【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 前半

第23話:それぞれの思惑

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 ◆◇◆◇ 変わってルルー視点 ◆◇◆◇


 私たちは試練の地に足を踏み入れ、今は気配を消しながら祠に向かっています。
 リリーは囮になって犠牲になるつもりだと思いますが、そんなことは私がさせません。絶対に。

 結局私たちに許された修行の時間はひと月ほどでしたが、コウガのお陰で以前よりかなり強くなっているはず。
 リリーを騙すようで悪いですが、何としてもここは二人で魔獣を倒すのです!


 とうとう魔獣ゲルロスを見つけました。
 大きさは体高三メートルを超え、その二つの顔を醜く歪ませ、口から燃え盛る炎が涎のように垂れ堕ちています。

 結界によって力はかなり弱められているはずなのに足が震えます。
 だけど……ここで逃げるわけにはいきません!

「ルルー! ここでお別れです! 絶対に……絶対に加護を受けて、生きてここを出るのですよ!」

 リリーが覚悟を決めて魔獣に向かって走り出しますが……そうはさせません!

「え!? ルルー!? 何をしているの!!」

 私がリリーと並んで走り出したことに驚きの声をあげますが、私の考えが読めないなんて双子失格ですね。

「リリーは相変わらず根が正直すぎますね。何回私に騙されたら気が済むんです?」

 私は昔いたずらを何度も成功させたことを思い出しながら、こう宣言するのです。

「何も驚くことではありません。最初の予定通り、二人で魔獣を倒すというだけの話です!!」

「もう!! ルルーはこんな大事な時まで!!」

「私を怒りたかったら魔獣に勝って、いくらでも説教してください」

 私の気持ちが変わらないことを悟ったのか、リリーも覚悟を決めたようです。

「わかったわ! 絶対に生き残って説教してあげます! 覚悟していなさい!」

 正直、私たちは助からないかもしれない。

 でも……たとえこれが最後の戦いになるとしても後悔することはないでしょう。
 だって最後まで一緒に戦えるのですから。


 ◆◇◆◇ 戻ってリリー視点 ◆◇◆◇


 ルルーには昔からよくイタズラをされましたが、今までで一番のイタズラを成功させたような、そんな笑顔をしています。
 これは何としても魔獣に勝って説教しなければいけないですね。

 そのためには説教する私も、されるルルーも一緒に生き残らなければ……。

「「それじゃぁ……行く……にゃ!」」

 私たちはギフトを発動し、魔獣に一気に詰め寄ります。

 不意打ちですこしでも有利に始められるようにと背後に回り込んだところ、幸運なことに魔獣はまだ眠ってくれているようです。
 きっと私たちの日頃の行いが良いからですね。

 私は油断なく近づくと、お借りした武器で渾身の一撃をお見舞いします。

 各種族にわけて受け継がれていた秘宝級の武器の一つ。
 私は短剣二刀流なのでもう一つ同じランクの短剣武器をお借りしましたが、そちらはルルーに渡してあります。

 なので、もう片方の短剣はいつも使っているものです。

「油断しすぎ……にゃ!」

 小さく呟きながら放った渾身の一撃でした。
 秘宝級の武器での一撃ですから、すくなくないダメージを与えられる……はずでした。


 ガキンッッッ!!


「う、うそっ!? 折れた!?」

 秘宝級の武器が一撃で折れるなんてありえない!
 なにかおかしいっ!?

 違和感を感じながらもいつもの短剣で追撃を放ちますが、こちらは武器のランクも低く、勢いも乗っていなかったため、ほとんどダメージが与えれません。

「スイッチする……にゃ!」

 ルルーに場所を譲って攻撃を任せると、私は牽制にまわります。
 魔獣は完全に起きてしまいましたが、うまく戦況をコントロールすることに成功し、体勢を立て直す前に今度はルルーが渾身の一撃を放ちました。

 しかし……。


 ガキンッ!!


「また折れた!?」

 今度はルルーが驚く番でした。
 さすがにこれで確信しました。どうやら私は秘宝級の武器の偽物を渡されていたようです。

 私は何故こんな罠に嵌めてくるのかと憤りを感じながらも、ルルーがくるりと回るのに合わせて、今度は私がその隙間を埋めるように近づき一撃を放ちます。
 だけど……二撃目を放つはずの右手に短剣はありません。秘宝級の武器が壊れるなど想定外で予備の武器など持ってきていません。

 ただでさえ勝率の低い戦いなのに、いつもの二刀流で戦うことすらできないとう状況。

 思わず心が折れそうになりますが、勇気を奮い立たせます。
 弱い自分を心の奥にしまい込み、生き残るためにただひたすらルルーと二人で戦い続けました。


 ◆◇◆◇ ゲウロ視点 ◆◇◆◇


「ふふふ。よしよし。予定通り姉妹二人で戦っておるわ」

 私の名はゲウロ。
 手に持つのはカウスがどこからか入手した結界を通り抜けることができるという魔道具だ。
 試すまでどこかで疑っておったのだが問題なく通り抜けることができた。

 これで二人が時間を稼いでいる間に私が加護をさずかることができる!

 口伝として伝えられる神獣の加護の力は強大だ。
 うまく加護を授かったらカウスの奴に何か礼でもせねばなるまい。

 もし、これを私が使って正面から試練を受けていたとしても、間違いなく魔獣に殺されていただろう。

 この一〇〇年、この試練を乗り越えた者はいない。
 優れた能力を持つ白き獣の獣人たちでも成功者が出ないのだから、悔しいが他の獣人族では尚更だ。

 だが、今あの生意気な姉妹は二人で魔獣と戦っている。妹は姉を見捨てて囮にする事も出来ない甘ちゃんだ。
 カウスが予想した通りだ。この隙をつけば加護を受けるのは難しくないはず。

 なんとか無事に祠のある場所へと辿り着いた。
 しかし、祈りを捧げようと祠に近寄ったその時だった。

 持っていた魔道具が砕け散り、まるで空間が悲鳴をあげるような音が響き渡った。

「なっ!? なんだ! 何事だ!?」

 驚き慌てていると、突然背後から声をかけられた。

「ゲウロ様。ここまで本当にありがとうございます。助かりましたよ~」

「カウス!? なぜお前がここにいる!? まさか魔道具をもう一つ持っていたのか?」

「持っていないですよ? ゲウロ様、あなたが結界を壊してくれたので、ここまでこれたんじゃないですか」

 ど、どういうことだ? この男は何を言っている……?

「結界を壊しただと? そんなことになったら、この獣人の里は……」

 混乱していると突然カウスが視界から消え、次の瞬間には耳元から語り掛けてきた。

「この里は……終わってしまいますね~。ゲウロ様には感謝してるんですよ? 早く使い魔を取り戻してこいって最近うるさかったんですから……魔王様・・・がね」

「な、なんだと!? 貴様、カウスではない……げふっ!?」

 カウスの腕が私の胸から生えている光景、それが私が最期に見たものだった。
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