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第一章 前半
第24話:最期にもう一度……
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◆◇◆◇ リリー視点 ◆◇◆◇
決死の覚悟で挑んだ魔獣との戦いでしたが、徐々に形勢は魔獣に傾いていきました。
最初からスタミナを無視した全力。【ギフト:共鳴の舞】の能力を最大限に使ってようやく均衡を保てていたような状態だったので当然の結果ではあるのでしょう。
私とリリーが放つ斬撃はそのほとんどが躱され、稀に入る攻撃も鋼のような剛毛によってはじかれほとんどダメージも与えられません。
私たちが唯一勝てると踏んでいたスピードですら、魔獣ゲルロスはその巨体に似つかわしくない速度で上回っていました。結界で弱体化されていてこれなのですから、神獣様が力をお貸しして下さらなければ獣人の里は滅んでいたことでしょう。
「さすがにちょっとだけ疲れてきましたね。ちょっとだけだけど……」
ルルーが強がっていますが、もう私もルルーも限界が近いことは明らかでした。
最初は敵と見定めて本気で反撃してきた魔獣ゲルロスでしたが、すこし前からは明らかに手を抜いて遊んでいるように感じます。
恐らくあの陰湿な目からして、私たちをいたぶりつつ、どう嬲り殺そうかと考えてでもいるのでしょう。
そして……とうとう均衡が崩れだしました。
私の斬撃がたいして効かないとわかった魔獣が、急所を狙っているのにもかかわらず避けもせずに踏み込んできたのです。
このまま攻撃するのは危険だと判断した私は、舞うような足さばきで躱そうとしました。だけど魔獣ゲルロスは、だらしなく涎のように垂らした炎をブレスとして吐きかけてきたのです。
「ブレスよ!! リリー避けて!」
ブレスを使うのは情報として知っていたはずなのに、ずっと接近戦だけで戦っていたのでいつの間にか警戒が薄くなっていました。
「きゃっ!? 痛ぅっ!」
ルルーのお陰で何とか直撃は免れたものの、左腕に大きな火傷を負ってしまいました。
「くっ!?」
しかも、私が激痛で鈍くなったのを庇おうとしたせいで、今度はルルーが爪を受け流し損ねて背中に傷を負ってしまいました。
その時でした。
キィィィァァァァァーーー!!
何かが砕け散るような音と、空間が割れるような感覚、そして引き裂かれる悲鳴のような音が響き渡ったのです。
「これはっ!? もしかして結界が!?」
ルルーも気付いたようです。
「し、信じられないですが、そのようですね……結界が破壊されています!!」
私たちは結界の中に入れるだけじゃなく、結界の存在を感じることができるのですが……試練の地に入ってからずっと感じていたものがなくなっていました。
「リリー! ど、どうしよ!?」
「悔しいですが、どうすることも出来ません……せめて私たちが戦ってる間に、皆が避難出来るようにできるだけ時間を稼ぎましょう! さすがに族長たちなら結界が破壊されたことに気付くはずです!!」
そうは言っても、もう体力の限界はとっくに超えています。
稼げる時間はわずかでしょう。
爪をかわし、牙をかわし、時折放たれる炎のブレスをかわし続けて、なんとか五分ほどの時間は稼げたでしょうか。
でも……ここまでのようです。
「ねぇリリー、コウガ恰好よかったよね~」
最期の時が近いことを悟ったのか、ルルーが珍しく「姉さん」と呼びながら軽口を叩いてきました。
「そうですね! ルルーなんて一目惚れだったじゃない」
私も昔の愛称で軽口を返しますが、さすがにもう限界です。
最期の時が間近に迫り、いつもより気が大きくなっているようですね。
しかし……獣人の性でしょうか?
私もルルーも初心者講習会で教官と戦うその姿に、その強さに心を奪われてしまいました。
「「ふふふ。もっとこんな話していたいけど……でも……もうお互い限界みたいね」」
すでに動くたびに悲鳴をあげている足に、さらに鞭をうってなんとかゲルロスから距離を取ると、私たちは寄り添い、手を取り合って目を瞑りました。
今できることはすべてやりました。
やり残したことはいっぱいあるけど、そろそろ楽にさせてもらおうと思います。
我ながらよく頑張ったんじゃないかな。なによりもう……限界なの……。
「「あぁ……コウガに……もう一度会いたかったな……」」
ゴォォォ……!
