9 / 107
第一章 前半
第9話:どこ村?
しおりを挟む
冒険者ギルド二階にある広い会議室で、講義が始まるのを待っていた。
ちなみにカリンとはもう別れたのだが、さっき冒険者ギルドに着くと上司と思われるギルド職員が現れ、いきなりゲンコツをくらって引きずられていった。
どうもオレを待っていたせいで遅刻したようなのだが、いったい何をしているのだか……。
しかも、昨日オレが頼んだ初心者講習の申し込みを忘れていたようで、お説教をコンコンとされていた。
すぐにその上司が特別に手続きをしてくれたので助かったが……。
その後、別れ際にその上司と思われるギルド職員から「カリンをよろしくお願いします」と頭を下げられ、普通よろしくお願いするのは冒険者のオレの方なのでは? と思ったが、空気を読んで頷いておいた。
受付担当はもうカリンで決定なようだが、まだ一つも依頼を受けていないのに不安な気持ちでいっぱいなのは何故だろう……。
などと考えていると、ギルド職員が入ってきて講義が始まった。
今回の初心者講習、オレ以外には同郷っぽい三人組の男たちだけのようだ。
歳はオレのすこし上ぐらいだろうか。
思ったよりすくないな。初心者講習は五日に一度行われているようだし、こんなものなのか。
そんな風に納得しかけたところで、勢いよく扉が開かれた。
「「すみません! 遅れちゃいました! ……にゃ」」
そう言って部屋に飛び込んできたのは、二人の女の子。
「まったく……冒険者にとって時間を守るということはすごく大事なことなんですよ? 今後このようなことは許されませんので気をつけるように」
「「はい! わかりました! ……にゃ」」
可愛いというより綺麗と言った方が似合う、切れ長の目をしたそっくりな二人。
ここまで瓜二つなら間違いなく双子だろう。
その双子はもう一度すみませんと謝ると、すこし恥ずかしそうにしながらオレの前の席に座った。
そして……オレの目の前には綺麗な純白の髪にネコミミがちょこんと二組並んで揺れていた。
とってつけたような「……にゃ」って語尾も気になるが、転生して初めて見る他種族ということの方が気になった。
この地方都市ドアラは辺境なので獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人はあまりいないと聞いていたので、猫耳をつけた獣人にちょっと興奮するオレだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
講義の内容は、昨日読んだ冊子そのままだった。
冊子を渡しただけだと読まない奴が多いのかもしれない。
オレも前世では取扱説明書などは困ってから開くタイプだったし気持ちはわかる。
だけど冒険者は命懸けだ。
知らなかったと後悔したくないので、冊子はすべて目を通していた。
だから全部知っていることばかりではあったけど、慢心して手を抜かないように気をつけよう。
「それではこれで講義は終了です。準備ができた人から鍛錬場に移動してください。あと、すぐに実技が始まりますので自前の装備がある人は用意してから向かうように」
講師の職員はそう告げると、さっさと先に部屋を出ていってしまった。
特に着替える必要はないので、オレもさっさと鍛錬場に行こうと立ち上がる。
すると、そこへ三人組の男たちが寄ってきて前に座っている双子の獣人に声をかけた。
ちょうど通路を防がれた形になったので、どうしようかと見守っていると……。
「なぁなぁ。お前ら獣人だろ? 獣人は戦闘能力高いってのは本当か?」
「どうだ? 俺たちとパーティー組まないか? 俺たちは村じゃ結構鳴らしてたんだ。損はさせないぜ?」
「ちょうど五人だしいいだろ? お前ら美人だし俺たちがいろいろと面倒みてやってもいいぜ?」
下心が丸見えだな……。
ただでさえチンピラのような風貌なのにニタニタしていて小悪党感がハンパない。
「結構よ。どうせパーティー組むなら後ろの強そうな男の子の方が一〇〇万倍マシよ……にゃ」
最後に「……にゃ」つけるのはなに? ポリシー?
