怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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サマーバケーション勧誘編

海水浴場②

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「修斗! こっちだこっち!」

 連絡を受けて待ち合わせ場所に向かうと、新之助が手を振りながらこちらを呼んだ。
 新之助、ニノ、八幡、桜川、牧村さんが待っていた。

「よお、無事に来れたみたいだな」

「ああ。そんなに時間かからなかったな。それと、こちらがここまで運転してくれた望月日夏さん」

 すかさずもっちーさんを紹介した。
 こういうのは早い方がいい。

「望月っす~。もっちーで大丈夫っすよ」

「いやーわざわざすいませんねぇもっちーさん! 俺、佐川新之助って言います! 新之助でもしんちゃんでも好きに呼んでもらって構いません!」

「お前しんちゃんなんて呼ばれたことないだろ」

「しかもしれっと下の名前で呼ばそうとしてるし……」

 こういう距離の詰め方だけは天才である。

わたくしは牧村と申します。本日は運転手兼皆様の身辺のお世話をさせて頂きますので、望月様も何かあればお声掛けください」

 牧村さんが丁寧にお辞儀をした。

「えっ、あっ、はいっす………………ちょちょ修斗さん、なんか凄い執事みたいな人がいるんすけど……」

「あれガチ執事です。あそこのニノって奴の家の人なんですよ」

「でえええマジっすか!? 執事なんてほんとにいるんすねぇ……」

 もっちーさんが感心したように驚いた。
 当たり前のように麻痺してしまっていたが、執事などというファンタジーな存在を見れば誰でも同じような反応をする。
 少なくともお手伝いさん等はいるかもしれないが、一般社会において執事を直接見ることは難しいだろう。

「結構人いるけど、まだ場所は空いてそうだから場所取った後に着替えて集合な!」

「着替えると言うと…………水着に?」

「当たり前だろそれ以外何があるんだよ」

「でも佐川はやらしい目で見てきそうだし……」

「八幡は俺のことを変質者か何かと勘違いしてないか…………?」

「嘘嘘、冗談よ」

 新之助が悲しげに肩を落としたのを見て、慌てて八幡が訂正した。
 海に来て海に入らないなら何しに来たんだという話ではある。

「ま、いやらしい目では見るんだけどな」

 新之助が小声で俺に呟いてきた。
 新之助らしいクズっぷり。
 期待を裏切らないとはこのことだ。

 空いてる場所にシートとパラソルを差し、牧村さんに荷物番を任せ、女性陣は貸し出している更衣室へと向かい、俺達は車へと戻って車内で着替えた。
 着替えると言っても履き替えるだけだし、新之助に至ってはそもそも最初から履いてきている。

「ニノは上を着るのか?」

「日焼けが怖いんだよ」

 そう言ってニノはラッシュガードと呼ばれるものを着ていた。
 確かに日焼け止めを塗ったりするよりも合理的に防ぐことができる。
 そんなものがあるとは便利だ。

「分かってねーなぁニノよ。男は日に焼けてナンボのもんだぜ」

「でも日焼けしたら痛いじゃん」

「それも夏の醍醐味だろ? 見たまえ俺のこの肉体を」

 そう言って両腕に力を込める新之助。
 野球の元シニアだと言っていたが、今は部活をやっていないのに中々鍛えられている身体をしている。
 水泳の授業の時にも思ったが、ガタイだけで言えば優夜に近い。
 身長は少し足らないが。

「今でも筋トレとかやってるのか?」

「おうよ! っつーかこの日みたいな時のために脱いでも恥ずかしくない身体を維持してたんだぜ!」

「そりゃ殊勝な心掛けだな」

「そうじゃなきゃわざわざ自分から海に行こうなんて誘わねーっての」

 動機は不純かもしれないが、実際に目標に向かって行動に移せるだけでも俺は偉いと思う。

 牧村さん達のところに戻り、しばらくすると女性陣達が戻ってきた。

「お待たせ~」

「おお…………」

 もれなく全員水着に着替えているが…………これはなんというか、目を引かれるな。
 梨音は胸元にフリルのついた白色のビキニ。腰が出ていることによってスタイルの良さが際立っている。
 八幡は黒のワンピース型の水着。大きめの胸を少し隠すようなスタイルらしい。もったいない。
 前橋は花柄半袖シャツに短パンのような、いわゆるフィットネス水着のようなものを着ていた。ニノのラッシュガードと似ているが、もっと可愛さを前面に押し出したものだ。可愛さ7割マシである。
 桜川は青色でいわゆるビーチバレーをやっている人達が着ているビキニだ。桜川に一番似合うと言っても過言ではない。
 モッチーさんは黄色の水着に着替えているとは思うが、白色の薄いジャージを羽織って麦わら帽子を被っているので、そもそも海にはそれほど入らないのかもしれない。だが、むしろその上着がむしろいい。

「修斗…………」

「なんだ新之助」

「俺…………この高校に入れてよかったって心の底から思ってる! 可愛い子達とこんな学生生活を送れることを俺はずっと夢見てたんだよ!」

「大袈裟だけど概ね同意」

 と、同時に俺は心のどこかで変な違和感を覚えた。
 彼女らの普段見ない水着姿を見て、気持ちが昂っているのは間違いないわけだし、新之助の悪ノリにも乗っかれる。
 だけど以前のように、それこそ誤って着替え中の梨音の部屋に入った時のような、男としての邪な感情というものが、今この瞬間は薄れてしまっているような。
 言い方を変えるとすれば…………興味が薄れている…………?

 まぁこういうことにも慣れてきたってことかもしれないか。

「じゃーん。高坂っち、佐川っち、ニノっち、どう? 全員おニューの水着だよ!」

「最高ー!! みんなビューティフォー!! もう言うことありやせん!!」

「えー本当にー? ニノっちなんか目逸らしてるけどー」

「いや、べ、別に逸らしてないし…………」

 ニノよ。
 ウブなのは分かるが、こういうのは見ておかないと損ってやつだ。

「修斗もどう? みんなで選んだんだよ」

「ああ。とっても可愛いと思う」

「うっ…………そんなストレートに言われると思わなかった」

 梨音が少し照れたように笑った。
 前橋と目が合うと逸らされつつ梨音の後ろに隠れた。

「なんで隠れる」

「だって…………恥ずかしいし」

「じゃあそんな前橋に一言言ってやろう」

「………………なに?」

「スクール水着ではなくて安心した」

「着てくるわけないって言ったじゃん!」
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