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第一章 前半
第33話:報告を受けて……
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信じがたい話を聞いて放心していると、リリーとルルーの二人が駆け寄ってくるのが見えた。
その表情を見る限り、どうやら無事に加護を授けてもらえたようだ。
「「コウガ♪ 加護を授かる事が出来たようです! ……にゃ」」
「お、おめでとう! 加護とかすごい? な……。いや、ほんと。ははははは……」
「え? え? コウガ、どうしたの? 顔が引き攣ってる? ……にゃ」
「な、なんかこの短時間に目に隈が出来てない? 私たちが祈りを捧げている間に何があったの? ……にゃ」
「ははははは……えっと、実はだな……」
オレは先ほどジルから受けた報告をそのまま二人に説明してみた。
「は、ははは~ま、まさか~……え? ほ、本当なの? ……にゃ」
内容が内容だけに最初はまったく信じていなかった二人だが、オレの乾いた笑いと遠い目、疲れ切った様子から嘘ではないと信じてくれたようだ。
今は二人ともオレと一緒に仲良く頬を引き攣らせて笑っている……。
すると、ひとり冷静なリルラがよくわからないことを言い出した。
「ジル様。中々見てみないと信じられないようですから、どんなものだったか様子を見せて差し上げれば良いのではないでしょうか?」
落ち着いた様子でそう言うのだが、しかし「見せる」とはどういうことだろう?
この世界に動画などあるわけもなく、言っている意味がわからない。
それにしてもリルラは大物だな……。
見た目は一〇歳ほどの少女で一番幼く見えるが、伊達に長く生きていないようだ。
とんでもない報告を聞いたというのに、動じずまったく疑わずに信じていた。
「見せるってどういう意味だ? 伝説にある千里眼とかならわかるが……」
なんか伝説の千里眼ならわかるとか言っている自分に若干引く……。
でもジルはリルラのその見せるの意味がわかるようだ。
≪それもそうだな。リルラの言うように見せた方が早そうだ≫
言うが早いか、ジルは一瞬で空中に魔法陣を創り上げると、そこには何かの映像が映し出されていた。
しかも平面ではなく立体映像になっており驚くほど精巧だ。
「な、なんだ? これは魔法なのか……?」
≪うむ。幻影魔法の一種だ≫
さらりと言うが幻影魔法も失われた魔法のひとつだ。
妖精族が得意としているらしいが、そもそも妖精自体がお伽噺や伝説の存在だからな……。
いや、すこしは手加減してくれ……頭の整理する隙すらない!
何個目になるかわからないが、とりえずいったん幻影魔法のことは横に置いておこう。
横に何個積み上がってるかも一旦横に置いておく。
≪ただ、厳密に言うとすこし実現方法が違うから……≫
なんたらかんたら……なんか細かな違いの説明が続くがさっぱりわからん。
魔法もろくに使えないオレに伝説の魔法の細かな違いを説明されてもな……。
≪……して、これがさっき話した五万の軍だ≫
おっと、ようやく本題に戻ったようだ。
幻影魔法に映る無数の魔物を見て、これが街を襲えばひとたまりもないと絶句するが、本当に絶句するのはこのあとだった。
その五万もの軍が、街を簡単に滅ぼせるような魔物の軍勢が、ジルのたった一発のドラゴンブレスでほぼ壊滅する光景が映し出されたのだ。
絶句からさらに絶句する場合は、どう表現すればいいのだろうか……。
すでにリリーとルルーの二人と仲良く開いた口が塞がらない状態なのだが、まだ続くことになる。
辛くも生き残った魔物がいるのだが、辺り一面に無数に現れた魔法陣が追い打ちをかけた。
「は? これって竜牙兵だよな? で、でかすぎないか……? というか何匹いるんだ……?」
魔法陣からはオレの竜牙兵よりもずっと大きな、強者のオーラを纏った戦士たちが次々と現れ、まだ数で上回っているはずの生き残りの魔物たちを蹂躙していく。
「なぁリリー。オレたちはいったい何を見せられているんだ……?」
「私はもうなんと答えたらいいかわからないです……にゃ」
「コウガ。私たちは加護を授かったけど、この竜牙兵一体と戦うのがやっとな気がする……にゃ」
オレたち三人は頑張って強くなろうと決めた。
きっとオレたち三人が強くなってジルを自重させないと、世界が滅ぶ気がする……つい、うっかりとかで……。
しかし、魔王軍は気を利かせたジルの粋なはからいで事なきを得たが、魔王軍侵攻は世界の安寧を揺るがす大事件だ。ギルドに報告しないわけにはいかない。
オレは事の顛末を獣人の里に報告しに行くというリリーとルルーと一旦別れ、リルラとジルと一緒にドアラの街に戻ることにした。
ジルの再教育の時間はすぐには取れそうにないので、とりあえず余計な気を利かすなとだけ釘をさしている。
もちろんまだそれではぜんぜん不十分なので、後でしっかりじっくりこってりと時間をとってこの世の常識を叩き込まなければ……。
ん? なんだろう? 何か視線を感じた気がするのだが……気のせいか?