いや、それよりなんか飛び火してきたぞ。
「まぁなんだ。断られたんなら諦めなよ」
話を振られて黙ってるのもなんなのでそう言うと、今度は矛先をオレに変えて声を荒げた。
「なんだーお前はぁ? おちょくってんのか!」
「ああぁん!? どこ村のもんだよ!」
どこ村って……中学生かよ……。
「喧嘩なら買ってやんぞ!」
売ってんのそっちだから。こっち売ってないから……。
「あぁ、面倒くさいなぁ……」
なにか昨日から色々と鬱憤が溜まっていたようで、気付けばそう呟いてしまっていた。なんの鬱憤だろうね。
まぁでも、もういいや。ちょっとだけ痛い目にあってもらうか。
そう思った時だった。
「君たちさ~元気あり余ってるみたいだねぇ。まぁ俺的にはそんなことさぁ、心底どうでもいいんだけどさぁ。俺さぁ、今日約束あるからさっさと実技指導終わらせたいんだ。だから、とっとと鍛錬場に移動しないと力づくで連れてっちゃうよ?」
いつの間にか扉にもたれるように立っていた男が、言い終わると同時に尋常じゃない殺気を放ってきた。
「「「ひぃやっ!?」」」
「「くっ!? ……にゃ」」
男達が情けなく短い悲鳴をあげて蹲り、双子は何とか耐えるが苦悶の声をあげる。
双子の語尾を徹底するその姿に若干感動を覚えつつ、オレも母さんに迫る殺気にちょっと驚いた。
オレはほら……母さんとの地獄の特訓で慣れてるから……。
そんな強烈な殺気に感心しつつ男をよく見てみると、胸元にゴールドのギルドカードがぶら下がっていた。
ということはA級冒険者か。
「すみません。すぐに移動しますのでー」
オレは頭をさげて謝ると、先に鍛錬場に移動することにした。
逃げるが勝ち。君子危うきに近寄らず。
「お? いったい何者だ? ……ちょっと軽く試して見るか」
背後から何かいや~な言葉が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだと現実逃避しつつ、足早にその場を後にした。
ちなみにカリンとはもう別れたのだが、さっき冒険者ギルドに着くと上司と思われるギルド職員が現れ、いきなりゲンコツをくらって引きずられていった。
どうもオレを待っていたせいで遅刻したようなのだが、いったい何をしているのだか……。
しかも、昨日オレが頼んだ初心者講習の申し込みを忘れていたようで、お説教をコンコンとされていた。
すぐにその上司が特別に手続きをしてくれたので助かったが……。
その後、別れ際にその上司と思われるギルド職員から「カリンをよろしくお願いします」と頭を下げられ、普通よろしくお願いするのは冒険者のオレの方なのでは? と思ったが、空気を読んで頷いておいた。
受付担当はもうカリンで決定なようだが、まだ一つも依頼を受けていないのに不安な気持ちでいっぱいなのは何故だろう……。
などと考えていると、ギルド職員が入ってきて講義が始まった。
今回の初心者講習、オレ以外には同郷っぽい三人組の男たちだけのようだ。
歳はオレのすこし上ぐらいだろうか。
思ったよりすくないな。初心者講習は五日に一度行われているようだし、こんなものなのか。
そんな風に納得しかけたところで、勢いよく扉が開かれた。
「「すみません! 遅れちゃいました! ……にゃ」」
そう言って部屋に飛び込んできたのは、二人の女の子。
「まったく……冒険者にとって時間を守るということはすごく大事なことなんですよ? 今後このようなことは許されませんので気をつけるように」
「「はい! わかりました! ……にゃ」」
可愛いというより綺麗と言った方が似合う、切れ長の目をしたそっくりな二人。
ここまで瓜二つなら間違いなく双子だろう。
その双子はもう一度すみませんと謝ると、すこし恥ずかしそうにしながらオレの前の席に座った。
そして……オレの目の前には綺麗な純白の髪にネコミミがちょこんと二組並んで揺れていた。
とってつけたような「……にゃ」って語尾も気になるが、転生して初めて見る他種族ということの方が気になった。
