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部活勧誘編
一一①
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次の日、学校に行くと桜川が俺のクラスでスタンバッてた。
朝早くからご苦労なこって。
「待ってたよ高坂っち。今日こそはイエスって言ってもらうんだから」
「イエス様はこう仰った。右頬を殴られたら左頬を差し出せと。これでいい?」
「誰もキリスト教の教えは求めてないよ! 例の話!」
イエスって言ったのに約束が違うな。
何度来られても俺の返答は変わらないというのに。
「あ、昨日も来てた人だよね。ウチのクラスの人?」
梨音が聞いてきた。
「いや、6組の人。俺を部活に入れたくてしょうがないらしい」
「へー。何部?」
「サッカー」
「…………サッカー部?」
梨音が怪訝な表情を示した。
梨音は俺が怪我をしてサッカーを辞めたことをもちろん知っているわけだから、こんな風に誘ってくる人に対していい印象を持たないのだろう。
「中学時代の俺のことを知ってくれてるみたいでな」
「ファンと言っても過言じゃないよ! 高坂っちのプレイはいろんな人にとって魅力的で参考になっていたからね」
「ふーん…………」
朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴った。
桜川を追い払うには良いタイミングだ。
「ほら自分のクラス戻れよ桜川。チャイム鳴ってんぞ」
「チャイムなんかで私の思いは止められないね!」
「覇道でも突き進んでんのかお前は。じゃあ止められる人にお願いするわ」
「え?」
「どこの生徒だ? 早く戻らんと遅刻だぞ」
桜川の後ろにいたのは我らが担任、宇佐木先生だ。
新之助の額を砕いたチョーク投げのごとく、桜川も6組に放り投げてやってください。
「先生! 先生は何かに一生懸命になっている人を見ると応援したくなるタイプでしょうか!?」
「ん? ああ、まぁどちらかと言えばな。教職員だしな」
「では私は彼を部活勧誘するのに一生懸命なので、先生は応援してくれるというわけですね?」
どんな暴論だよ。
こんな押し通りそうもない論破は初めてだ。
「ふむ…………貴方の名前は?」
「桜川美月です」
「では、一生懸命な桜川に一言、美人で優しい先生から応援メッセージをやろう」
「何でしょうか!?」
「『時と場合を考えろ』」
────────────
───────
────
「いやぁ朝は助かった」
「何だお前、まだ絡まれてんのか」
ホームルームが終わった後、後ろから新之助が話しかけてきた。
宇佐木先生の一言により桜川はすごすごと引き下がり、梨音の機嫌もあれ以上悪くならずに済んだ。
「絡まれてるも何も、そういうお前は結局サッカー部入るのかよ」
「俺? 入るわけないじゃんサッカー部なんか。やったこともないしな」
こいつ……!
マジで一回殴られた方がいいと思う。
今度こいつの発言全部録音しといてやろうかな。
「女の子に必要とされてる状況、素直に受け取っとけって修斗」
「簡単に言ってくれるなよ。俺にだって色々と事情があるんだからな」
「そんなことよりよ、このクラスにすげー名前の奴がいるの、知ってるか?」
「いや、知らん」
クラスで自己紹介をそもそもしていないため、俺はまだ梨音と新之助以外の名前を全然把握していない。
というか話してすらいない。
「あそこ、左から2列目前から一番目のところに座ってる奴、いるだろ?」
「ああ、大人しそうな奴な」
新之助が指差したところにいたのは、髪が長く眼鏡をかけた少し暗そうな男子生徒だった。
「あいつの名前がガチ珍しくてな」
「どんなよ?」
「これなんだけどよ」
新之助は紙とペンを取り出し、『一、一」と横棒を二つ書いた。
「…………で?」
「いや、これが名前なんだよ」
「は? 棒書いただけじゃん。お前人のことあんま舐めんなよぶっ飛ばすぞ」
「何でそこまで言われなきゃなんねーんだよ! だいたい俺は嘘ついてねー!」
新之助が嘘ついてないとすると、こんな棒2本でなんと読むのか。
見たこともないぞ。
「どーよ」
「…………同点?」
「試合じゃねーよサッカー馬鹿。アクロバティックな読み方すんな」
「分かんねーな。ホントに人の名前か?」
「おうよ。実はこれでな…………一一って読むんだってよ」
わ、分かんねー!
一をにのまえなんて読み方すんのも分かんねーしよ、一を続けてるって名付け親酷くねーかこれ?
