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第一章 前半
第10話:実技試験
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今回の実技試験を受け持つのはA級冒険者の『ジョゼ』さん。
なんでも彼はA級冒険者パーティー『紅い狐』のリーダーで有名人らしい。
思わず懐かしい麺類を食べたくなったのは置いておくとして、街で有数の実力者パーティーということなら先ほどの殺気も納得できるというものだ。
と、さっき鍛錬場への移動中に会ったカリンが聞きもしないのに色々と教えてくれた。
「ったく! 遅えぞお前ら!!」
「「「す、すみませんっ!!」」」
遅れてきた三人が整列してようやく全員揃った。
「それじゃぁ今から実技試験を始める! この鍛錬場は普段はただの広場だが、今はそこの魔導具に魔石をセットして強力なダメージ軽減の結界をかけてある。さすがに首でも飛ばされればどうしようもねぇが、頭と心臓が無事なら何かあってもそこの女がだいたい治してくれる。安心しろ!」
そう言って後ろに控えている女性を顎で紹介する。
「どもーよろしくー」
その女性はあまりやる気が無いような態度で、気だるそうに手を振っていた。
正直、安心できないのだが空気を読んで黙っておく……。
それからオレたちはジョゼさんの指示に従い、それぞれ自分の武器を使って構えたり素振りしたりさせられた。
ちなみにオレは、なんかジョゼさんの視線が異様に厳しかったので、ちょっとだけ手を抜いて軽めに型を披露しておいた。
その後、受講生同士で模擬戦を行ったのだが、双子が短剣二刀流でそれぞれ相手をした男を終始圧倒。これにはオレもちょっと驚いた。
そして最後にオレと残りの男。
男は威勢よく飛び込んできたのだが隙だらけだった。さっき絡んできたのでちょっと痛い目にでもあわせるかとも思ったが、あまりにもお粗末だったので冷めてしまった。
オレは最初の一撃を絡め取って武器を奪うと、そのまま槍の石突きで軽くこつき、五秒ほどでさくっと終わらせた。
今回オレたちは全員前衛だったから模擬戦を行ったが、遠隔武器などを使用する後衛の場合は的を用意して射撃精度や有効射程を確認したり、魔法職の場合は魔法の威力、効果、発動までにかかった時間などを測定することで確認するそうだ。
「だいたいお前らの実力はわかった! この判定でギルドには報告しておく。依頼の斡旋はこの判定にもとづいて行われるからそのつもりにしておけ! と、本来ならこれで終了なんだが……そこのお前!」
ん? オレが指さされてる?
後ろを振り向いて見るがもちろん誰もいない。
「お前だお前。なに振り向いてんだ」
「はい? オレですか?」
「そうだ。コウガ、お前なにもんだ? お前だけ実力が読めねぇ。ってことで……お前、直接オレと模擬戦してみないか?」
「え? してみないですけど?」
とりあえず理由もわからないし断っておく。
「…………」
「…………」
なんだ……この変な空気……。
「こいつ面白れぇな! 気に入った! 模擬戦だ!」
いや、どこに気に入る要素が……?
まぁさっきあまりにも一瞬で終わって不完全燃焼だったし、母さん以外のA級冒険者がどんなものなのか、正直言うとちょっと興味はある。
「でも、拒否権ないなら聞かないで欲しい……」
「おい……聞こえてるからな……」
思わず心の声が漏れてしまったが、とりあえず耳は母さんなみのようだ……気をつけよう。
模擬戦の準備をしていると、鍛錬場の周りがなんだか騒がしい。
「なんだ?」
どうやら初心者講習が始まる時に鍛錬場を追い出された冒険者たちが、周りで見学しながら実技指導が終わるのを待っていたようだ。
「なんか面白いことになってるぞ! あの新人と講師で模擬戦だとよ」
「講師と直接模擬戦とか珍しいな」
「講師ってあの『紅い狐』の狂犬ジョゼだろ? 新人相手に模擬戦って話にならねぇだろ」
「でもさぁ、講師が直接模擬戦するのって実力が測りきれない時だけじゃないの? 初心者講習では初めて見たんだけど?」
「え? ランクアップ試験じゃないのかよ」
何かいろいろ言われて注目されているようだ。ちょっと緊張してきた……。
だけど、気にしてばかりもいられない。
相手はA級冒険者だ。ここからは集中しなければ……。
大きく息を吐き出し、不要な情報を意識から追い出すと、必要な情報だけを残していく。
母さんを相手すると思って本気でいこう。
準備が終わったので、オレとジョゼさんは中央に歩み出て対峙する。
ジョゼさんは凄腕のバスタードソードの使い手だ。
しかもそのバスタードソードはカリン情報。
あれ? ……魔剣とか反則じゃないのか?