◆◇◆◇◆◇◆◇
ジルの背に乗せてもらってドアラの街に向かって飛んでいるのだが、さっきから何か忘れているような気がしてならない。
≪主よ。何か気になることでもあるのか?≫
思い出そうとするが思い出せずに悩んでいると、オレの様子に気付いたジルが話しかけてきた。こういうところは気が回るんだな……。
「いや。なんでもない……と思うんだが……まぁ気にしないで良いよ」
≪そうか。それなら良いのだが、何か問題があれば遠慮せずに我に言ってくれれば良い≫
オレはジルに礼を言うと、思い出せないものは仕方ないと頭を切り替え、これからどう言ってギルドや領主のドアラ様に報告するかについて考えることにした。
「報告……なんて言えばいいんだ……?」
「コウガ様は報告するだけなのに、なぜそんな難しそうな顔をしておられるのですか?」
どう報告すればいいかと頭を抱えていると、リルラが不思議そうに話しかけてきた。
うん、リルラはリルラで大物なんだよな……。
さっきのあの映像を見ての感想が「わぁ! ジル様はすごいですね! 私ひとりでこの数はちょっと難しそうですぅ!」だったからな……。風の大精霊『シグルステンペスト』とか呼び出せば一人で足止めぐらいはしそうだ
「報告するだけって訳にはいかないだろ? まさか『魔王軍五万が侵攻してきてたのでオレのドラゴンでサクッと全滅させておきました!』とか馬鹿正直に報告できないし……」
と言うと「え? どうして報告出来ないのですか?」と首を傾げている。
うん、そうなると思った……この場に常識人はオレしかいない!
その表情を見る限り、どうやら無事に加護を授けてもらえたようだ。
「「コウガ♪ 加護を授かる事が出来たようです! ……にゃ」」
「お、おめでとう! 加護とかすごい? な……。いや、ほんと。ははははは……」
「え? え? コウガ、どうしたの? 顔が引き攣ってる? ……にゃ」
「な、なんかこの短時間に目に隈が出来てない? 私たちが祈りを捧げている間に何があったの? ……にゃ」
「ははははは……えっと、実はだな……」
オレは先ほどジルから受けた報告をそのまま二人に説明してみた。
「は、ははは~ま、まさか~……え? ほ、本当なの? ……にゃ」
内容が内容だけに最初はまったく信じていなかった二人だが、オレの乾いた笑いと遠い目、疲れ切った様子から嘘ではないと信じてくれたようだ。
今は二人ともオレと一緒に仲良く頬を引き攣らせて笑っている……。
すると、ひとり冷静なリルラがよくわからないことを言い出した。
「ジル様。中々見てみないと信じられないようですから、どんなものだったか様子を見せて差し上げれば良いのではないでしょうか?」
落ち着いた様子でそう言うのだが、しかし「見せる」とはどういうことだろう?
この世界に動画などあるわけもなく、言っている意味がわからない。
それにしてもリルラは大物だな……。
見た目は一〇歳ほどの少女で一番幼く見えるが、伊達に長く生きていないようだ。
とんでもない報告を聞いたというのに、動じずまったく疑わずに信じていた。
「見せるってどういう意味だ? 伝説にある千里眼とかならわかるが……」
なんか伝説の千里眼ならわかるとか言っている自分に若干引く……。
でもジルはリルラのその見せるの意味がわかるようだ。
≪それもそうだな。リルラの言うように見せた方が早そうだ≫
言うが早いか、ジルは一瞬で空中に魔法陣を創り上げると、そこには何かの映像が映し出されていた。
しかも平面ではなく立体映像になっており驚くほど精巧だ。
「な、なんだ? これは魔法なのか……?」
≪うむ。幻影魔法の一種だ≫
さらりと言うが幻影魔法も失われた魔法のひとつだ。
妖精族が得意としているらしいが、そもそも妖精自体がお伽噺や伝説の存在だからな……。
いや、すこしは手加減してくれ……頭の整理する隙すらない!