絶対今までイジられてきたんだろーなぁ……。
「何というか……大変そうな人生送ってそうだな」
「なぁ、ちょっと話しかけに行ってみようぜ」
そう言うと新之助はすぐに動いたので、俺も後を追った。
新之助は高校デビューの割に社交的で、こういう時の行動力は大したもんだ。
今までの行動を見ても初対面の人とグイグイ話している。
俺には無いもので、素直に尊敬できる所でもある。
朝早くからご苦労なこって。
「待ってたよ高坂っち。今日こそはイエスって言ってもらうんだから」
「イエス様はこう仰った。右頬を殴られたら左頬を差し出せと。これでいい?」
「誰もキリスト教の教えは求めてないよ! 例の話!」
イエスって言ったのに約束が違うな。
何度来られても俺の返答は変わらないというのに。
「あ、昨日も来てた人だよね。ウチのクラスの人?」
梨音が聞いてきた。
「いや、6組の人。俺を部活に入れたくてしょうがないらしい」
「へー。何部?」
「サッカー」
「…………サッカー部?」
梨音が怪訝な表情を示した。
梨音は俺が怪我をしてサッカーを辞めたことをもちろん知っているわけだから、こんな風に誘ってくる人に対していい印象を持たないのだろう。
「中学時代の俺のことを知ってくれてるみたいでな」
「ファンと言っても過言じゃないよ! 高坂っちのプレイはいろんな人にとって魅力的で参考になっていたからね」
「ふーん…………」
朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴った。
桜川を追い払うには良いタイミングだ。
「ほら自分のクラス戻れよ桜川。チャイム鳴ってんぞ」
「チャイムなんかで私の思いは止められないね!」
「覇道でも突き進んでんのかお前は。じゃあ止められる人にお願いするわ」
「え?」
「どこの生徒だ? 早く戻らんと遅刻だぞ」
桜川の後ろにいたのは我らが担任、宇佐木先生だ。
新之助の額を砕いたチョーク投げのごとく、桜川も6組に放り投げてやってください。
「先生! 先生は何かに一生懸命になっている人を見ると応援したくなるタイプでしょうか!?」
「ん? ああ、まぁどちらかと言えばな。教職員だしな」
「では私は彼を部活勧誘するのに一生懸命なので、先生は応援してくれるというわけですね?」
どんな暴論だよ。
こんな押し通りそうもない論破は初めてだ。
「ふむ…………貴方の名前は?」
「桜川美月です」
「では、一生懸命な桜川に一言、美人で優しい先生から応援メッセージをやろう」
「何でしょうか!?」
「『時と場合を考えろ』」
────────────
───────
────
「いやぁ朝は助かった」
「何だお前、まだ絡まれてんのか」
ホームルームが終わった後、後ろから新之助が話しかけてきた。
宇佐木先生の一言により桜川はすごすごと引き下がり、梨音の機嫌もあれ以上悪くならずに済んだ。
「絡まれてるも何も、そういうお前は結局サッカー部入るのかよ」
「俺? 入るわけないじゃんサッカー部なんか。やったこともないしな」
こいつ……!
マジで一回殴られた方がいいと思う。
今度こいつの発言全部録音しといてやろうかな。
「女の子に必要とされてる状況、素直に受け取っとけって修斗」
「簡単に言ってくれるなよ。俺にだって色々と事情があるんだからな」
「そんなことよりよ、このクラスにすげー名前の奴がいるの、知ってるか?」
「いや、知らん」
クラスで自己紹介をそもそもしていないため、俺はまだ梨音と新之助以外の名前を全然把握していない。
というか話してすらいない。
「あそこ、左から2列目前から一番目のところに座ってる奴、いるだろ?」
「ああ、大人しそうな奴な」
新之助が指差したところにいたのは、髪が長く眼鏡をかけた少し暗そうな男子生徒だった。
「あいつの名前がガチ珍しくてな」
「どんなよ?」
「これなんだけどよ」
新之助は紙とペンを取り出し、『一、一」と横棒を二つ書いた。
「…………で?」
「いや、これが名前なんだよ」
「は? 棒書いただけじゃん。お前人のことあんま舐めんなよぶっ飛ばすぞ」
「何でそこまで言われなきゃなんねーんだよ! だいたい俺は嘘ついてねー!」
新之助が嘘ついてないとすると、こんな棒2本でなんと読むのか。
見たこともないぞ。
「どーよ」
「…………同点?」
「試合じゃねーよサッカー馬鹿。アクロバティックな読み方すんな」
「分かんねーな。ホントに人の名前か?」
「おうよ。実はこれでな…………一一って読むんだってよ」
わ、分かんねー!
一をにのまえなんて読み方すんのも分かんねーしよ、一を続けてるって名付け親酷くねーかこれ?
絶対今までイジられてきたんだろーなぁ……。
「何というか……大変そうな人生送ってそうだな」
「なぁ、ちょっと話しかけに行ってみようぜ」
そう言うと新之助はすぐに動いたので、俺も後を追った。
新之助は高校デビューの割に社交的で、こういう時の行動力は大したもんだ。
今までの行動を見ても初対面の人とグイグイ話している。
俺には無いもので、素直に尊敬できる所でもある。
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