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第一章 前半
第34話:震撼
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「コウガや、非常識にもほどがあるぞ!」
「お、オレは、いたって常識人な冒険者ですよ……?」
すごい考えたんだけど……いい案思いつかなかった。視線が辛い……。
「……もう一回話してくれるかい? それで何だって? 魔王軍五万が侵攻してきたって? しかも、その魔王軍がどこからか現れた金色の竜に蹴散らされて壊滅したと? 期待の新人冒険者だと思っていたけど、痛い新人冒険者の間違いだったのかい?」
今は領主館の執務室で、ドアラ様とギルドマスターに何があったかの説明をしているという状況だ。
ジルのことをそのまま言うわけにはいかないので、立体映像に映し出されていた黄金の竜のせいにすることにした。
「悪いがちょっと、それをそのまま信じろというのは無理がある。わかるよね?」
最初はギルドで報告したんだけど、ギルドマスターに首根っこを掴まれて無言で領主館まで連れてこられた……。
きっとステータス的には反抗出来たのだろうが、オレの危機察知能力が逆らったらダメだと全力で警告してくるので無抵抗でここまで来た。
「に、にわかに信じられない話なのはわかります。でも……魔王軍がいた場所はさっき伝えたじゃないですか。その現場を確認してもらえれば信じてもらえるはずなんです!」
オレは最初に報告した時に魔王軍が展開していた場所も伝えており、ギルドマスターも指示を出して走竜で確認に向かわせてくれている。
ジルが『煉獄の裁き』とかいうドラゴンブレスをぶっ放した跡があるので、一目でわかってもらえるはずだ。
ひどい言われようではあるが、フェアリードラゴンをテイムした実績もあるからか頭ごなしで否定はせず、一応は確認しようとしてくれているだけ感謝するべきなのかもしれない。
ちなみに走竜とは小型の亜竜の一種だ。性格は比較的大人しくタフで体力もあり、トリアデン王国の王国第一騎士団『銀の矛』でも採用されている騎乗生物だ。
ただ、走竜は数がすくない上に育てるのが難しく、国や貴族、ギルドやS級冒険者といった所でしか使われていない。
そのうえ取引に規制がかかっていて商人は所有が認められていないような希少なものなので、このことからもまったく信じていなければ確認のために使ってくれはしなかっただろう。
「まぁまぁ、それは先生の所の調査結果を待てばわかるのですし今はいいでしょう。それよりコウガ君、君が魔族と話したというのは本当なのかい?」
「はい。すこし訂正するなら、話というよりは戦って逃げられました」
この返答にメリーさんの機嫌がまた悪くなり……。
「まったくお前という奴は……魔族と戦うC級冒険者など聞いたことないぞ。しかも逃げたんじゃなくて逃げられたじゃと? 普通C級冒険者で魔族と会ったのなら、無事に逃げ切っただけでも称賛ものなのじゃぞ」
と、また説教と愚痴がはじまる。
メリーさんと会うといつも説教と愚痴を聞いている気がする……。
「そ、それでですね。続きを話してもいいですか? その戦った魔族は『技巧のアモン』とかいう……」
「なにっ!? アモンじゃと!」
話が進まない……。
今度は身を乗り出して怒鳴られた。
「今アモンと言ったのか!? このバカは次から次へと! その名は本当なのじゃな!」
「は、はい、本当にそう名乗っていましたから……」
メリーさん、血管切れて倒れないだろうか……ちょっと心配になるほどだ……。
「何をどうすればそんな大物が出てくるのじゃ……。しかしそうなると、本当に五万の軍が侵攻してきていたのか……?」
「さっきから、ずっと、ずーっと、ずーーーーっと、そう言ってますが……」
「えーい! わかっておるわい!」
オレの口から「技巧のアモン」の名前が出たことで、一気に信憑性があがったようだ。
「デリー! 王都に連絡するのじゃ! 魔王軍に動きがあったと報告しろ!」
領主なら王都直通の魔法郵便が使えるじゃろ! と続けて指示をだす。
「え? せ、先生、確認はよろしいのですか? 明日の夕方には確認を終えて帰ってくるのでは?」
ドアラ様がそう言うと、メリーさんは不確定情報としてでもいいから先に知らせるのだと威圧を放った。いや、こんなところでそんなもん放たないで欲しい……。
「ひっ!? わ、わかりましたって! わかりましたから一般人に威圧を使うのはやめて下さい!!」
トラウマでもあるのだろうか……ドアラ様はメリーさんにかけられている威圧以上に怯えている気がする。
やっぱりこの人に逆らっちゃダメだと、オレは心のメモに書きこんでおくことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日、ギルドから走竜を貸し出されたB級冒険者パーティーが帰ってきた。
オレの証言通りに、広範囲に渡って大地がえぐり取られた跡と、万を超える軍勢が行進したと思われる痕跡を発見したと報告がもたらされた。
しかし、それと同時に衝撃を持って報告されたことがあった。
なんでも、魔王軍の生き残りと思われる約一〇〇〇体ものスケルトンキングが確認されたらしい……ん……?
