怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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生徒会勧誘編

前橋きい①

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 初めて高坂修斗と話をしてしまった。
 中学2年の夏に高坂の試合を見た時からずっと追ってきていて、3年の時に大怪我をして表舞台に出てこなくてなってからは全く情報が入ってこなかった。
 この前に未来さんから高坂を庶務として生徒会に入れるという話を聞いた時は本物か半信半疑だったけど、たまたま会計の仕事をしていたら高坂が生徒会室にやってきた。

 初めて近くで見た高坂は、中学の時に見た時より背も高くなって大人びていて格好良かった。
 当時のように生き生き……とはしていなかったけど。

「なんだキイ、珍しく嬉しそうな顔してるな」

「お兄ちゃん……」

 リビングにいた私に、部活から帰ってきたお兄ちゃんが声を掛けてきた。
 お兄ちゃんは私の二つ上で、同じ瑞都みずと高校のサッカー部でキャプテンをしている。
 元々、小さい頃から未来さんとお兄ちゃんが知り合いだったこともあって、私も未来さんと仲良くしてもらっていた。

「なんか良いことでもあったか?」

「…………高坂修斗と会った」

 お兄ちゃんも中学の頃はクラブチームにいたので高坂のことは知っていた。
 一度だけ戦ったこともあると話していた。

「ホントか? あの東京Vヴァリアブルにいた?」

「うん」

「へ~良かったじゃないか。キイは前から高坂の大ファンだったもんな。わざわざジュニアユースのインタビュー記事が載った雑誌も買ったりとかして」

「別にそこまでじゃないけど…………」

「どこで会ったんだ? 東京Vと提携してる高校は都内の方だよな?」

「うちの高校にいるよ」

「へ~………………えっ!?」

 お兄ちゃんも知らなかったんだ。
 制服を脱いでる途中でフリーズしていた。

「な、何で!? 普通は寮に入るものじゃないのか!?」

「中学の時の怪我のせいでサッカーできなくなったんだって。だからユースにも上がってないって」

「そうか…………。怪我って去年、キイが言ってたやつだよな。そんなに酷かったのか……」

『高坂修斗! 全治3ヶ月の大怪我!』
 そんな大見出しで書かれていたサッカーの情報誌。
 マイナー雑誌とはいえ、中学3年生にも関わらず大見出しで載るほど高坂は期待されていた。
 だけどそれ以降、高坂の情報が雑誌に紹介されることはなかった。

「でも今日話してみて、あまり落ち込んでる風には見えなかった」

「そうか~。きっと色々あって乗り越えて来たんだろうな。あっ、もしかしてあの時ボール蹴ったのって……」

「なにかあったの?」

「いやな、この前グラウンド入り口のところからとんでもないシュート打った奴がいて少し話題になってたんだよ。もしかしたらそれが高坂修斗だったのかもな」

「へ~……」

 もしそうなら、高坂はボールが蹴れるほどに治っている……?
 でも嘘をついてるようには見えなかった。
 ボールは蹴れてもサッカーはできる状態じゃないってことかな。

「高坂修斗がサッカーできて、うちの部活に入ってくれれば全国も夢じゃないんだけどなぁ」

「……サッカーできたらそもそもユースに戻るでしょ」

「そりゃそうだ」

 でももし高坂がサッカーしているところを見れたら、きっと私はこれ以上ないほど興奮すると思う。
 高坂がボールを持てば、何かが起こると思わされるほどの選手。
 冬の高円宮杯でもチームの中心として活躍して、二連覇を飾っていた。
 そんな彼のプレーを、私はもう一度見てみたい。

「…………でも難しいよね」

 たとえ怪我が治ったとしても、1年間近くサッカーをしていない彼が前のようにプレーできるのは現実的に厳しいはず。
 だからクラブチームも高坂を切ったんだ。

「そういやキイは神奈月に誘われてまた生徒会入るんだって? 部活とかはやらなくていいのか? 生徒会に入ったら部活には入れないだろ」

「……うん。特に入りたいのもない」

「サッカー続ければよかったのに」

「体格差で負ける」

「背が低くても足元があれば何とかなるぞ。バスケとは違うからな」

「……見るだけでいい」

「まぁ本人が言うのなら」

 お兄ちゃんはそう言って自分の部屋へと戻っていった。

 お兄ちゃんも背は高い方ではないけど、CBセンターバックとして主将を務めている。
 強豪の瑞都高校で主将を任されるというのも凄いことだと思うので、素直にそこは尊敬している。
 でも試合を見に行きたいとはあまり思わない。
 兄の応援としてならもちろん行くけど、瑞都高校の試合自体は見ていてもワクワクしないので、中学生の時以来見に行ってない。

「…………高坂は生徒会、入るのかな」

 入ればいいな。
 サッカーが出来なくても、憧れだった人と一緒に仕事ができるのは楽しそう。

 そう考えると少し生徒会が楽しみになった。
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