魔獣もとどめを刺すつもりで本気のブレスを放ったのでしょう。
眼を瞑っていても炎が迫ってくるのが感じ取れました。
しかしその刹那……一陣の風が吹き抜けました。
私たちを焼き尽くすはずだった炎は前方で何かに阻まれ、側を熱風が吹き抜けていきます。
「「……え?」」
何が起こったのか分からず、死ぬつもりで閉じた眼をもう一度開くのですが……そこには見慣れぬ黒い革鎧に身を包んだ男の人の背中がありました。
「あ~……できれば、さっきみたいな会話は本人のいない所でやってくれないかな。登場しにくいじゃないか……」
しかし聞こえたその声は、この一ヶ月を共に過ごしたあの人の声でした。
そう……最期にもう一度会いたかった人の声です。
「「こ、コウガ!? なぜあなたがここに!?」」
「へ~、語尾に『……にゃ』付けないで話すこともあるんだな?」
そう言っておどけるその人の顔は、残念なことに涙で滲んで見えませんでした。
決死の覚悟で挑んだ魔獣との戦いでしたが、徐々に形勢は魔獣に傾いていきました。
最初からスタミナを無視した全力。【ギフト:共鳴の舞】の能力を最大限に使ってようやく均衡を保てていたような状態だったので当然の結果ではあるのでしょう。
私とリリーが放つ斬撃はそのほとんどが躱され、稀に入る攻撃も鋼のような剛毛によってはじかれほとんどダメージも与えられません。
私たちが唯一勝てると踏んでいたスピードですら、魔獣ゲルロスはその巨体に似つかわしくない速度で上回っていました。結界で弱体化されていてこれなのですから、神獣様が力をお貸しして下さらなければ獣人の里は滅んでいたことでしょう。
「さすがにちょっとだけ疲れてきましたね。ちょっとだけだけど……」
ルルーが強がっていますが、もう私もルルーも限界が近いことは明らかでした。
最初は敵と見定めて本気で反撃してきた魔獣ゲルロスでしたが、すこし前からは明らかに手を抜いて遊んでいるように感じます。
恐らくあの陰湿な目からして、私たちをいたぶりつつ、どう嬲り殺そうかと考えてでもいるのでしょう。
そして……とうとう均衡が崩れだしました。
私の斬撃がたいして効かないとわかった魔獣が、急所を狙っているのにもかかわらず避けもせずに踏み込んできたのです。
このまま攻撃するのは危険だと判断した私は、舞うような足さばきで躱そうとしました。だけど魔獣ゲルロスは、だらしなく涎のように垂らした炎をブレスとして吐きかけてきたのです。
「ブレスよ!! リリー避けて!」
ブレスを使うのは情報として知っていたはずなのに、ずっと接近戦だけで戦っていたのでいつの間にか警戒が薄くなっていました。
「きゃっ!? 痛ぅっ!」
ルルーのお陰で何とか直撃は免れたものの、左腕に大きな火傷を負ってしまいました。
「くっ!?」
しかも、私が激痛で鈍くなったのを庇おうとしたせいで、今度はルルーが爪を受け流し損ねて背中に傷を負ってしまいました。
その時でした。
キィィィァァァァァーーー!!
何かが砕け散るような音と、空間が割れるような感覚、そして引き裂かれる悲鳴のような音が響き渡ったのです。
「これはっ!? もしかして結界が!?」
ルルーも気付いたようです。
「し、信じられないですが、そのようですね……結界が破壊されています!!」
私たちは結界の中に入れるだけじゃなく、結界の存在を感じることができるのですが……試練の地に入ってからずっと感じていたものがなくなっていました。
「リリー! ど、どうしよ!?」
「悔しいですが、どうすることも出来ません……せめて私たちが戦ってる間に、皆が避難出来るようにできるだけ時間を稼ぎましょう! さすがに族長たちなら結界が破壊されたことに気付くはずです!!」
そうは言っても、もう体力の限界はとっくに超えています。
稼げる時間はわずかでしょう。
爪をかわし、牙をかわし、時折放たれる炎のブレスをかわし続けて、なんとか五分ほどの時間は稼げたでしょうか。
でも……ここまでのようです。
「ねぇリリー、コウガ恰好よかったよね~」
最期の時が近いことを悟ったのか、ルルーが珍しく「姉さん」と呼びながら軽口を叩いてきました。
「そうですね! ルルーなんて一目惚れだったじゃない」
私も昔の愛称で軽口を返しますが、さすがにもう限界です。
最期の時が間近に迫り、いつもより気が大きくなっているようですね。
しかし……獣人の性でしょうか?
私もルルーも初心者講習会で教官と戦うその姿に、その強さに心を奪われてしまいました。
「「ふふふ。もっとこんな話していたいけど……でも……もうお互い限界みたいね」」
すでに動くたびに悲鳴をあげている足に、さらに鞭をうってなんとかゲルロスから距離を取ると、私たちは寄り添い、手を取り合って目を瞑りました。
今できることはすべてやりました。
やり残したことはいっぱいあるけど、そろそろ楽にさせてもらおうと思います。
我ながらよく頑張ったんじゃないかな。なによりもう……限界なの……。
「「あぁ……コウガに……もう一度会いたかったな……」」
ゴォォォ……!
魔獣もとどめを刺すつもりで本気のブレスを放ったのでしょう。
眼を瞑っていても炎が迫ってくるのが感じ取れました。
しかしその刹那……一陣の風が吹き抜けました。
私たちを焼き尽くすはずだった炎は前方で何かに阻まれ、側を熱風が吹き抜けていきます。
「「……え?」」
何が起こったのか分からず、死ぬつもりで閉じた眼をもう一度開くのですが……そこには見慣れぬ黒い革鎧に身を包んだ男の人の背中がありました。
「あ~……できれば、さっきみたいな会話は本人のいない所でやってくれないかな。登場しにくいじゃないか……」
しかし聞こえたその声は、この一ヶ月を共に過ごしたあの人の声でした。
そう……最期にもう一度会いたかった人の声です。
「「こ、コウガ!? なぜあなたがここに!?」」
「へ~、語尾に『……にゃ』付けないで話すこともあるんだな?」
そう言っておどけるその人の顔は、残念なことに涙で滲んで見えませんでした。
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