【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 前半

第2話:ギフトと冒険者

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 家ではなく、近くにある畑に向かう。
 母さんは今日は狩りにはいかず、村から借りている小さな畑を耕やすと言っていたからだ。

 ちいさな村だ。畑まではそう離れておらず、子どもの足でもすぐだった。

「母さん! 聞いて! ギフトだよ! ギフトを授かったよ!」

 遠くに母さんの姿を見つけると思わず大きな声で叫んでいた。
 あとになって気付いたことだが、前世の記憶はあっても、この頃のオレの精神は五才児の体に引きずられていたんだと思う。感情をうまく抑えることができなかった。

「え? ギフト?」

「そう! ギフトだよ! ギフトを授かったんだ!」

 母さんはオレの言葉の意味を遅れて理解すると、目を見開いて驚き、そして綺麗な顔を崩して一緒に喜んでくれた。

「うわぁ! すごいじゃない! 今夜はお祝いしないとだね!」

 母さんは駆け寄ったオレの脇に手を入れると、軽々と高く持ち上げてクルクル回り始めた。
 ちょっと恥ずかしかったけど、素直に嬉しかった。

「ギフトとか本当にすごいじゃない! さすが母さんの子だわ!」

「へへへ。それでね。すごいギフトなんだよ!」

 自慢気に話そうとすると、母さんはギフトはあまり口外するものじゃないからと待ったをかけ、とりあえず家へと移動することになった。
 オレが騒いだせいで隣の畑を耕しているおじさんがこちらを見ていたからだ。

 普段から普通に話をする気の良いおじさんなのだが、家族以外には理由もなく話さない方がいいらしい。

 そうして家に入って開口一番。
 母さんも待ちきれなかったのか、すぐにギフトのことを尋ねてきた。

「それでコウガ。一体どういうギフトを授かったの?」

 オレも話したくてうずうずしていたので、喜んでそのギフトの名を告げる。

「授かったのは……【ギフト:竜を従えし者】だよ!」

「え? りゅ、竜!? 従えし者ってことは……竜の調教テイミングスキル!? そんなギフトが存在するなんて……」

「本当だよ? 『この者、あらゆる竜を従え使役する事ができる』だって!」

 ギフトを授かった時に知った名前とその説明を伝えたのだが、徐々に母親から笑顔が消え、難しい顔になっていっていることに気が付いた。

「え? どうしたの? 嘘じゃないよ?」

 突拍子もなさすぎて信じて貰えなかったのかと思いそう言うと、母さんは首を左右に振って静かに話し始めた。

「いい? よく聞くんだよ。ギフトのことを疑ってるんじゃないの。そうじゃなくてコウガのこれからのことを考えていたのよ」

 オレはどういうことかわからなかったので、黙って大人しく話を聞くことにした。

「えっとね。【〇〇を従えし者】ってギフトはレアギフトらしいけど、過去にも何人か授かった人がいるの。その人達が授かったのは『鳥』や『鼠』だったり、強いものでも『熊』や『狼』だったかしら。だから問題にならなかったと思うわ。でも……コウガは竜。ドラゴンでしょ?」

「うん。すごいよね!」

「ええ。本当にすごいわ。だけど……コウガはどうやってドラゴンに会いに行くつもり?」

 そう聞かれてオレは、ドラゴンをテイムするということが、そう簡単なことじゃないだろうことにようやく気付いた。

 この世界のドラゴンは、たしか数年に一度、どこどこの国で現れたと噂を聞く程度の遭遇率だ。

 それでも長い人生だ。
 頑張って探せば、いつかドラゴンと出会うこともできるかもしれない。

 実際、母さんも一度だけあったことがあるそうだ。

 そう。長く冒険者生活をしていた母さんでも一度だけ。
 自ら危険地帯に何度も赴いているA級冒険者だった母さんでも一度だけだ。

 そもそもドラゴンと戦って勝負になるのはバランスの良いA級冒険者パーティーかららしいので、そんな簡単に会えたら困るのだが。

「すごいギフトだから母さん本当に嬉しいんだけど、そのギフトを有効に使おうと思ったら、最低でも母さんと同じA級冒険者ぐらいにならないといけないわ」

 ちなみに父さんは、ドラゴンではない他の上級魔物との戦いで受けた傷が原因で、オレが生まれる前に亡くなっている。

 この世界では当たり前の話だが、冒険者はすごく危険な職業なのだ。

 冒険者ランクはEから始まり、D、C、B、A、Sと上がっていくほど強いとされている。高ランクの冒険者は報酬も破格となり、S級になれば貴族特権まで与えられるとか。

 だが、大半の冒険者はC級までで冒険者人生を終える。
 しかも引退して終える者より、怪我や命を落として終える者の方が多いと聞く。

 特に成り立ての冒険者の死亡率はとても高く、一年後に無事に続けているものは半数を切るそうだ。

「そ、そうか……ドラゴンテイマーになれると喜んでいたけど、かなり大変そうだね……」

 それにこのギフトでテイミングするためには、対象の半径三メートル以内に近づかなければいけない。その上、対象から離れているほどテイムの成功率が著しく下がるようだから、できる限り近づいて使う必要がある。できれば触れて使いたいところだ。

 だからこっそりと遠くから試してみるなんてこともできそうにない。

 さらに、そもそものテイミングの成功率がかなり低いようなので、ある程度弱らせてから発動しないと失敗した直後に殺されてしまうかもしれない。

「そ、それなら少し弱めのワイバーンやラプトルとかから始めればいいんじゃないかな?」

 オレは名案が浮かんだと伝えてみたのだが……。

「残念だけどそれはたぶん無理ね。ワイバーンなどは亜竜と言って種族的には全く別ものだと言われているから……」

 と否定されてしまう。
 まぁでも、チャンスがあれば試すぐらいはしてみるか。

 しかし、これでオレはようやく覚悟を決めた。

「わかったよ……それならオレ、母さんみたいな強い冒険者になる! そして冒険者になったら絶対に母さんと同じA級になって……いつかドラゴンを従えてみせる!」

 それを聞いた母さんは一瞬驚き、そして嬉しそうに笑みを浮かべた。

「そう、冒険者に……わかったわ! じゃぁ私が鍛えてあげる! お爺ちゃん直伝の槍術を叩き込んであげるから覚悟するのよ!」

 と言って、今度はちょっと怖い笑みを浮かべて微笑んだ。

 あれ? なんか腕まくりして「よし! それなら明日から猛特訓よ!」とか言って、気合いを入れまくっている。その顔に見たこともないような怖い笑みを浮かべて……。

 あれ? あれ? 何か触れてはいけないスイッチを押してしまった気がするのは、気のせいだろうか? き、気のせいであって欲しいなぁ~……。

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