この地方都市ドアラは辺境なので獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人はあまりいないと聞いていたので、猫耳をつけた獣人にちょっと興奮するオレだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
講義の内容は、昨日読んだ冊子そのままだった。
冊子を渡しただけだと読まない奴が多いのかもしれない。
オレも前世では取扱説明書などは困ってから開くタイプだったし気持ちはわかる。
だけど冒険者は命懸けだ。
知らなかったと後悔したくないので、冊子はすべて目を通していた。
だから全部知っていることばかりではあったけど、慢心して手を抜かないように気をつけよう。
「それではこれで講義は終了です。準備ができた人から鍛錬場に移動してください。あと、すぐに実技が始まりますので自前の装備がある人は用意してから向かうように」
講師の職員はそう告げると、さっさと先に部屋を出ていってしまった。
特に着替える必要はないので、オレもさっさと鍛錬場に行こうと立ち上がる。
すると、そこへ三人組の男たちが寄ってきて前に座っている双子の獣人に声をかけた。
ちょうど通路を防がれた形になったので、どうしようかと見守っていると……。
「なぁなぁ。お前ら獣人だろ? 獣人は戦闘能力高いってのは本当か?」
「どうだ? 俺たちとパーティー組まないか? 俺たちは村じゃ結構鳴らしてたんだ。損はさせないぜ?」
「ちょうど五人だしいいだろ? お前ら美人だし俺たちがいろいろと面倒みてやってもいいぜ?」
下心が丸見えだな……。
ただでさえチンピラのような風貌なのにニタニタしていて小悪党感がハンパない。
「結構よ。どうせパーティー組むなら後ろの強そうな男の子の方が一〇〇万倍マシよ……にゃ」
最後に「……にゃ」つけるのはなに? ポリシー?
いや、それよりなんか飛び火してきたぞ。
「まぁなんだ。断られたんなら諦めなよ」
話を振られて黙ってるのもなんなのでそう言うと、今度は矛先をオレに変えて声を荒げた。
「なんだーお前はぁ? おちょくってんのか!」
「ああぁん!? どこ村のもんだよ!」
どこ村って……中学生かよ……。
「喧嘩なら買ってやんぞ!」
売ってんのそっちだから。こっち売ってないから……。
「あぁ、面倒くさいなぁ……」
なにか昨日から色々と鬱憤が溜まっていたようで、気付けばそう呟いてしまっていた。なんの鬱憤だろうね。
まぁでも、もういいや。ちょっとだけ痛い目にあってもらうか。
そう思った時だった。
「君たちさ~元気あり余ってるみたいだねぇ。まぁ俺的にはそんなことさぁ、心底どうでもいいんだけどさぁ。俺さぁ、今日約束あるからさっさと実技指導終わらせたいんだ。だから、とっとと鍛錬場に移動しないと力づくで連れてっちゃうよ?」
いつの間にか扉にもたれるように立っていた男が、言い終わると同時に尋常じゃない殺気を放ってきた。
「「「ひぃやっ!?」」」
「「くっ!? ……にゃ」」
男達が情けなく短い悲鳴をあげて蹲り、双子は何とか耐えるが苦悶の声をあげる。
双子の語尾を徹底するその姿に若干感動を覚えつつ、オレも母さんに迫る殺気にちょっと驚いた。
オレはほら……母さんとの地獄の特訓で慣れてるから……。
そんな強烈な殺気に感心しつつ男をよく見てみると、胸元にゴールドのギルドカードがぶら下がっていた。
ということはA級冒険者か。
「すみません。すぐに移動しますのでー」
オレは頭をさげて謝ると、先に鍛錬場に移動することにした。
逃げるが勝ち。君子危うきに近寄らず。
「お? いったい何者だ? ……ちょっと軽く試して見るか」
背後から何かいや~な言葉が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだと現実逃避しつつ、足早にその場を後にした。
77
あなたにおすすめの小説
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる