1ヶ月前、隣の早坂中学の頭を一人でボコボコにしているお前を見てチームに誘ったわけだが、近隣の中学はほぼ全部占めることができた。これから隣町を占めようって時に俺達を裏切るのか?」

「別に土屋のチームに入った覚えなんてないんだが。あの時も因縁付けてきたやつを返り討ちにしただけだ」

「その割には呼び出しには応じて他の学校の番張ってる奴らを片してくれたよな」

「それは…………」

「お前がいれば俺たちはもっとデカくなれんだよ」

「だから妹をさらって言うことを聞かせようと?」

「俺だってこんなダセーことはしたくねーんだけどな。それによ、一度人を殴る道を選んだのなら、そのみそぎはどう責任取るんだよ」

「兄さん…………」

 雫が怯えたように震えていた。
 暴力沙汰とは全くの無縁に生きてきた雫にとって、新之助が喧嘩をして過ごしていたことは寝耳に水だった。
 荒れていることは知っていても、それは女子中学生の考える反抗期程度のもので、殴り合いの喧嘩をしているとは到底考えていなかった。
 それは新之助も同じで、妹にそのことを知られたくなかった。
 そのために喧嘩はしないと伝えたというのに、それどころか結局巻き込む形になってしまった。

 故に怯える雫を前に新之助は一つ決意をした。
 自分の外れた道を正し、最後まで見捨てないでいてくれた妹のために、自分は最後まで妹を守る兄でいると。

 新之助はその場で膝を折り、土下座をした。

「…………!?」

「頼む。もう家族に迷惑掛けたくないんだ。一度踏み外した道を修正できるのは今しかないんだ。だから、妹も解放してくれ。この通りだ」

 その行動に土屋達も思わず固まった。
 いくら妹を拉致していると言っても、新之助が暴れれば誰も止めることが出来ない。
 とはいえ新之助が妹を蔑ろにして暴れるわけがないと踏んでいたし、妹をダシにすれば素直に言うことを聞くと思っていた。
 そもそも土屋達の知っている新之助は誰かに謝罪するような出来た人間には見えなかった。
 だから謝罪でゴリ押しで来るのは予想外の出来事だった。

「ど、どうするつっちー……」

「…………分かった。俺達の関係はここまでにしよう。おい、妹は放してやれ」

 雫が引き起こされ、新之助の方に返された。
 雫はすぐに新之助の背に隠れて服を掴んだ。
 その手は震えていた。

「元々、妹に手を出す気なんてねぇよ。あくまでお前を呼び出すための餌だ。お前のヘイトが俺達に向いたら、誰も勝てないしな」

「…………短い間だけど世話になった」

「ふん、行くぞてめーら」

 土屋達は先に解体現場から出て行った。
 土屋が関係の無い妹にまで手をだすような畜生であれば、新之助もそもそもつるんだりはしていなかった。
 土屋も新之助を利用し、新之助も言いようのない気持ちを吐き出したいがために土屋を利用していたビジネスパートナーのような関係性。
 だからこそ終わる時は一瞬だ。

「ごめん雫、兄ちゃんの都合に巻き込んで」

「兄さんのバカっ! ぐすっ……本当に怖かったんですから! ひぐっ……!」

「本当にごめん」

「………………一つ約束してください」

「約束?」

「…………もう今後は喧嘩なんて危ないことしないでください。前みたいに、優しい兄さんでいてください」

 目を赤く腫らしながら訴えかけてくる雫に、新之助は柔らかく笑みを浮かべて答えた。

「約束する。俺はもう二度と相手を殴るようなことはしないよ。雫を裏切るような真似はしない」

「…………分かればいいんですっ」

 フンと強がってみせた雫に、新之助はまた笑った。
 それ以降、新之助は喧嘩をすることはなかったが、無法者として多少顔が知られてしまったため、近隣の高校より少し遠い私立を目指すことになった。
 親友に裏切られた傷跡は癒えず、野球をする気にはならなかったためスポーツ推薦を取ることはできなかったが、珍しく真面目に勉強したおかげか瑞都高校に合格することができた。

 この一件以降、シスコン気味になってしまった感は否めない(本人は否定している)が、新之助が雫を悲しませることは一度も無かった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。