………………。
…………………………。
……………………………………。
オレとジルがその後一時間ほど街から姿を消していたことも一応補足しておこう。何とは言わないが回収しておいた。
こうして魔王の尖兵が現れたこの出来事は『アデリア大陸』全土を震撼させていくことになった。
獣人の里の事件を端に発したこの魔王軍侵攻は、これから訪れる未来に影を落とし、人々はまだ見ぬ魔王軍の姿に怯えていた。
……のだが……。
どちらかと言うと、ジルがうっかり国や町を破壊しないかに怯えているオレは、正直魔王軍のことよりジルの教育に頭を悩ませていたのは内緒の話だ……。
************************************
ここまでお読み頂きありがとうございます!
ひとまず『第一章 前半』はここまでとなります。
このあとも物語はまだまだ続きます。
というか、盛り上がるのはこれからです! めっちゃ盛り上がります!
閑話的なお話を挟んですぐに『第一章 中盤』を開始いたしますのでお楽しみに!
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「お、オレは、いたって常識人な冒険者ですよ……?」
すごい考えたんだけど……いい案思いつかなかった。視線が辛い……。
「……もう一回話してくれるかい? それで何だって? 魔王軍五万が侵攻してきたって? しかも、その魔王軍がどこからか現れた金色の竜に蹴散らされて壊滅したと? 期待の新人冒険者だと思っていたけど、痛い新人冒険者の間違いだったのかい?」
今は領主館の執務室で、ドアラ様とギルドマスターに何があったかの説明をしているという状況だ。
ジルのことをそのまま言うわけにはいかないので、立体映像に映し出されていた黄金の竜のせいにすることにした。
「悪いがちょっと、それをそのまま信じろというのは無理がある。わかるよね?」
最初はギルドで報告したんだけど、ギルドマスターに首根っこを掴まれて無言で領主館まで連れてこられた……。
きっとステータス的には反抗出来たのだろうが、オレの危機察知能力が逆らったらダメだと全力で警告してくるので無抵抗でここまで来た。
「に、にわかに信じられない話なのはわかります。でも……魔王軍がいた場所はさっき伝えたじゃないですか。その現場を確認してもらえれば信じてもらえるはずなんです!」
オレは最初に報告した時に魔王軍が展開していた場所も伝えており、ギルドマスターも指示を出して走竜で確認に向かわせてくれている。
ジルが『煉獄の裁き』とかいうドラゴンブレスをぶっ放した跡があるので、一目でわかってもらえるはずだ。
ひどい言われようではあるが、フェアリードラゴンをテイムした実績もあるからか頭ごなしで否定はせず、一応は確認しようとしてくれているだけ感謝するべきなのかもしれない。
ちなみに走竜とは小型の亜竜の一種だ。性格は比較的大人しくタフで体力もあり、トリアデン王国の王国第一騎士団『銀の矛』でも採用されている騎乗生物だ。
ただ、走竜は数がすくない上に育てるのが難しく、国や貴族、ギルドやS級冒険者といった所でしか使われていない。
そのうえ取引に規制がかかっていて商人は所有が認められていないような希少なものなので、このことからもまったく信じていなければ確認のために使ってくれはしなかっただろう。
「まぁまぁ、それは先生の所の調査結果を待てばわかるのですし今はいいでしょう。それよりコウガ君、君が魔族と話したというのは本当なのかい?」
「はい。すこし訂正するなら、話というよりは戦って逃げられました」
この返答にメリーさんの機嫌がまた悪くなり……。