ちなみにバスタードソードとは、片手持ちのロングソードの剣の部分を少し長くし、柄の部分を両手で握れるようにした片手でも両手でも使える剣だ。
母さんいわく、一見良いとこ取りで強そうに見えるがどっちつかずで扱いが難しいらしい。
憧れてバスタードソードを購入したものの、結局両手剣のツーハンデッドソードや片手剣のロングソードと盾のオーソドックスなスタイルに落ち着く者が多いそうだ。
と……余計なことを考えるな……集中集中……。
「それじゃぁ早速おっ始めるか。本気でこいよ!」
「はい! よろしくお願いします!」
模擬戦の礼儀は母さんに嫌というほど叩き込まれている。
手を抜いたら相手に失礼だから、最初から全力でいかせてもらおう。
なんでも彼はA級冒険者パーティー『紅い狐』のリーダーで有名人らしい。
思わず懐かしい麺類を食べたくなったのは置いておくとして、街で有数の実力者パーティーということなら先ほどの殺気も納得できるというものだ。
と、さっき鍛錬場への移動中に会ったカリンが聞きもしないのに色々と教えてくれた。
「ったく! 遅えぞお前ら!!」
「「「す、すみませんっ!!」」」
遅れてきた三人が整列してようやく全員揃った。
「それじゃぁ今から実技試験を始める! この鍛錬場は普段はただの広場だが、今はそこの魔導具に魔石をセットして強力なダメージ軽減の結界をかけてある。さすがに首でも飛ばされればどうしようもねぇが、頭と心臓が無事なら何かあってもそこの女がだいたい治してくれる。安心しろ!」
そう言って後ろに控えている女性を顎で紹介する。
「どもーよろしくー」
その女性はあまりやる気が無いような態度で、気だるそうに手を振っていた。
正直、安心できないのだが空気を読んで黙っておく……。
それからオレたちはジョゼさんの指示に従い、それぞれ自分の武器を使って構えたり素振りしたりさせられた。
ちなみにオレは、なんかジョゼさんの視線が異様に厳しかったので、ちょっとだけ手を抜いて軽めに型を披露しておいた。
その後、受講生同士で模擬戦を行ったのだが、双子が短剣二刀流でそれぞれ相手をした男を終始圧倒。これにはオレもちょっと驚いた。
そして最後にオレと残りの男。
男は威勢よく飛び込んできたのだが隙だらけだった。さっき絡んできたのでちょっと痛い目にでもあわせるかとも思ったが、あまりにもお粗末だったので冷めてしまった。
オレは最初の一撃を絡め取って武器を奪うと、そのまま槍の石突きで軽くこつき、五秒ほどでさくっと終わらせた。
今回オレたちは全員前衛だったから模擬戦を行ったが、遠隔武器などを使用する後衛の場合は的を用意して射撃精度や有効射程を確認したり、魔法職の場合は魔法の威力、効果、発動までにかかった時間などを測定することで確認するそうだ。
「だいたいお前らの実力はわかった! この判定でギルドには報告しておく。依頼の斡旋はこの判定にもとづいて行われるからそのつもりにしておけ! と、本来ならこれで終了なんだが……そこのお前!」
ん? オレが指さされてる?
後ろを振り向いて見るがもちろん誰もいない。
「お前だお前。なに振り向いてんだ」
「はい? オレですか?」
「そうだ。コウガ、お前なにもんだ? お前だけ実力が読めねぇ。ってことで……お前、直接オレと模擬戦してみないか?」
「え? してみないですけど?」
とりあえず理由もわからないし断っておく。
「…………」
「…………」
なんだ……この変な空気……。
「こいつ面白れぇな! 気に入った! 模擬戦だ!」
いや、どこに気に入る要素が……?
まぁさっきあまりにも一瞬で終わって不完全燃焼だったし、母さん以外のA級冒険者がどんなものなのか、正直言うとちょっと興味はある。
「でも、拒否権ないなら聞かないで欲しい……」
「おい……聞こえてるからな……」
思わず心の声が漏れてしまったが、とりあえず耳は母さんなみのようだ……気をつけよう。
模擬戦の準備をしていると、鍛錬場の周りがなんだか騒がしい。
「なんだ?」
どうやら初心者講習が始まる時に鍛錬場を追い出された冒険者たちが、周りで見学しながら実技指導が終わるのを待っていたようだ。
「なんか面白いことになってるぞ! あの新人と講師で模擬戦だとよ」
「講師と直接模擬戦とか珍しいな」
「講師ってあの『紅い狐』の狂犬ジョゼだろ? 新人相手に模擬戦って話にならねぇだろ」
「でもさぁ、講師が直接模擬戦するのって実力が測りきれない時だけじゃないの? 初心者講習では初めて見たんだけど?」
「え? ランクアップ試験じゃないのかよ」
何かいろいろ言われて注目されているようだ。ちょっと緊張してきた……。
だけど、気にしてばかりもいられない。
相手はA級冒険者だ。ここからは集中しなければ……。
大きく息を吐き出し、不要な情報を意識から追い出すと、必要な情報だけを残していく。
母さんを相手すると思って本気でいこう。
準備が終わったので、オレとジョゼさんは中央に歩み出て対峙する。
ジョゼさんは凄腕のバスタードソードの使い手だ。
しかもそのバスタードソードはカリン情報。
あれ? ……魔剣とか反則じゃないのか?
ちなみにバスタードソードとは、片手持ちのロングソードの剣の部分を少し長くし、柄の部分を両手で握れるようにした片手でも両手でも使える剣だ。
母さんいわく、一見良いとこ取りで強そうに見えるがどっちつかずで扱いが難しいらしい。
憧れてバスタードソードを購入したものの、結局両手剣のツーハンデッドソードや片手剣のロングソードと盾のオーソドックスなスタイルに落ち着く者が多いそうだ。
と……余計なことを考えるな……集中集中……。
「それじゃぁ早速おっ始めるか。本気でこいよ!」
「はい! よろしくお願いします!」
模擬戦の礼儀は母さんに嫌というほど叩き込まれている。
手を抜いたら相手に失礼だから、最初から全力でいかせてもらおう。
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
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