何個目になるかわからないが、とりえずいったん幻影魔法のことは横に置いておこう。
横に何個積み上がってるかも一旦横に置いておく。
≪ただ、厳密に言うとすこし実現方法が違うから……≫
なんたらかんたら……なんか細かな違いの説明が続くがさっぱりわからん。
魔法もろくに使えないオレに伝説の魔法の細かな違いを説明されてもな……。
≪……して、これがさっき話した五万の軍だ≫
おっと、ようやく本題に戻ったようだ。
幻影魔法に映る無数の魔物を見て、これが街を襲えばひとたまりもないと絶句するが、本当に絶句するのはこのあとだった。
その五万もの軍が、街を簡単に滅ぼせるような魔物の軍勢が、ジルのたった一発のドラゴンブレスでほぼ壊滅する光景が映し出されたのだ。
絶句からさらに絶句する場合は、どう表現すればいいのだろうか……。
すでにリリーとルルーの二人と仲良く開いた口が塞がらない状態なのだが、まだ続くことになる。
辛くも生き残った魔物がいるのだが、辺り一面に無数に現れた魔法陣が追い打ちをかけた。
「は? これって竜牙兵だよな? で、でかすぎないか……? というか何匹いるんだ……?」
魔法陣からはオレの竜牙兵よりもずっと大きな、強者のオーラを纏った戦士たちが次々と現れ、まだ数で上回っているはずの生き残りの魔物たちを蹂躙していく。
「なぁリリー。オレたちはいったい何を見せられているんだ……?」
「私はもうなんと答えたらいいかわからないです……にゃ」
「コウガ。私たちは加護を授かったけど、この竜牙兵一体と戦うのがやっとな気がする……にゃ」
オレたち三人は頑張って強くなろうと決めた。
きっとオレたち三人が強くなってジルを自重させないと、世界が滅ぶ気がする……つい、うっかりとかで……。
しかし、魔王軍は気を利かせたジルの粋なはからいで事なきを得たが、魔王軍侵攻は世界の安寧を揺るがす大事件だ。ギルドに報告しないわけにはいかない。
オレは事の顛末を獣人の里に報告しに行くというリリーとルルーと一旦別れ、リルラとジルと一緒にドアラの街に戻ることにした。
ジルの再教育の時間はすぐには取れそうにないので、とりあえず余計な気を利かすなとだけ釘をさしている。
もちろんまだそれではぜんぜん不十分なので、後でしっかりじっくりこってりと時間をとってこの世の常識を叩き込まなければ……。
ん? なんだろう? 何か視線を感じた気がするのだが……気のせいか?
◆◇◆◇◆◇◆◇
ジルの背に乗せてもらってドアラの街に向かって飛んでいるのだが、さっきから何か忘れているような気がしてならない。
≪主よ。何か気になることでもあるのか?≫
思い出そうとするが思い出せずに悩んでいると、オレの様子に気付いたジルが話しかけてきた。こういうところは気が回るんだな……。
「いや。なんでもない……と思うんだが……まぁ気にしないで良いよ」
≪そうか。それなら良いのだが、何か問題があれば遠慮せずに我に言ってくれれば良い≫
オレはジルに礼を言うと、思い出せないものは仕方ないと頭を切り替え、これからどう言ってギルドや領主のドアラ様に報告するかについて考えることにした。
「報告……なんて言えばいいんだ……?」
「コウガ様は報告するだけなのに、なぜそんな難しそうな顔をしておられるのですか?」
どう報告すればいいかと頭を抱えていると、リルラが不思議そうに話しかけてきた。
うん、リルラはリルラで大物なんだよな……。
さっきのあの映像を見ての感想が「わぁ! ジル様はすごいですね! 私ひとりでこの数はちょっと難しそうですぅ!」だったからな……。風の大精霊『シグルステンペスト』とか呼び出せば一人で足止めぐらいはしそうだ
「報告するだけって訳にはいかないだろ? まさか『魔王軍五万が侵攻してきてたのでオレのドラゴンでサクッと全滅させておきました!』とか馬鹿正直に報告できないし……」
と言うと「え? どうして報告出来ないのですか?」と首を傾げている。
うん、そうなると思った……この場に常識人はオレしかいない!
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今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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