「まったくお前という奴は……魔族と戦うC級冒険者など聞いたことないぞ。しかも逃げたんじゃなくて逃げられたじゃと? 普通C級冒険者で魔族と会ったのなら、無事に逃げ切っただけでも称賛ものなのじゃぞ」
と、また説教と愚痴がはじまる。
メリーさんと会うといつも説教と愚痴を聞いている気がする……。
「そ、それでですね。続きを話してもいいですか? その戦った魔族は『技巧のアモン』とかいう……」
「なにっ!? アモンじゃと!」
話が進まない……。
今度は身を乗り出して怒鳴られた。
「今アモンと言ったのか!? このバカは次から次へと! その名は本当なのじゃな!」
「は、はい、本当にそう名乗っていましたから……」
メリーさん、血管切れて倒れないだろうか……ちょっと心配になるほどだ……。
「何をどうすればそんな大物が出てくるのじゃ……。しかしそうなると、本当に五万の軍が侵攻してきていたのか……?」
「さっきから、ずっと、ずーっと、ずーーーーっと、そう言ってますが……」
「えーい! わかっておるわい!」
オレの口から「技巧のアモン」の名前が出たことで、一気に信憑性があがったようだ。
「デリー! 王都に連絡するのじゃ! 魔王軍に動きがあったと報告しろ!」
領主なら王都直通の魔法郵便が使えるじゃろ! と続けて指示をだす。
「え? せ、先生、確認はよろしいのですか? 明日の夕方には確認を終えて帰ってくるのでは?」
ドアラ様がそう言うと、メリーさんは不確定情報としてでもいいから先に知らせるのだと威圧を放った。いや、こんなところでそんなもん放たないで欲しい……。
「ひっ!? わ、わかりましたって! わかりましたから一般人に威圧を使うのはやめて下さい!!」
トラウマでもあるのだろうか……ドアラ様はメリーさんにかけられている威圧以上に怯えている気がする。
やっぱりこの人に逆らっちゃダメだと、オレは心のメモに書きこんでおくことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日、ギルドから走竜を貸し出されたB級冒険者パーティーが帰ってきた。
オレの証言通りに、広範囲に渡って大地がえぐり取られた跡と、万を超える軍勢が行進したと思われる痕跡を発見したと報告がもたらされた。
しかし、それと同時に衝撃を持って報告されたことがあった。
なんでも、魔王軍の生き残りと思われる約一〇〇〇体ものスケルトンキングが確認されたらしい……ん……?
………………。
…………………………。
……………………………………。
オレとジルがその後一時間ほど街から姿を消していたことも一応補足しておこう。何とは言わないが回収しておいた。
こうして魔王の尖兵が現れたこの出来事は『アデリア大陸』全土を震撼させていくことになった。
獣人の里の事件を端に発したこの魔王軍侵攻は、これから訪れる未来に影を落とし、人々はまだ見ぬ魔王軍の姿に怯えていた。
……のだが……。
どちらかと言うと、ジルがうっかり国や町を破壊しないかに怯えているオレは、正直魔王軍のことよりジルの教育に頭を悩ませていたのは内緒の話だ……。
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ここまでお読み頂きありがとうございます!
ひとまず『第一章 前半』はここまでとなります。
このあとも物語はまだまだ続きます。
というか、盛り上がるのはこれからです! めっちゃ盛り上がります!
閑話的なお話を挟んですぐに『第一章 中盤』を開始いたしますのでお楽しみに!
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